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カネやんからの威嚇「こら、チビ!」は吉田義男さんにとって何よりの勲章

スポーツ報知 2025年2月5日 5時15分

 元阪神の名遊撃手で、監督として1985年に日本一に導いた吉田義男さん(享年91)の訃報に4日、関係者が哀悼の意を示した。現役時代にともにプレーした安藤統男さん(85)=スポーツ報知評論家=らが故人をしのんだ。

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 体がめっぽう強く、元気な吉田さんが亡くなられたのは信じられない。昨年11月のOB総会で顔を合わせた際にも「おお、安藤、元気か?」と声をかけてもらい、「吉田さんには負けますよ」と言葉を交わしたばかりだった。

 私は1962年に阪神に入団したが、初練習でノックを受けた時に「大変なところに来てしまった」と衝撃を受けた。吉田さんの守備は捕球から送球に移る動作がとにかく速い。見よう見まねで吸収しようとしたが、同じプレーはできなかった。何とか盗めたのは盗塁のタッチ。送球を捕ると同時に膝をぎゅっと曲げて、走者をかいくぐらせない技術と勇気も一級品だった。

 打撃では金田(正一)さんとの相性が抜群だった。体の小さな吉田さんに対してムキになり、真っすぐ勝負を挑む金田さんの剛球を右中間、左中間にポンポンはじき返した。球界最高峰のエースから「こら、チビ!」とドスの利いた声で威嚇されていたのは、何よりの勲章だろう。

 当時は堅実なプレーが売りの巨人・広岡(達朗)さんと比較されたが、吉田さんの機敏な身のこなしはまさに天才的。現代の遊撃手と比べても守備だけならナンバーワンではないか。レギュラーになるまで8年を要した私がいつもベンチから見させてもらっていたお手本。安らかにお眠りください。(スポーツ報知評論家・安藤統男)

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