プロフィギュアスケーター羽生結弦さん(30)の単独インタビュー最終回。出演・制作総指揮を務める「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」は7日、ららアリーナ東京ベイで千葉公演が始まる。2時間半のワンマンショーは、ツアーならではの変化を遂げながら、千秋楽シリーズを迎える。ペース配分は「マラソン」から「駅伝」スタイルへ。全ての演目に魂を込め、スタートから出力を上げたまま、限界の先で「表現」を全うする。(取材・構成=高木 恵)
1月の広島公演で、より体を大きく使っていた印象を残した。昨年12月の埼玉公演後、何があったのだろうか。
「埼玉が終わって、(演出家の)MIKIKO先生からダメ出しをくらいました」
笑いながら打ち明けた。
「『(最初の演目の)“First Pulse”もっと出力高かったよね』って言われて『あー、そうですね』って。他にも、ここをこう直そうか、ああ直そうかっていうのがあって。『はい』って。実際に映像を見たら確かにな、って強く思ったので。自分の中で埼玉公演の疲れを取るのがまず大変でした。そこから集中して通しの練習をするっていうのもなかなか、時間的に難しかったですけど。自分自身が持っている身体能力的な可動域、可動性を広げるようなトレーニングは重ねてきたつもりです」
一人で演じ上げる2時間半のショー。一つ一つの演目を全力でつないでいる。
「800メートル走フルマラソンコースぐらいの勢いでやっています(笑)。(前回のアイスストーリーの)『RE_PRAY』はフルマラソンの呼吸と消耗でやっていた感じですけど、今回は駅伝に近いのかもしれないです。ファンの方が『駅伝だよね』って言ってくれていたのが印象的で。例えば『“バラ1”(バラード第1番)の区間は坂だよね』と。プログラム一人一人が、誰かが崩れたとしても他でカバーし合えるから駅伝だよねって。なるほど、それだって思ったんです」
埼玉公演はどちらかといえばフルマラソンタイプだったが、広島公演でペース配分を変えた。
「埼玉はずっとずっと一定のペースで、あまり上下させず、ただ、入れるところはしっかり入れつつみたいなことを意識しながらやっていました。それが『RE_PRAY』で学んだことでもあったし、成功体験でもあったし、その練習をしてきていたので。広島は新プロを含めてものすごく出力を上げました。結果として、うまくいかなかった部分もありつつ。でもやっぱり、表現面は格段に良くなったなとは思いました」
最初から出力を上げたまま演じ切った広島の2公演で、得られたものがある。
「あんなに体を可動域フルで使うということを『ポエム』(『Eclipse/blue』)だったり、『GATE OF STEINER』で、今までやってこなかったので。最初から最後まで感情を移入させたまま滑り切れたという成功体験になりました」
問いと再生を繰り返し、ツアーは千葉で千秋楽を迎える。
「今どんどん新しい知識や、トレーニング方法を試しているんです。埼玉から広島へ、だいぶアップデートをして。まだやりかけている最中で、体がどんどん変わっている最中。今までの『RE_PRAY』『GIFT』もそうだったんですけど、一番(負荷の)大きいところ、『序奏とロンド・カプリチオーソ』だったり『破滅への使者』だったり『バラ1』、そういうところのために表現を犠牲にしてきた部分もあったので。表現を犠牲にすることなく、全部出し切れるような体づくりを続けていきたいです」=おわり=