世界的指揮者の佐渡裕さん(63)が第5代音楽監督を務める「新日本フィルハーモニー交響楽団」の定期演奏会「すみだクラシックへの扉」が1日、東京・錦糸町のコンサートホール「すみだトリフォニーホール」で行われた。日本を代表する指揮者・秋山和慶さんが1月26日に肺炎のため84歳で亡くなった直後の公演だけに、佐渡さんは「すごくショックです」としんみり。終戦80年の節目にささげる平和への祈りとして予定していたフォーレの傑作『レクイエム』を亡き恩人にもささげる追悼の演奏会となった。
佐渡さんと秋山さんは昨年8月31日に「すみだトリフォニーホール」で行われた新日本フィルによる『小澤征爾追悼演奏会』で、ともに指揮を振ったのが最後。その際の写真を公式インスタグラムでも掲載した佐渡さんは「45年前に『指揮者になりたいので弟子にしてください』とお願いしたのですが、丁寧に『弟子はとりません』とお断りされたことがありました。今となってはとても貴重な思い出です」とエピソードをつづり、その上で「あんなに明確な棒さばきが、もう見られないのかと思うと悲しすぎます。どうぞ安らかにおやすみください。合掌」と締めくくった。この日の公演でも「昨日はお別れ会がありました。秋山さんのことも思いながら聴いていただければ」と話して指揮を執った。
1月31日と2日間行われた公演は、ともにチケット完売。座席数1801席の大ホールでの『レクイエム』は、バリトンに韓国で絶大な人気を残るキュウ・ウォン・ハンを迎え、栗友会合唱団とTOKYO FM少年合唱からボーイソプラノとして初日は小学3年生の中田憲吾さん、2日目は同4年生の伊藤健司が参加して荘厳な楽曲を繊細に表現、観客を魅了した。
このほか、新日本フィルの首席トランペット奏者、山川永太郎がソリストを務めるアルチュニアンの『トランペット協奏曲』、イベールの『室内管弦楽のためのディヴェルティスマン』が、佐渡さんの指揮によって演奏された。