1月15日(日本時間16日)にアスレチックスとマイナー契約を結んだ桐朋・森井翔太郎内野手(18)が11日、東京・国立市内の同校で記者会見に臨んだ。ドジャース・大谷翔平投手(30)をほうふつとさせる新怪物は「自分の進みたい道に進もう」と直接メジャー挑戦を決断した理由や二刀流への思いを告白。“本家”顔負けの向上心で5年目までのメジャー昇格を目指し、異例のキャリアをスタートさせる。
物おじせず、堂々と言葉を紡いだ。森井はテレビカメラ11台、約50人の報道陣の前でアスレチックスと契約したことを報告。「(MLBは)小さい頃の夢でした。(マイナー契約で)自分が見ていた世界に今すぐ行けるわけではないですけど、一個一個やるべきことをやっていきたいと思います」と所信表明した。
自身のスタイルを貫くため、ア軍を選んだ。9球団から誘いを受けたが「二刀流で高く評価していただいたことと、若手の選手をどんどん使っていく方針がある。自分にもチャンスがあると感じました」と理由を説明。目標を問われると「(メジャーには)4、5年で上がっていけたら最高。投手だったら2ケタ勝つ、打者だったら30本、3割は目指したいと思います」と意気込んだ。
海の向こうに目指すべき存在がいる。高校通算45本塁打、最速153キロを誇る森井にとっても、大谷は雲の上の存在だ。「今は技術的にも体力的にも全然見えない存在ではあるんですけど、これからどうやって埋めていこうか考えながら練習したい」。大谷と対戦するなら投手か野手のどちらがいいか聞かれると「どっちも嫌です…」と苦笑した。
メジャーを意識し始めたのは小学校3年生の頃。一度は腐りかけたこともある。桐朋中1年から2年時にかけてコロナ禍で大会も中止になり、登校する機会もなくなった。一日中「YouTube」を見て過ごす毎日。救ってくれたのは漫画やアニメで人気の「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎だった。「頑張ってトレーニングしていく姿が自分と重なるかなと思って。どうせやるならトップを目指したい」とMLBを目指す転機になった。インストラクターの母・純子さんから“ヨガの呼吸”も学び、強くなった。
偏差値71の難関進学校で小中高と学んだ秀才は、高校2年の夏から本格的に英語を勉強。音読などを意識した学習法でメキメキ上達している。1月には米アリゾナ州の球団施設で約1か月練習に励んだが、海外の選手とも難なく交流を深めた。メジャー昇格は高い壁だが「環境に関しては不安もあんまりないです」と森井。自分を信じ、道なき道を進む。(中村 晃大)
◆森井 翔太郎(もりい・しょうたろう)2006年12月15日、東京・府中市生まれ。18歳。桐朋小1年時に住吉ビクトリーで野球を始め、2年時から武蔵府中リトルに所属、4、5年時に全国V。6年時にライオンズジュニア選出。桐朋中では練馬北シニアに在籍後、1年秋から同校軟式野球部でプレー。桐朋では1年夏から三塁のレギュラー。2年秋から遊撃手。184センチ、89キロ。右投左打。
◆森井に聞く
―直接メジャーの決断に至るまで、どういったものが判断材料になったか。
「難しい決断だったが、アスレチックスの方が丁寧に説明してくださり、早いうちから米国に行って慣れた方がメジャーに上がった時、すぐに活躍できるんじゃないかという考えがあった。生活や食に慣れるためにも、早いうちから行った方がいいと感じた」
―いつかメジャーで対戦したい選手、打者目線と投手目線では?
「打者目線だとデグロム投手(レンジャーズ)、投手目線だとデラクルス選手(レッズ)です。自分が目指している選手だから」
―10日に帰国。3月上旬に渡米するまでの期間はどう過ごす?
「親知らずを抜かなきゃいけなくて…(笑)」
◆森井のメジャーまでのルート ア軍のキャンプ施設を利用したルーキーリーグ「ACLアスレチックス」にまず所属し6~9月のシーズンを戦う。ア軍でそのままステップアップする場合、シングルA「ストックトン・ポーツ」、ハイA「ランシング・ラグナッツ」、ダブルA「ミッドランド・ロックハウンズ」、トリプルA「ラスベガス・アビエイターズ」と段階を踏み、メジャー昇格となる。
◆ルーキーリーグから成り上がった主な選手 現ドジャースのベッツは11年ドラフト5巡目(全体172位)でオーバートン高からRソックスに入団し、同年に18歳でルーキーリーグ出場。12年にシングルA、14年は2A、3Aと駆け上がり、メジャーデビューまで果たした。フリーマンはエルモデナ高から07年ドラフト2巡目(全体78位)でブレーブス入団。同年に17歳でルーキーリーグに出場し、08年にシングルA、09年に2Aと着実に階段を上がり、3Aで開幕を迎えた10年に20歳でメジャー昇格となった。