巨人の若手選手の今を伝える「From G」。第3回は、前回に続き24年ドラフトで入団した育成ルーキーを紹介する。育成5位の西川歩投手(18)=山村学園=は、身長169センチと小柄ながらカブス・今永級の回転数を誇る直球が武器。ヤクルト・石川のような息の長い“小さな巨人”を目指す。
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人生初のキャンプが都城でスタートしてから1週間あまり。西川はプロになった実感をかみしめながら、日々を過ごしている。
「初めてユニホームを着て練習してみて、新人合同自主トレとは違う体の張りや緊張感もあります」
身長169センチの小柄な体格だからこそ、かなえたい夢がある。プロになれると希望を与えてくれた存在に、今度は自分がなりたいと夢見る。
「小さい投手は大きい投手よりも使う範囲が少なく動かしやすい。体の使い方は今永さん(カブス)、宮城さん(オリックス)、石川さん(ヤクルト)などに学ばせてもらいました。『本当にこの身長で(プロに)なれるのかな?』と思っていたけど、なることができた。今度は自分が、そういう子供たちに『なれるよ』と希望を与えたい」
体は小柄でもスケールは大きい。最速147キロの直球は2500近い回転数を計測(1分間あたり)。これは今永級の数値だ。
「直球で押すことを高校ではアピールポイントにしていました。ちょっとシュートするので、小学校や中学校では直せと言われたこともあったけど、自分の持ち味だと思って直さないままきました。人にはない、浮き上がるような直球です」
直球の大切さを、身をもって味わってきた。中学2年時に不調に陥ったが、直球中心の投球に戻すと白星がついてきた。軟式から硬式に変わった高校では、1年夏まで直球しか投げなかった。同じ埼玉でしのぎを削り、同期入団のドラフト1位・石塚を「直球でグイグイ来て、内角をめっちゃ攻めてくる。一番やっていて楽しかった」とうならせるまでになった。
「直球をコースに投げ分けられることがすごく大事。3年になったら四球が減って、だいたい投げたいところに投げられます」
性格も真っすぐだ。高2の秋季大会終了後にプロを目指すことを決心。さらなる進化を求めて食事を見直し、増量に取り組んだ。
「一気に食べられないタイプなので、間食を増やしてプロテインも飲んで、こまめに食べようと意識した。学校の休み時間は授業ごとにおにぎり2個で1日10個くらい。水で流し込む時もよくありました」
2年秋に68キロだった体重は、3年夏には75キロに。狙い通りの増量に成功したものの球速は伸び悩んだ。それでも自分を信じ続けた。
「球速が冬に1キロも伸びなくて、2月の終わりまで秋に出した141キロしか出なかった。内心『このままで大丈夫か』と思っていたけど、ひたすら努力は続けていました。春の大会では144キロが出て、そこから自信がつき、育成でもプロに行くという気持ちになりました」
理想は第一線で長く活躍できる投手だ。
「自分も石川選手(ヤクルト)を見て、プロになれるかもしれないと思った。1軍で活躍してこそ、憧れてもらえる存在になる。まず育成からはい上がらないと意味がないけど、1軍で活躍し始めてからが1年目。1軍で最低10年間やりたい」
巨人の“小さな巨人”になるため、挑戦は続く。(臼井 恭香)
◆西川 歩(にしかわ・あゆむ)2006年11月15日、埼玉・川越市生まれ。18歳。川越一中から山村学園へ。1年春から公式戦に登板し、2年からエース。3年夏は県4強。球種は直球、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ。169センチ、76キロ。左投左打。