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アニソン界のレジェンド・串田アキラが語る、子供に響くヒーローソングの秘訣「一番大切なのは優しさ」

スポーツ報知 2025年2月1日 10時0分

 特撮ヒーロー「太陽戦隊サンバルカン」「宇宙刑事ギャバン」の主題歌や挿入歌を歌うアニメ・特撮ソング界におけるレジェンドの歌手・串田アキラ(78)が、デビューから55年を迎えた。昨年1月に急性すい炎を発症し、半年間の入院生活を送り生死をさまよったが、7月に退院、8月には不死鳥のように復活のステージに上がった。重病だったため現在も通院こそしているが、今年1月20日には活動を再開していくことを宣言。半世紀歩んできた歌手人生や、活動再開へ歩む思いを聞いた。(増田 寛)

 復活を印象付けるかのように、自らの足で取材部屋を訪れた。昨年1月に急性すい炎を発症し、生死をさまよう中、奇跡的な回復で7月に退院。それでも趣味の筋トレで鍛えた体重は30キロ減った。一時は車椅子での移動を余儀なくされていたが、現在は自ら歩けるまでに回復。「そりゃ、しんどい時もあるよ」と笑いながらも、不屈の意志で困難を乗り越える姿は、まさにヒーローだった。

 「昨年7月に退院してから、浦島太郎のように自分の姿が変わった。体重は38キロしかなかった。小学生と体重が同じぐらい。鏡の前で絶望したね。でも気持ちが切れたら終わり。少しずつ進まないと。1歩下っても、意地でも半歩だけは前に踏み出さないとね」

 自らの曲を聴きながら気持ちを奮い立たせたという。「とにかくお医者様と看護師の方々に感謝。死ぬかもしれないところを救ってくれたんだから。この経験を絶対に有意義にして前に進む。タダでは起きないよ。最近は歩くのもだんだん速くなってきたんだ」。胸を張りながら、目の奥がキラリと光った。

 歌の話題になると声が弾んだ。串田はアニメ「キン肉マン」の「キン肉マンGo Fight!」や「富士サファリパーク」のCMソングなど、数々の耳に残る名曲を歌ってきた。歌うコツを聞いたところ、「どの曲にも言えるけど、やっぱり楽しく歌うこと。自分が楽しくないと、やっぱり聴いている側も不安になる」と明かしてくれた。

 昔から歌手・松崎しげる(75)と声が似ていると言われるという。松崎と地声は全く似ていないが、素人耳で歌声を聴くと似ている。失礼も承知で串田本人がどう思っているか尋ねると、「本当によく言われる」と苦笑いを浮かべたが、嫌な顔をせずに答えてくれた。

 「当時から松崎さんが歌っているのではと言われていた。作詞をした人が確か広告会社の人で。その人から『俺(串田アキラ)が歌っているって宣伝してこい!』と言われたこともあった」

 デビューから半世紀以上を歩んできた。平たんな道ではなかった。「数字的には時がたってるけど、自分の中では毎日が闘いだった。あっという間。ずっと歌手として活動してきて、試行錯誤を重ねてきた。昨年はほとんど歌手活動はしてないけど、別の場所で闘ってたからね」

 今でこそ、アニメ・特撮ソングのレジェンドだが、音楽の原点は洋楽。10代の頃から米軍のベースキャンプでドラムをたたきながらリズム&ブルースを歌っていた。音楽関係者の目に留まり、1969年にデビュー曲「からっぽの青春/サムじいさん」を当時の東芝エキスプレスから発売。NHK「ステージ101」(70年)に出演し、「渡辺宙明先生に『英語の歌を歌えるなら』」と主題歌「太陽戦隊サンバルカン」(81年)の歌い手に推薦された。

 ただ、最初はヒーローソングに悪戦苦闘したという。「サンバルカンは本当に難しかった。ディレクターから『子供が聴いて格好いいなと思うように歌ってほしい』と。自分の格好いいを込めて歌っていくと、求められているところからどんどん離れて。最終的にはなぜかOKが出たけど、訳が分からなかった」

 子供に響く格好良さを存分に出せたのが特撮「宇宙刑事ギャバン」(82年)の主題歌だったという。「一番大切なのは優しさが大事。見え見えの優しさじゃなくて、秘めた優しさ。これを歌にも持ってったらどうなのかなって。歌詞に対してやっぱり自分も優しさを出そうとすると伝わる」

 その発見はライブでも生きた。ヒーローショーで歌唱した時には「『良い子のみんな、集まれ』みたいな上から目線の呼びかけでは子供はこっちを向いてくれない、同じ仲間になっちゃえばいい。高いステージの上から歌うのではなく、客席に下りて目線を同じにして歌ったりね。子供が寄ってくるようになった」。

 今では串田の格好良さをステージで見られることを願っているファンが数多くいる。昨年8月に復活のステージを踏み、今年1月にはSNSで少しずつではあるが活動再開宣言をした。「ステージに立つとすごく力が湧いてくる。みんなが合いの手を入れて歌ってくれて、涙してるお客さんもいたね。みんなの笑顔と涙の顔もごちゃ混ぜになってて。うれしかったね」

 現在、着実に体調は回復しているという。「筋肉は少しずつでも鍛えていけば取り戻せるんだけど、一番肝心の自分の心のパワーがないとどうしようもない。やる気がなかったら何もできない。またみんなとライブで歌って騒げることを目標に頑張るだけ」。正義の味方のように、力強くサムアップして誓った。

 ◆串田 アキラ(くしだ・あきら)1946年10月17日、横浜市生まれ。78歳。10代の頃から米軍のベースキャンプなどで活動し、1969年に「からっぽの青春/サムじいさん」でデビュー。81年の「太陽戦隊サンバルカン」をきっかけに「宇宙刑事ギャバン」(82年)や「キン肉マン」(83年)を始めとする数多くのアニメ・特撮の主題歌や挿入歌を務める。2010年には、特撮「仮面ライダーオーズ/OOO」で作中登場アイテム・オーズドライバーの音声を担当。

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