俳優の岡本圭人(31)の2週連続インタビュー後編。2006年に事務所に入所してから、今年で20年目を迎える。多感な時期に経験した海外留学や、アイドル活動を経て俳優にまい進する芸能人生を振り返り、「舞台で物語を届けることが生きがい」と、芝居への飽くなき探究心を語った。
まさに“舞台三昧”の日々を送っている。昨年10月から4作品に出演し、5か月連続で舞台に立ち続けている。次々と台本を覚え、演じることは「全然苦じゃないし、頭と体と心は舞台に立っている方が健康的。仕事がある方が落ち着けるし、いっぱい寝られるし食べられて、人間的な生活ができる」と、あっけらかんと語る。
今月は「オイディプス王」(21日~3月1日、東京・パルテノン多摩ほか)、5~6月には「反乱のボヤージュ」(5月6~16日、東京・新橋演舞場、6月1~8日、大阪松竹座)の出演も控える。
「ファンの方々は大丈夫なのかな?って、ふと思っちゃいます。こんなにたくさん舞台に出演し、毎回劇場に来てくださって。僕は、お客さんと同じように呼吸して物語を共有する感覚がとっても好きで幸せなんです。お客さんは演劇の一番大きな最後のピースなので、足を運んでくださることが本当にありがたいです」
舞台作品に引っ張りだこの日々の息抜きを聞いても、長い沈黙の末に「何だろう? 普段も演劇の話をする時はすごく饒舌(じょうぜつ)なのに、他のことや自分のことって全く話せない。ちょっとした悩みですね」と困ったような表情を見せる。
子どもの頃から憧れていた演劇の世界を探究し、没頭し、魅せられる時間が至福のようだ。「役のことについて書かれた本や作品を研究することに時間を費やすことが好き。仕事とプライベートの境界線はないかな。稽古を控えている時期は、休みの日でも朝9時に起きて図書館に行って勉強して、スタジオを取って練習しますね。台本に書き込む用の文房具を探す時間も楽しい」と声を弾ませるのは、やっぱり演劇のことだ。
2018~20年に米国の名門演劇学校に留学し、21年にHey!Say!JUMPを脱退。俳優として独り立ちして約4年がたった。端から見れば、大きな変化や選択をしてきた人生に見えるが、「なるようにして人生がなっている。そういう運命の中を生きている感覚」と捉えている。
9歳から約5年間、単身で英国留学。20年には演劇留学先の米国でコロナ禍を経験した。
「自分の意思じゃないけど気づいたら英国にいて、訳も分からずに生きるために言葉を覚えたりして。米国でも途中でお金がなくなってアルバイトしたり、コロナ禍で急に世界が真っ暗になったりしたけど『人ってどんなことがあっても生きられるんだ』って実感して。いつもと違う場所で生きられた時に初めて『この仕事が本当にしたい!』って思えたんです。それが自分にとっては演劇だった」
舞台で表現することは「生きていくこと」そのものだ。
「人生で起こるすっごいショックなことや嫌なことも『この経験をしておいてよかった!』って役を作る瞬間に思うことがある。『あの経験がなければ、この役はできなかったな』と自分の人生を肯定してあげられるし、救いにもなりますね。舞台に立って物語を届けることが人生の喜びでもあるし、生きがいでもある」。挑み、もがき、楽しみながら、俳優人生を紡いでいく。(ペン・奥津 友希乃)
◆岡本 圭人(おかもと・けいと)1993年4月1日、東京都生まれ。31歳。2006年、事務所入所。07年11月「Hey!Say!JUMP」としてCDデビュー。11年、TBS系「3年B組金八先生ファイナル」でドラマ初出演。21年グループを脱退し、俳優に専念。同年「Le Fils 息子」で舞台単独初主演。25年、第59回紀伊國屋演劇賞で個人賞を受賞。父は俳優・岡本健一。血液型O。