巨人に新加入した田中将大投手(36)が29日、春季キャンプに先駆けて行われている宮崎合同自主トレ2日目にブルペン入りした。年明け自身5度目で、ジャイアンツのチームウェアを着ての本格的な投球披露は初めて。山瀬慎之助捕手(23)とコンビを組むなど丁寧に投じた計46球は、ネット裏に集まった多くのギャラリーを仰天させた。
迫力のたたずまいだった。威圧感をまとった田中将が、右腕を振る。もちろん全力ではないが、それでもパワーをロスなく乗せた直球は山瀬の構えたミットにドンピシャで吸い込まれた。新しいチームメートに初めて披露した、ブルペンでの圧巻の46球。確かな手応えがあった。
「思ったよりしっかり投げられました。よかったと思います!」
ギャラリーの視線をくぎ付けにした。午前9時32分、木の花ドームで投手陣一番乗りでキャッチボールを始めると、15分後にブルペンへ。プレート後方でしゃがみ、右手でロージンバッグを6度、土を1度。その指先を息で吹いてスイッチを入れた。まずは捕手を立たせて直球、カーブで計30球。座らせてからはスライダー、スプリット、ツーシームを自在に制球した。捕手の後ろでは11人もの選手が動きを止め、日米197勝右腕の球に仰天した。
泉「覇気を感じた。デケェ…この威圧感が200勝目前の投手なんだと。たたずまいがウォォ…!みたいな。そんなの初めて」
堀田「(軽い)力感とか、もう全部がいい」
京本「手元で強い。あの力感であんなきれいな球は投げられない。キャッチボールも胸にしか来ない」
驚嘆の声が漏れる中、マウンド上での鋭い眼光や「オーラ」を真正面で受け止めた山瀬が口を開いた。
「ちょっと怖かった。シーズンが始まったらどんな顔をするのかなって(笑)。フォークは低め、スライダー、ツーシームは(両)コース。めちゃくちゃコントロールがいい。まだ1月で飛ばしてないと思うけど球もキテました」
特にスプリットは、1軍経験もある山瀬が捕球できないほどのキレ、変化量があった。
ベテランの人柄がにじんだのは投球後。高卒6年目の山瀬に感想を求めると「僕が言える立場では…」と返答が。すると笑顔で「そういうのは言ってほしいから」と伝え、1分以上、対話した。最後は優しくグータッチで締めくくった。
23年10月の右肘手術の影響で昨季はキャリア初の0勝。復活を期す19年目は年明けの沖縄自主トレから4度ブルペン入りして宮崎に入った。「特に多くはない」と自身の中では決してハイペース調整というわけではないが「ここ数年よりはしっかり投げられていると思う」と仕上がりの良さ、投げられる喜びを肌で感じている。
この日は全てセットポジションから投じ、最後まで丁寧にフォームのバランスを確認した。「そこが一番大事。常に意識していいバランスで投げられるように。まだまだ(ここから)」と背番号11。球場を後にする足取りは、いつも以上に軽やかだった。(堀内 啓太)
◆G田中将のキャンプ序盤までの調整過程
▽07年(1年目) 1月2日に兵庫・伊丹市内のブルペンで50球。新人合同自主トレ中も何度も投球練習を行い、ハイペース調整。キャンプ初日は59球、2日目は44球を投げた。
▽13年 WBCの日本代表に選出。オフは体幹トレに重点。1月29日にこの年初めてスパイクを履いてのブルペン投球を行い、WBC球で捕手を立たせて30球。キャンプ初日のブルペン投球は、座った捕手相手に44球。
▽21年 ヤンキースから8年ぶりに日本に復帰。キャンプは2月6日の第2クール初日から合流したが、遠投やブルペンでの投球練習も順調に進めており、同7日に復帰後初めてブルペンで40球を投げ込んだ。
▽24年 23年10月に右肘のクリーニング手術。1月下旬には60~70メートルの遠投を行っており、キャンプ第1クールでは捕手が座った状態ではないものの4日間で3度ブルペン入り。