昨年の「女芸人No.1決定戦 THE W」で8代目女王に輝いたお笑いコンビ「にぼしいわし」がこのほど、スポーツ紙のインタビューに初めて応じ、今年の飛躍を誓った。芸能事務所に所属せず、フリーランスとして活動し、ライブを中心に力を蓄えてきた。優勝から2か月、1月に地元・大阪での凱旋(がいせん)ライブが実現。ニッポン放送「オールナイトニッポン」、日本テレビ系「有吉の壁」に出演するなど、メディアへの露出を増やしている。(増田 寛)
マイペースな見た目のボケ担当・香空(きょうから)にぼしと、しっかり者を体現したようなツッコミ担当の伽説(ときどき)いわし。高校のクラスメートとして出会った2人は、高校3年生の2010年に「高校生お笑いNo.1」を決める「ハイスクール漫才」の近畿大会準決勝に進出。勢いをそのままに、大阪NSCに入学した。
同級生でコンビを結成したからか、コンビの強い絆が武器だ。
いわし「ビジネスでやっているコンビだったら、解散していたかもしれないですね。でも、同級生だから許せてしまう」
にぼし「できるだけ何もしたくない。その一心で生きてます。相方のおかげで生きながらえている感じです」
事務所に所属する芸人が多い中、2人はフリーランスを貫く。当然、マネジャーもいない。番組やライブの出演依頼、雑務などは全て自分たちで行うが「協調性が皆無なので(笑)、絶対に事務所に入ってもうまくいかないです。フリーでよかった」と声を合わせる。
いわし「直属の先輩がいない、ロールモデルがないという短所はあるけど、思いつくことをすぐにやりたい。フリーのほうが合うと思ってます」
にぼし「群れることができないので、少人数で動くのがベスト。事務所からの勧誘もあったけど断りました」
お笑いの基礎はライブで鍛えた。ライブで共演した芸人のツテをたどり、また、自ら売り込み、多い時は年間500ステージ、1日最大9回の板を踏んだ。
いわし「お客さんの呼び込みと本番の繰り返し。自分たちの主催ライブであれば、スタッフの指導もある。大変だけど、事務所に所属してないからやるしかない」
にぼし「テレビで経験を積むことができないから、ライブで腕を磨くしかなかった。THE Wで優勝して『ライブ中心の芸人が優勝してうれしかった』と言ってもらって。胸が熱くなりました」
高校時代からコンビを組むが、忘れられないのは大阪NSC時代。周りの意識の高さに、ただただ驚かされたという。
いわし「クラスの男子に『私たちの方が面白いぞ!』というのを見せつけるために始めたコンビ。NSCは本気で売れたいという人たちばかりで。圧倒されました」
にぼし「私たちが来る場所ではないなと。同期にゆりやんレトリィバァもいて、ずっと笑いを取っていました。心が折れました」
NSCでも鳴かず飛ばずな日々が続き、大学の受験勉強に専念。お笑いの夢は諦められず、一般企業に就職しながら、フリーでお笑いライブに出演。漫才日本一を決める「M―1グランプリ」で準々決勝(2019年から4年連続)まで進むなど、地力を蓄えた。
芸人仲間のススメもあり、2023年10月に上京。心機一転で挑んだM―1は3回戦敗退。コンビ解散も頭をよぎったという。
にぼし「自分のお笑い力の伸びしろに限界を感じました。もう大阪に帰ろうと本気で思っていました」
いわし「昨年の『THE W』で優勝していなければ、芸人は辞めようと思っていました。自分たちの中で最後のチャンスでした」
下馬評を覆し、フリーの芸人として初めて「THE W」を制した。優勝から2か月が経(た)ち、現在は「THE W」の王者は大成しないという声に対抗心を燃やす。
にぼし「『THE W』は質が低いとか、世間的な評価が低いような感じがする。その人たちを見返すために、M―1で良い結果を残して、それ見たことか!と言い返したい。王者としてのプライドもある」
フリーの星として、お笑い戦国時代を勝ち抜く覚悟だ。◆にぼしいわし
◆にぼしいわし 高校の同級生で2013年に結成。大阪NSC35期生。卒業後に一度就職した。19年に離職して芸人活動に専念。23年に拠点を大阪から東京に移している。