◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
入社8年目を迎えるが、インタビュー取材は常に緊張する。取材対象は初対面のことが多く、限られた時間で原稿を成立させる言葉を引き出さなくてはならない。時には離婚や病気のことなど「聞かれたくないだろうな」と思うことにも踏み込む必要がある。取材中に胃がキリキリするのを感じながら、どうやって質問するか、いつも悩んでいる。
昨年、歌手・松崎しげる(75)をインタビューした。真夏の太陽の光を全て吸収してしまうような黒い肌と、日光を全反射するような真っ白な歯に加え、「なんでも聞いてくれよ!」とオープンマインドで応じてくれたことが強く印象に残っている。
松崎は2度の離婚を経験し、1997年に一般女性と3度目の結婚をしている。「何でも聞いて」とは言ったけど、本当にプライベートのことを話してくれるだろうか―。恐る恐る、離婚について聞くと、「離婚した2人も、ちゃんと幸せになっている。本当にうれしいことですよ。俺も後ろ指をさされてないんだよね。ずっと真っすぐでいて良かった」と、あっけらかんと答えてくれた。
本人が良かれと思って話したインタビュー中のリップサービス。書く、書かないは別として、取材後に関係者から「できれば表現を変えていただきたく」「あまり触れずに…」と要望されることもある。芸能人はイメージ商売である以上、仕事と私生活は分けたい、という考えは理解できる。だが、せっかく話してくれたのに、と寂しさも感じてしまう。
松崎の時も、関係者から「離婚の話はオフレコで」などと言われるかと思いきや、「本人が言ってますし、問題ないですよ」と、あっさりOKが出た。自らの言葉で何にでも責任を持って答える松崎と、松崎に全幅の信頼を置くスタッフ。その関係性を目の当たりにし、取材して良かったと、心から思えた。(芸能担当・増田 寛)
◆増田 寛(ますだ・かん) 2018年入社。社会担当を経て19年から芸能担当に。演歌からポップスまで、主に音楽全般を担当。