広島テレビのアナウンサーが、気になるテーマを自ら取材して、お伝えする『アナたにプレゼン』。有田優理香アナウンサーが、競歩で日本一に輝いた広島県の高校生をプレゼンします。
競歩は、トラックやロードを「歩いて」速さを競う陸上競技です。2024年のパリオリンピックでも盛り上がりを見せました。その競歩で日本一に輝いた高校生が、広島市立舟入高等学校3年の中島壮一朗選手です。元々長距離の選手でしたが、高校1年生の6月にケガをし、そのリハビリとして競歩を始めたそうです。メキメキと力をつけ、2024年のインターハイで5000m競歩で優勝に輝きました。
中島選手に、インターハイを振り返ってもらいました。
■広島市立舟入高等学校3年 中島壮一朗選手
「(インターハイから)1か月半ぐらい経って、ようやく自分の中で優勝したんだなっていうのが、しっかり実感としてわいてきてくれたかなと思います。ケガをしていなければ(競歩を)やっていなかったし、自分一人で多分できていなかったので、何かしらのめぐりあわせを、日々、最近は特に実感していますね。」
2023年はインターハイ4位。2024年悲願の優勝に輝いた中島選手。そんな中島選手が取り組む競歩は、見た目以上に難しく、厳しく、奥深いスポーツです。その競歩の魅力を探ると、中島選手の強さが見えてきました。
中島選手強さのヒミツは、「歩きのはずなのに速い」「独特のルール」「 出会いは運命」の3つです。
まずは「歩きのはずなのに速い」についてです。一般的に、成人男性の歩くスピードが時速4キロ~5キロ、自転車の平均時速が14キロに対し、競歩の速さは、平均時速15キロです。中島選手の2024年のインターハイ優勝の記録は5000m20分45秒で、計算すると時速およそ14キロとなります。
速く歩くことができる理由は、歩くときの「体の使い方」にありました。中島選手によると、1歩をより伸ばすために、腰のひねりを使うのが競歩の基本だそうで、骨盤を回して動き、腕の引く力で体をまっすぐに向けたまま歩きます。また、特につま先を上げないといけないため、かかとで着きます。膝を伸ばしてかかとで着く性質上、すねを上げるために、前脛骨筋など普段走りで使わない筋肉をひたすら使う競技だと、話していました。
もう1つ大事なのは「腰の使い方」です。普通に歩くよりも左右の足にかかる体重を、しっかりと骨盤に乗せるイメージが競歩において大事だそうです。体重を乗せた側の骨盤がしっかりと上がっていることが、競歩のスピードの証だそうです。独特のフォームは、体重移動の腰の使い方からきています。
2つ目の強さのヒミツは「独特のルール」です。競歩には独特の2大ルールがあります。1つは、常にどちらかの足が地面に接していなければいけないこと、2つは、かかとが地面についてから、足が地面と垂直になるまでは、膝を曲げてはいけないことです。両足が地面から離れると「ロス・オブ・コンタクト」、足が垂直になっていないにも関わらず、膝を曲げてしまうと「走っている」とみなされ「ベント・ニー」という違反になります。
厳しい審判の目で、完歩することも難しい…
競技中は、審判の目で違反の判断がされています。審判員はトラックでは6人、ロードでは9人で、コース脇で常に違反がないかチェックをしています。疑わしい場合は、警告イエローカードのようなものが出され、改善されない違反が確認されるとレッドカード、レッドカードが異なる審判員から3枚出されると失格となります。2015年に行われた、世界陸上の北京大会の男子50キロ競歩では、参加者53人のうち、15名が失格や途中棄権で完歩にならなかったそうです。ルールを守りつつ、相手と駆け引きしながら歩くことは、強靭な精神力が必要となります。
中島選手が大きな舞台でも強いヒミツは、大きな舞台でも歩型のフォームを決めると、そこから動かさず、どれだけペースが乱れても、自分のフォームに返ることを常に意識しているそうです。
中島選手を指導している佐伯佳祐監督も「すごい」と評価しており、「これをやればいい」と分かっていても、それを長く努力をすることは難しいが、それを継続できる精神性がある選手だと話していました。
3つ目の強さのヒミツは「出会いは運命」です。没頭している競歩について、中島選手は「最初は、けがのリハビリで出会った競歩です。3年間追求できる、自分だけのものを見つけられて幸せだ。」と話していました。
中島選手の今後の目標は、10月にある国民スポーツ大会で「高校生活を有終の美で締めくくること」だそうです。今後の活躍に期待しましょう。