俳優の神尾楓珠(26)が、桜田ひより(22)とのダブル主演映画「大きな玉ねぎの下で」(草野翔吾監督、7日公開)でラブストーリーに挑戦している。爆風スランプの名曲にインスパイアされた作品。「手書き」の文字には「その時の環境や感情とかがダイレクトで伝わってくる」と温かみを感じているという。また、デビューから10周年を迎えた神尾の現在地について尋ねた。(宮路 美穂)
ペンフレンドの二人の恋は つのるほどに悲しくなるのが宿命 また青いインクが涙でにじむ―
爆風スランプの「大きな―」の歌の中で描かれているのは顔も名前も、どこに住んでいるかも分からない若い2人の恋物語。接点は手書きの文字だけ。大きな玉ねぎの下(日本武道館)で会うことを願う。SNSですぐにメッセージが送れる令和の今だからこそ、新鮮に、切なく響く。
映画はこの楽曲に着想を得たストーリー。神尾自身はもともと楽曲は知っていたというが、それでも「ちゃんと歌詞を追ったのは今回が初めてで。本当に小説みたいな…映画との親和性が高い曲だなって思いました。今の、この時代からしてみると『本当にこんなことあったの?』って正直信じられない思いもある」と語る。
劇中で演じた丈流は、就活にも身が入らず、自分の感情に素直になれない不器用なキャラクター。「監督からは『素の神尾くんでいい』と言われたんです。僕も高校生から20歳くらいのとき、だいぶひねくれてた(笑)。将来に期待してない感じとかも、過去の自分と近いって思ったので、その延長線でやったなという感じです」と振り返る。
文字すべて直筆 丈流はノートの中に並ぶ文字の世界でだけは、素直な自分でいられる。書くシーンも多いが、劇中に並ぶ文字はすべて神尾の直筆。「手元のアップのシーンも多くて、お芝居とはまた違う難しさがありましたね。書いてるところをあんなにたくさんの人に見られることもないですし、あんなドアップにされることもないですし。右からカメラが入るとすごく窮屈で…」と笑うが、手書きの文字の持つ温かみを改めて実感したという。
「手書きって人柄が表れるなって思いますし、その時の環境とか感情とかがダイレクトで伝わってくる。SNSだと受け取り方しだいで変わっちゃう場合もあるけど、自分の感情をちゃんと伝えたいんだったら手書きだなって。ファンの方からお手紙をいただくこともありますが、便箋を選んで、何度も書き直したりして送ってくれたんだなと思うと、本当にありがたいなと感じます」
◆神尾 楓珠(かみお・ふうじゅ)1999年1月21日、東京都生まれ。26歳。2015年8月、日本テレビ系「24時間テレビ」のドラマスペシャル「母さん、俺は大丈夫」でデビュー。19年、TBS系「左ききのエレン」で連ドラ初主演。主な主演映画に「彼女が好きなものは」「20歳のソウル」など。今後の待機作に映画「パリピ孔明 THE MOVIE」(4月25日公開)。
◆「大きな玉ねぎの下で」 夜はバー、昼はカフェとして営業する「Double」で働いている丈流(神尾)と美優(桜田)は、互いの素性を知らずに“夜の人”と“昼の人”としてバイトノートで業務連絡をしていたが、しだいに趣味や悩みもつづるようになり心を通わせる。相手のことを知らないまま、2人は大きな玉ねぎの下(武道館)で初めて出会う約束をする。一方、あるラジオ番組では30年前の文通相手(ペンフレンド)との恋が語られていた。115分。