広島テレビのアナウンサーが気になるテーマを自ら取材してお伝えする『アナたにプレゼン』。宮脇靖知アナウンサーが、広島県廿日市市で生産する野菜のブランド化を目指す取り組みについてをお伝えします。
廿日市の新たなブランドづくりを仕掛けるのが、山本貴志さん53歳です。廿日市市出身で、これまでに様々な職業を経験し、「地元に貢献したいから」と33歳の時に脱サラをしました。
山本さんは九条ネギの種苗を京都から持ち帰り、3年前から「廿日九条葱」を生産しています。2023年の全国規模のコンテストで、最優秀賞に輝きました。
「廿日九条葱」は、民間の野菜に関する分析や研究を行う会社が開催した『オーガニック・エコフェスタ2023』というコンテストで、糖度・抗酸化力・ビタミンCの数値が平均値を大きく上回り、えぐみや苦みとなる硝酸イオンの数値が低いことから「甘みはあるが苦みは少ない」という結果になりました。
「廿日九条葱」の秘密は、土壌分析に基づく肥料設計をしっかりしているからです。牡蠣の殻は、一般的には肥料として使われますが、通常の1.5倍から2倍の量を使っています。さらに、パウダー状・粒状・少し大きめのものと、3種類の大きさに分けることで、効率よくネギが育ちます。また、海が汚れ、増えすぎると牡蠣の稚貝を窒息させることで、瀬戸内海でも問題となっている「アオサ」も肥料にしています。牡蠣とアオサで廿日市らしさも取り込みながら、良いネギを作っています。
山本さんは「廿日九条葱」を手掛けるだけでなく、「はつかいちご」というイチゴの生産にも携わっています。イチゴの生産量を増やし、加工開発も行っています。元々、廿日市市平良(へら)地域は「平良イチゴ」が非常に有名で、かつては生産農家が100軒以上ありました。しかし、後継者不足により生産量が減少し「無くなってはいけない」と、イチゴ作りに取り組んでいます。
さらに、ネギ作りを始めた理由として、広島といえば「お好み焼き」で、上にたくさんのネギを乗せるので「廿日市でできた野菜を、多くの人に親しんでもらえるのではないか」と考えたからだそうです。実際、廿日市周辺のお好み焼き屋では「廿日九条葱」をトッピングしている店舗も多いということです。
「廿日九条葱」を愛するファンが 多く、「廿日九条葱をいただく会」が、廿日市市宮園にある大人気店「中華キッチン彩華」で開かれています。「廿日九条葱」のフルコースのようなメニューを楽しむ回で、これまでに3回開かれています。店長の永野さんは「本当に癖がなく、甘味もあるし、どんな料理にも万能。」と話していました。メニューにある看板商品の「ねぎそば」の中に「廿日九条葱」を入れています。 また、メニューには載っていませんが、お願いをすれば、薬味として「廿日九条葱」をトッピングしてくれるそうです。
「廿日九条葱」を作る先に見越しているものがあります。生産をしている廿日市市原は、風光明媚で瀬戸内海を見下ろせるような高台が続いている場所です。しかし、急傾斜地が多いことから、高齢者にとっては作業しにくい場所でもあります。そのため、農業に従事する人が減っています。
農業従事者の減少に歯止めをかけるために、耕作放棄地を活用することにしました。膝丈ぐらいまで草木が生い茂っている中を草刈機やトラクターで畑を耕し、現在1万3000平方メートルの敷地があるそうです。さらに増やして、2024年度中には全ての場所でネギを作る予定ということです。廿日市だけではなく「広島市内、さらには県内外へ」という思いがあります。農業に従事したい人のサポートをする就農支援も行っており、「農業を通して廿日市を元気にしていきたい」ということです。
「廿日市のために、いいものを皆さんに伝えたい」という思いから、地域としっかり連携しています。スーパーマーケットでは、廿日市周辺の農家と一緒にコーナーを設けて、野菜に触れてもらう場所を作ったり、駐車場で餅つきイベントを行い、その中に廿日市のイチゴを入れて子どもたちに食べてもらったり、触れてもらう取り組みをしています。また、廿日市市との『美味しい廿日市プロジェクト』という取り組みがすでに動き出しています。ネギだけではなく、様々な野菜を生産する農家およそ20軒が協力し、野菜を「廿日市ブランド」として確立していくとのことです。参加を希望する場合は、廿日市市農林水産課まで連絡してみてください。「廿日九条葱」は、9月末ぐらいから廿日市のスーパーなどでも並ぶそうです。暑い時期は、冷ややっこの上にかけて食べるのがおすすめとのことです。ぜひ、探してみてください。
【2024年8月19日放送】