Jリーグを経由せずに欧州へと飛び込み、今や日本人で最も価値の高い10代として、世界のサッカーシーンで注目を集める存在となった選手がいる。U―19日本代表のDF小杉啓太(18)だ。スウェーデン1部ユールゴーデンに所属する左サイドバック(SB)は、プロ1年目のスタートを切った昨季、公式戦24試合で2得点2アシストをマーク。今オフには、欧州ビッグクラブからも関心を寄せられる存在となった。Jリーグと同じく春秋制で行われているスウェーデン1部リーグ開幕、そして欧州カンファレンスリーグに向けて準備を進める次世代の左SBに話を聞いた。(取材・構成=金川 誉)
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スウェーデンでプロとしての第一歩を歩み始めた小杉だが、日本でプレーしてきた環境とはまったく違った。2シーズン目の現在は、かなり環境にも慣れたというが、この時期は厳しい寒さにも見舞われる。
「(1月は気温)1、2度とかで、湖は凍っています。(スウェーデンでは)室内練習場で練習しています。人工芝が張られた体育館みたいな感じです。あと(冬は)日が沈むのがすごく早い。夏は日が沈むのがすごく遅いっていうのは、北欧ならではの気候で、すごく面白いなと感じています」
湘南ユースからJリーグを経験せず、スウェーデンでプロキャリアをスタートした小杉。しかし加入直後から、出場機会をすぐつかめたわけではない。左サイドバックには、のちにローマへと移籍することにあるスウェーデン代表DFダール(21)が君臨。若手にチャンスを与える傾向が強い同国リーグで、ベンチ入りの機会はすぐに巡ってきたが、出番は訪れなかった。
「全く(先発の)チャンスがないなって思いながら、練習をするのが結構きつかったです。(ダールとは)プレースタイルも似ていて。質は向こうの方が高くて、サイドバックは試合中に変わることも少ない。ベンチに入っても、6人ぐらいアップに行けるんですけど、僕と(控え)GKだけ毎回ずっと(ベンチに)座っている、っていう試合が何試合も続いて。それが目に見えて、自分に実力が足りてないんだなっていうのを思い知らされる期間でした」
しかし、ダールと自らの差を冷静に分析し続けた時期でもあった。「(当時の)僕が試合に出た時は、(チームの)プラスになるぐらいだと思っていた。でも彼の場合は、掛け算になるような。(21歳と)若手でチームの中心になりつつも、周りの選手も生かして、本当に隙もなく、何十試合もずっといいパフォーマンスを出せる。本当に平均点が高い選手で、そこの差が大きいとずっと思っていました」。SBとして守備のタスクを完璧にこなしながら、攻撃にもかかわり、チーム全体を生かす。そんなダールのプレーを目標にしつつ、ウェートトレーニングなどでの肉体改造を含めた成長を続け、出番を待った。
そして24年7月、ダールがセリエAのローマへ移籍。しかしこの時期、クラブは約1億円をかけて新たな左SBを獲得した。小杉は自ら監督に出場を直訴。これをきっかけにチャンスをつかみ、レギュラーポジションをつかんでいくことになった。(次回は2月1日掲載)