元第68代横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(44)が31日、東京・明治神宮で行われた大相撲の新横綱で、甥の豊昇龍(25)=立浪=の横綱奉納土俵入りを親族・来賓用の観覧席で見守った。土俵入りをスマホで撮影した同氏は終了後、報道陣に喜びを話した。
―甥っ子の土俵入りを見て。
「22年ぶりに僕と同じように土俵を踏んでうれしい。(2003年の)1月場所だったんで」
―優勝の瞬間はどう感じたか?
「あまり気にしていなかったけど、先場所の後半から変わってきたね。動きもいいし。腕を伸ばす時の突き出しのキレがいいな、と。安定している。タイミング良かったんじゃないですか」
―自身も22年前に新横綱として明治神宮で奉納土俵入りをしたが?
「母が(結婚して)55年間、モンゴル相撲や日本の大相撲の方々を支えてきたということに泣いちゃっていた」
―自分の時と甥っ子の土俵入りを比べると。
「自分の時は正直何も知らなかった。教えてくれれば良かったんだけど、対応してくれる方がいなかった。でに、ここ(明治神宮)で(自分の時を含めて)二度見ているんで。厳しく言うのもおかしいけど、早く慣れろ、と言いたいですね」
―豊昇龍は小さい頃から叔父さんの土俵入りを見ていた
「彼のお父さんは自分の一番上の兄貴なんですけど、場所が終わった後は、よくイチゴとかフルーツを買ってあげたんだけど。(その頃から)巣立ったね。世代交代だな、と」
―小さい頃の豊昇龍は?
「キラキラしていた。ある時、別荘の近くの湖で、釣りに行って波が起きて、その時(ボートが)転覆して助けたことがあった。子どもの頃、馬から落ちて腕を骨折したことがあったと思う。だから(腕を)鍛えるべきなんですよ。鍛えてここまで来ているからね。古傷ってなかなか治らないから」
―レスリングで来日して、大相撲に入りたいと叔父さんに連絡して来た時は?
「(自分が)モンゴルのレスリング協会の会長をしている時、重量級は皆、大相撲に入っちゃうんですよ。僕が選んだ人ってだいたい強くなる。不思議でしょ。そういう目があって恵まれてるんだ」
―初場所で優勝争いをした金峰山もそうだった。
「カザフスタンの人も、横綱・朝青龍を見て、相撲に思い入れがあったんで。この国から一人でも二人でも(力士を)出していきたい、と。そうすれば日本との海外の国々との文化交流の活動になる。自分で経験していることなんで。できるだけ新しい国々とつながりができるんじゃないか、と。彼も応えてくれたと思う。(初場所の巴戦は)自慢じゃないけど、面白いなと思った。選んだ2人が決勝まで来ていたから」
―先輩横綱としてのアドバイスは。
「ぐちゃぐちゃ言うより電話一本でいいと思う。まあ、電話出ればいいんだけど(笑)。皆に愛されるような…と言っても芸能人ではなく力士なんだから。力強く、嫌われるほど強くなって欲しい」
―横綱の地位とは。
「やはり(他とは)違うと思いますよ。(相撲は)国技であり、天覧相撲もある。キング・オブ・スポーツだから。(その頂点に立たせてもらい)感謝しています」
―一番気をつけないといけないことは。
「早く慣れることですね。彼にとって、すべてが初体験だから。まあケガなく冷静に。自信満々で万全の横綱相撲で行って欲しい」
―豊昇龍と話はしたのか?
「まだ会ってないんですよ。電話があって『うーす』とか言っていたけど。なんだ、うーすって。あいさつしろよ、と(笑)。甘えているんでしょうね。かわいいですけど。これから喜ぶ時は喜ぶ。すべてが喜ぶことばかりじゃないから。この世界(大相撲)は」
―朝青龍とは違うタイプの横綱になりそう?
「うーん。力士人生はこれからなんで。頑張って欲しい。10何年前の横綱でしょ、オレ。とにかく今の世代にはもっと稽古しろと言いたい。『しろ』というと何だかんだ言われる時代もおかしいけど当たり前のこと。おいしいものいっぱい食べて、健康に気をつけてやって欲しい。横綱は選ばれた人間しかなれない。健康のことを考えてやらないと。一般の人よりだいぶ体に負担がかかってしまう。早く亡くなる方もいる。僕もちょっと病気中なんだけど。まあ若いから」
―自身の記録25度優勝を超えられそうか?
「横綱になったら2ケタでしょうね。彼は今、25歳? 超えればいいですけどね。超えてみろよ、と(笑)」。