大相撲の第74代横綱に昇進した豊昇龍(25)=立浪=が31日、東京・渋谷区の明治神宮で奉納土俵入りを行い、元横綱・朝青龍と同じ雲竜型を披露した。有観客での土俵入りは2017年1月の稀勢の里以来で、1分35秒の土俵入りを3500人が見守った。22年前の1月31日に新横綱として土俵入りした叔父のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(44)も駆けつけ、叱咤(しった)激励。「俺を超えてみろ」と、自身の優勝25度を破る大記録を求めた。
寒空の下、勇ましい土俵入りだった。豊昇龍はつま先をピンと伸ばすとゆっくりと、大きく両手を広げた。四股は足を高く上げて、参道を力強く踏みしめると、気温11度の静まりかえった境内に3500人の観衆から一斉に「よいしょ~!」と熱いかけ声が上がった。左手を脇腹に添え、右手を斜め前方に出してのせり上がりはやや早めだったが迫力十分。1分35秒と平均的な長さで雲竜型の所作を一つ一つ丁寧に行った。
1月29日に昇進が正式決定後は、慌ただしい毎日。太刀持ちに幕内・平戸海(24)=境川=、露払いに兄弟子の同・明生(29)を従え、晴れ姿を無事に披露した。豊昇龍は「少しほっとしている。横綱になって緊張することが多くて少し焦っている。責任を持ってしっかり頑張っていきたい」と胸をなで下ろした。退場の際は「豊昇龍! 頑張れ!」とエールが飛び交った。
土俵入りの前の横綱推挙式で、日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)から推挙状と30日の「綱打ち」で作られた純白の横綱が手渡された。本番は三つぞろいの化粧まわしと太刀は武蔵川親方(元横綱・武蔵丸)が使用したものを借りて臨んだ。
モンゴルから駆け付けた叔父も、豊昇龍の両親とともに土俵入りを見守った。「緊張したね」と苦笑いした豊昇龍に、叔父から「横綱になった人間は(優勝回数)2ケタでしょう」とさっそくゲキが飛んだ。歴代4位、25度優勝の自身の記録を挙げ「やってみろという感じ。超えてみろ」と強い口調で求めた。
22年前の2003年1月31日は、朝青龍が新横綱として明治神宮で土俵入りした日。豊昇龍も「縁があるんじゃないかな」と感じた。新たな船出に叔父からは「みんなに愛され、力強く、嫌われるほど強くなってほしい。横綱は選ばれた人間しかなれない。相撲はキング・オブ・スポーツ。力士人生はこれから」とエール。顔がそっくりな新横綱は、叔父ばりの気迫で土俵に向かう。(山田 豊)
◆雲竜(うんりゅう)型 不知火(しらぬい)型と並ぶ横綱土俵入りの型。せり上がりの際に右手を伸ばし左手を胸の近くに当てる。綱の結び目は一輪。名前は第10代横綱・雲竜久吉に由来。伸ばした手は「攻撃」を、胸に当てた手は「守り」を意味し攻防一体を表現する。不知火型は横綱在位期間が短い傾向にあると言われていたが白鵬がジンクスを破った。初場所で引退した照ノ富士は不知火型。
◆豊昇龍今後の主な予定
▽1日 元幕内・徳勝龍(千田川親方)の断髪式で、国技館初となる土俵入り。
▽2日 成田山新勝寺(千葉)、不動ケ岡不動尊總願寺(埼玉)で豆まき。
▽4日 立浪部屋で稽古再開予定。
▽8日 NHK福祉大相撲。
▽9日 前回王者として第49回フジテレビ大相撲トーナメント連覇を狙う。
▽25日 春場所の番付発表。
▽3月9日 春場所初日。