2021年東京五輪の柔道女子52キロ級金メダリストの阿部詩(24)=パーク24=が5日、アゼルバイジャンで開催されるグランドスラム(GS)バクー大会(14~16日)に向け、出発前にオンラインでの取材に応じた。GSバクーは連覇を狙うも、まさかの2回戦敗退に終わった昨夏のパリ五輪以来となる復帰戦。世界一への返り咲き、その先にある2028年ロサンゼルス五輪での金メダル奪還に向け、挑戦者として一からの再出発を期した。
悔し涙に暮れたパリから約半年。詩が畳の上へ戻ってくる。GSバクー大会へ「大きなけがもなく、コンディションはいい。今回は世界選手権に向けて、必ず優勝しないといけない大会だと思っている。しっかり一つ一つ勝ち切ることが目標。いつもどおりの阿部詩というのを皆さんにお見せできれば」と意気込んだ。
昨夏パリ五輪は男子66キロ級の兄・一二三(27)=パーク24=と兄妹(きょうだい)同日連覇の偉業を目指したが夢と散り、声をあげて大泣きした。五輪後の昨年8~9月は休養した。当時は「やっぱりまた一から柔道に向き合うことはちょっと難しくて…。また世界一になりたいとか、大会に出て優勝したいという気持ちはなかなか湧かなかった」とモチベーションは上がらなかったという。
10月頃にトレーニングを再開すると、徐々に気持ちに変化が生じてきた。「打ち込みや基礎的なことをやっている時に、畳の上が『ああ、ここが本当に自分の居場所なんだな』と、体で感じた。やっぱり戦うべきことが自分なんじゃないかなと思った」と再起へのスイッチが入った。世界選手権(6月13~20日、ハンガリー・ブダペスト)から逆算し、この時期での復帰を目指してきたという。
2017年から廃止となっていた「有効」復活などを盛り込んだ新ルールが適用後、初の大会出場となる。ただ「今までとあまり変わらず、自分の柔道を貫き優勝したい」と詩。「また世界一になりたいという思い。挑戦者として一からスタートしたい」と気合を入れた。雪辱を期す3年後のロスの舞台へ向け、歩みを進めていく。
◆詩のパリ五輪 21年東京五輪覇者として女子52キロ級に臨んだ。初戦を一本勝ちで突破し、2回戦は世界ランク1位のディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)と対戦。2分過ぎに内股で技ありを奪った。優位に試合を進めていたが、残り1分を切ったところで捨て身技の谷落としで一本負け。公式戦黒星は19年11月のGS大阪大会でのブシャール(フランス)戦以来、約4年半ぶりだった。混合団体では2大会連続銀メダルに貢献。
◆阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日、神戸市生まれ。24歳。5歳で柔道を始め、夙川(しゅくがわ)学院中、高から日体大を経て、23年4月からパーク24所属。17年GPデュッセルドルフでワールドツアー史上最年少16歳で優勝。世界選手権は52キロ級で18、19、22、23年の4度優勝。21年東京五輪金メダル。得意技は内股、袖釣り込み腰。159センチ。