Infoseek 楽天

ドリカム中村正人「ライブのたたき上げ。負けないもの届けたい」“一番渋い選曲”の「ウラワン」開催中

スポーツ報知 2025年2月2日 10時0分

 人気バンド・DREAMS COME TRUEが、昨年9月から大規模ツアー「ウラワン」(3月23日まで全30公演)を開催中だ。ウラワンはヒット曲を連発する「ドリカムワンダーランド」と対をなす通好みのライブとして知られ、8年ぶりの開催。取材に応じた中村正人(66)が、今ツアーに込めた思いや盟友のボーカル・吉田美和(59)、バンドの未来について語った。(加茂 伸太郎)

 覚悟を持って、中村は今回のツアーに臨んだ。「吉田とは延々選曲の作業をしていたんだけど、だんだん抽出されて、濃縮していって。一番渋い選曲(のセットリスト)になったかな」

 4年に1度の大規模ライブ「史上最強の移動遊園地DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と対をなす「裏ドリワンダーランド」(通称ウラワン)。ファンのリクエストをもとにヒット曲を連発するワンダーランドとは対照的に、「すごくド渋な曲」「すごくド・レアな曲」(吉田美和)や、隠れた名曲たちが並ぶ。

 ウラワンはデビュー15周年の2004年、ファンクラブ会員限定ライブとして初開催。24年9月に幕を開けた今回は12年、16年に続き、4回目を数える。

 「渋い曲、レアな曲から選曲するんだけど、これまでは『アンコールは有名な曲をやっちゃおうかな』とか、どこか臆病な部分があった。この8年の間に(コロナ禍で)ライブができない時期も経験して、選曲においても吹っ切れた。度胸が付いたっていうかな、(これまで以上に)気合が入りましたね」

 ツアーは残り8公演。終盤戦に突入した。観客の表情や反応から、ステージを重ねるごとに手応えは増している。「前回に比べて圧倒的に評判がいい。2016年は『知っている曲を1曲もやらなかった』という声もあって、不満に思って帰られた方が多くいらっしゃった。それを踏まえ、コンセプトを懇切丁寧にお伝えするところから始めました。その効果か、初めて来た方にも喜んでもらえています」

 昨今、音楽業界を取り巻く環境は変わった。CDからサブスクリプション(定額配信)が主流に。楽曲のストリーミングの再生回数が1億回を突破することが、ヒットの指標になった。中村は、ウラワンが新旧の名曲たちに出会う場になればと願っている。

 「全アーティストに共通して言えることだけど、過去にリリースした曲、今年リリースした曲、すべての楽曲が一列に並ぶ。Spotifyで言えば、ドリカムは300曲以上(の配信曲数)がある中で、1000万回を超えるのは8曲。埋もれてしまった300曲近くをもう1回、リスナーに伝え直したい。ウラワンに来た人が(初めて聴いた曲を)『この曲いいじゃん!』ってなってくれたら。その気持ちが強いですね」

 昨年デビュー35周年を迎えた。吉田の圧巻の歌声と、唯一無二の表現力はデビューから変わらない。苦楽を共にしてきた中村が、改めて吉田のすごさを挙げた。

 「全てに手を抜かないこと。それは準備段階から。演出においても、オレなんかは途中で『もういいじゃん!』って思うこともあるんだけど(笑)、吉田は最後まで諦めない。それだけの準備をした上で(過去にやった)1回1回のライブを上回る執念がある。(大きな会場になっても)来てくださる一人ひとりに向けて伝えようとする。それが一貫して変わらないんだから、すごいよね。あんなに極限までやらなくてもいいのにと思うこともあるけど、だからこそ、みんなが(彼女に魅了されて)付いてくるんだと思う」

 歌、ダンス、演奏。毎公演で最大限のものを届けられるのがドリカムの最大の武器だ。「僕らのセールスポイントは、ライブのたたき上げというところ。ライブハウスから始まって小ホール、中ホール、大ホール、アリーナ、ドームと(夢をかなえて)きた。That’s Entertainment! これがドリカム。ライブのたたき上げとして、負けないものを届けていきたいね」

 今ツアーは、吉田とウラワン初参加の女性パフォーマーチーム・D―FAIRIESによるシンクロダンスや、スペシャルゲストドラマーとして参戦する元カシオペアの神保彰(65)の驚異的なテクニックなど見どころが満載だ。

 「D―FAIRIESとは、2015年のワンダーランドから関係が強固になっていったよね。彼女たちはトップダンサー。演者としての理解力があるから、(10年やってきて)吉田がやりたいことを先回りしてやってくれるんだ。積み重ねって大事なことだよね」

 神保には中村自らSNSにダイレクトメール(DM)を送り、直々にオファーした。自身が所属した学生時代のバンドがコンテストに出た際、審査員を務めていたのがカシオペア。浅からぬ縁を感じていたという。

 「神保さんは同じ学年でもある。最初は誰かがいたずらでDMを送ったと思ったみたいだけど、(オファーを快諾してもらい)ご縁があったのかなって。『カシオペア』の(ベースの)櫻井哲夫さんは僕のアイドル。その相棒をお借りして勉強させてもらっている。本当に幸せ。ありがたいです」

 飽くなき挑戦を続け、第一線を走り続けるドリカム。40周年に向けて、どんな未来を思い描くのか。

 「2人の描く未来予想図? それは“思ったとおりにかなえられていくんじゃないかな!”。僕と吉田が気を付けているのは、陥りすぎないようにすること。エンターテインメントの先輩方を見ていると、突き詰めすぎて、自分たちの技法に溺れて、いつの間にかお客さんを置いてけぼり…という場合がある。歌とパフォーマンスと演奏をきちんと届ける。そこからズレないように(基本に忠実に)やっていきたいね」

 ◆中村 正人(なかむら・まさと)1958年10月1日、東京都生まれ。66歳。アレンジャー、プログラマー、ベーシスト。91、92年セガのゲーム「SONIC THE HEDGEHOG」の音楽制作担当。92年NHK連続テレビ小説「ひらり」、99年、2001年フジテレビ系「救命病棟24時」の劇中音楽担当。水洗トイレ・シャワー一体型猫専用ユニットバス「ネコレット」に発案者として参加。

 ○…ドリカムは、実業団と大学生が日本一を懸けて争う駅伝「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」(3月16日)のテーマソング「ここからだ!」を歌う。大阪・万博記念公園から夢洲(ゆめしま)まで7区間54.5キロをつなぐ新設の大会。中村は「ダメになりそうな時に、『ここからだ!』『ここからだよ!』って伝えたい。アスリートだけじゃなく、学校や会社でうまくいかない時にも『ここからだ!』。80歳、90歳の人には人生“ここからだ!”って。何かをどうにかするきっかけを作れれば。明るいだけじゃなく、その人たちの憂いも含めて表現できれば」と話した。

この記事の関連ニュース