◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
男子テニスの錦織圭(ユニクロ)が35歳のシーズンを好調に滑り出した。初戦の香港オープン(OP)で準優勝し、全豪OP1回戦では2本のマッチポイントをしのぎ大逆転勝ち。2年続けて誕生日を祝うインタビュー動画(スポーツ報知YouTube)の取材・編集作業を担当したが、前年と違って感じられた、復活への期待が現実になっている。
動画編集の作業中、歌詞とともに刻まれた光景が何度も頭に浮かんだ。
さぁ 怖くはない
不安はない
私の夢は みんなの願い
(「私は最強」ウタfrom ONE PIECE FILM RED)
昨年9月、有明コロシアムで行われた木下グループ・ジャパンOP1回戦、相手は14年全米OP決勝で敗れたマリン・チリッチ(クロアチア)。最終セット、勝負どころのチェンジコートでこの曲がかかった。1ポイントごとに大声援を送る満員の観客の願いが、夢=勝利を後押しする。歌詞とのリンクぶりに心が震えた。
願いを託していたのは関係者も同じ。錦織の勝利後、スタッフ同士でハイタッチやハグを交わし、目を潤ませる人もいた。けがで思うように動くこともままならなかった昨年の前半、錦織をサポートしていた岩渕聡氏は「本当に地味なことをコツコツやってきたのを見てきた。元気にやれてるだけでも良かったと思ってしまった」と話してくれた。
担当記者とは異なる立場で取材に関わる私も、願いを託した一人。違った目線で試合を見ることで、改めて錦織のプレーの魅力やテニスの面白さを再認識している。本人は「あと数年で消える」と冗談めかしているが、まだまだ、ファンの願いを背負って、夢をかなえていってほしい。(デジタル担当・大和田 佳世)
◆大和田 佳世(おおわだ・かよ) 2006年入社。デジタル編集部。テニス担当時の18年全米、19年全豪で大坂なおみ優勝を現地取材。