岐阜県立岐阜商業高等学校から青山学院大学と野球の名門校をたどり、共にキャプテンを務めた佐々木泰内野手は、強打のスラッガーとしてカープからドラフト1位指名を受けました。野球エリートの原点である高校時代の恩師が語る、佐々木選手の素顔に迫ります。
大学3年生から日本代表に名を連ねた佐々木泰(ささき・たい)。力強いスイングを生かし、東都リーグで描いたアーチは現役最多の12本です。
■ドラフト1位 佐々木泰内野手
「自分に求められているものは、長打力だと思うので。ファンの皆さんの期待に応えられるように、長打力にさらに磨きをかけていけたらいいかなと思っています。」
持ち味と語る「長打力」。その原点となったのは、名将との出会いでした。
■ドラフト1位 佐々木泰内野手
「高校の頃の練習が、一番長打力に繋がっているかなというのを感じていて。あの3年間があったからこその、今だと思っています。」
岐阜県立岐阜商業高校は、カープOBの石原コーチなどプロ野球選手を多数輩出する名門校です。当時、チームを率いていたのは鍛治舍巧(かじしゃ・たくみ)監督です。母校を4度の甲子園に導くなど、数々のプロ野球選手を育てた名将です。
■元・岐阜県立岐阜商業高校 鍛治舍巧監督
「高校の時に「プロに行きたい」と言っていて、「いやいや、君は大学に行って4年生でドラフト1位になれ」と言ったんですけど、「約束を果たしました」とメールが来ました。」
教え子の朗報に喜ぶ一方、名将ならではのうれしい悩みもありました。
■元・岐阜県立岐阜商業高校 鍛治舍巧監督
「実は、ドラフトの瞬間に「困ったな」と思いましてね。というのが、小園がサードをやっているでしょ。小園は枚方ボーイズの教え子なんですよ。「あれ、(佐々木と)ポジション重なっちゃうな」という思いがあって。」
高校野球の指揮を執る前は、少年野球チームの名門・枚方ボーイズで指導。その後、熊本県の秀岳館高等学校を経て、佐々木の入学と同時に岐阜県立岐阜商業高校へ。初めて出会ったときから、佐々木の潜在能力の高さに驚かされました。
■元・岐阜県立岐阜商業高校 鍛治舍巧監督
「スケールがあって振り幅が大きいし、このバッターは良いなと思って「はい、君4番」ということで、その段階で4番を決めたんですね。」
ダイヤの原石を磨くため鍛治舍監督が課したのは、とにかく「振る」こと。1日1400スイングを超える驚異的な練習量が、佐々木の長打力を築きました。
■ドラフト1位 佐々木泰内野手
「だんだん体がしんどくなってくる中で、ボールを遠くに飛ばそうとやると、無駄な力がなくなって、酸素が回らない状況で「飛ばそう、飛ばそう」となると脱力して、打つ瞬間だけ力を入れるというスイングがだんだん身についてきたんで。ミートポイントで100パーセントの力を出すという打ち方は、そこで身についたかなと思います。」
■元・岐阜県立岐阜商業高校 鍛治舍巧監督
「やっぱりとことん振らないと、本当の意味でのスイングスピードは出てこないんですよね。よく「脱力の力」ということを言ったんですけれども、本当に疲れ果てて、疲れ切ったところでするフルスイングは、意外とそこからスピードがあがってくるんですよ。」
高校3年時にはキャプテンでチームをまとめた佐々木。名将の元での鍛錬は、技術に加え精神面での成長にもつながりました。
■ドラフト1位 佐々木泰内野手
「『気分で野球をやるな』と怒られたことがありまして。改めて、大学に来てその言葉の意味が分かったというか。」
■元・岐阜県立岐阜商業高校 鍛治舍巧監督
「彼はすごく真面目なんですよね。真面目だから、良い意味でいい加減だったら良いんですけども、常に完璧を求めるというか、言い方を変えたら喜怒哀楽の結構激しい選手。気持ちが大きくぶれたときには、安定した力は出ないので。安定した力を出そうと思ったら「いつもぶれない心を。それが大事だ。」という話をしたんですけどね。」
2020年の夏。甲子園での交流試合では、大会初ホームランを放ち注目を集めます。
■ドラフト1位 佐々木泰内野手(高校3年生)
「将来的にプロ野球に入って、1軍の中で一流に活躍できる選手になるのが、自分の目標というか、夢なので。」
さらなるレベルアップを求め、東都1部リーグに所属する青山学院大学へ進学しました。1年生からレギュラーを掴むなど、すぐに頭角を現します。しかし、プロ入りへのアピールの場となる3年秋と4年春のリーグ戦では打率1割台と低迷します。そんな悩める時期に立ち返ったのは、恩師の教えでした。
■ドラフト1位 佐々木泰内野手
「どんな時もしっかり自分の気持ちを保って、どんな状況でもやるべきことは変えずに、プレーする大事さは分かった。またこれから色んな壁はあると思いますけど、どんな壁があっても、ぶちこわしてやっていく自信はついたと思っています。」
高校時代に磨いた長打力と、大学で鍛えた強靭なメンタルを生かし、約束のドラフト1位指名を掴んだ佐々木。目指すは、恩師も期待を寄せる日本一のプレイヤーです。
■元・岐阜県立岐阜商業高校 鍛治舍巧監督
「新井監督としても、おそらく大きな期待をされているだろうと思いますから、そういう期待に応えるような大活躍を、春からすぐ1軍に入って、すぐ試合に出て頑張ってほしいなと。」
■ドラフト1位 佐々木泰内野手
「ホームラン王というタイトルを獲りたいという気持ちはあるので、まだまだ今の技術では、獲れるほど甘い世界ではないと思っているので。体であったり技術を磨いて、最終的にはホームラン王を獲れるように頑張りたいと思います。」