巨人・阿部慎之助監督(45)が2日、秋広優人内野手(22)に今春キャンプ初ノックを行った。この日の終盤までは2軍視察を含めて「見る」ことを中心に回ったが、特守が行われていたグラウンドを訪れると、ノックバットを握り若武者1人に約30分の直接指導。ノック中に「今年は違うぞ!」と叫んだ背番号55へ愛のムチを打球に乗せた。
宮崎の地で、阿部監督が前後左右に大きな打球を飛ばした。1軍全体練習、そして2軍視察を終えると、姿を現したのは軟式野球場(B球場)。内野とは別に、外野特守を行っていたのは秋広のみだったが、ノックバットを振り続けた。指揮官にとって今キャンプ初ノックはジャンプして捕るルールも設けながら約30分。「今ダメ。もっと(ジャンプを)高くね」「意識高いねー!」などとアメとムチを交え、「今日はね。第1弾はね」と笑った。
メイン球場からも離れた場所で、突然訪れた昨年11月以来の愛のノック。汗だくで食らいついた22歳も、思いを受け取った。阿部監督の登場後は「あまり記憶がないです」と、冗談も交えたが、「落下地点まで速く行く練習だと思います。光栄なことというか、監督から直々にノックを受けるのはなかなか普通のことじゃないと思うので、感謝したいです」と語った。
秋広は4年連続春季キャンプ1軍スタートも、過去3年、開幕1軍はなし。昨季は26試合で打率2割6分1厘、0本塁打、1打点に終わった。今年こそ―の思いで臨む5年目。その覚悟はノック中にも表れ、自らを鼓舞するように「今年は違うぞ!」と叫んだ。指揮官は「去年も言ってたけど」としつつも、「頑張るでしょ、本人も」と2軍監督時代から指導してきた大器への期待感をにじませた。
キャンプイン前に阿部監督は「見てるよ、俺は。みんなを」と明言しており、オフの期間どれだけ注文をつけた「量」を重ねてきたかを前日1日からチェック。この日も「見る」ことを中心に3か所回り、4か所目は、自ら動いてさらなる「量」を促した。もちろん期待の表れも含まれている背番号55へのノック。13年ぶりの日本一を目指す2025年。若手の飛躍を心から願っている。(田中 哲)
◆G秋広のこれまでの春季キャンプ
▽1年目(21年) 2軍スタートながら紅白戦2試合で7打数5安打の衝撃デビューを果たし、1軍に昇格。オープン戦にも出場したが結果を残せず、開幕直前の3月中旬に2軍に合流した。
▽2年目(22年) 初の春季キャンプ1軍スタートになり、初日に背番号55のユニホームを初披露。実戦の序盤は打撃でアピールを続けたが、オープン戦では打率1割4分3厘と成績を残せずに、開幕まで10日を切った段階で2軍へ合流した。
▽3年目(23年) 2年連続の1軍スタートとなり、キャンプ2日目のフリー打撃で驚異の15本のサク越えを披露するなどアピール。左翼のレギュラー候補として期待されるも、実戦で苦しみ2月下旬に2軍へ降格した。
▽4年目(24年) 3年連続の1軍スタートで、キャンプ序盤は打撃でアピール。しかし徐々に調子を落とし、出場機会を得るために3月中旬に2軍へ参加すると、そのまま降格。開幕1軍を逃した。
◆高橋由伸氏ワンポイント 秋広はおそらく外野になると思う。一塁にはキャベッジに、岡本もいる。彼に求めたいのは、打つことだ。23年に打率2割7分3厘、10発も、ダメならどんどん忘れられてしまうのがこの世界。フリー打撃を見ているだけなら「使いたくなる」と誰もが思ってしまうほど、打球はすさまじい。魅力的な選手であることは言うまでもない。チームの課題である得点力不足解消へ、今年は大いに期待したい。例年、フォームがコロコロ変わる印象があるので、自分を持ち続け、貫くこと。その先に進化がある。