最近、教育現場の働き方改革の影響で、部活動が様変わりしています。それに伴い、広島県内の2つの学校では、外部から指導者を招いて部活動を行っています。その取り組みについて取材しました。
広島県は、中学校の部活動の地域移行を進めるため、実業団チームと連携し、指導者を育成する研修会を開いています。指導者不足の解消が狙いです。
音楽大学に在籍する新しい指導者
2024年の夏に新たな指導者を迎えたのは、近畿大学附属広島高等学校・中学校東広島校の吹奏学部です。部活指導員を派遣する外部の会社から、新たな指導者を招きました。
岡本息(いぶき)さんは、学校の吹奏楽部の指導者として、7月に初めて生徒たちと顔を合わせました。
■吹奏楽部の新指導者 岡本息さん
「初めまして、岡本息です。まだ20歳でみんなと年も近くて馴染めるというか、そういう先生になれたらなと思います。これからよろしくお願いします。」
顧問や指導役の先生はいますが、新たな指導者を招いた理由を聞きました。
■吹奏楽部顧問 堀田貴志先生
「外部委託の方に来ていただけることによって、私どもの負担が減って、私どもとしては、より教科指導ですとか、学校の業務に専念できる部分もありますので。」
日々の練習の監督はもちろん、大会の引率など顧問は多忙です。
音楽大学に在籍している岡本さんは、部活動の指導員を派遣する会社に登録し、この学校から声が掛かりました。早速、サックスパートの生徒たちの指導が始まりました。
■吹奏楽部の新指導者 岡本息さん
「個人は自由に歌っていいよ。個人の歌い心、感性違うから。(演奏に)山を作る。しっかり。OK?」
新しい指導者が気になった部長が、こっそり練習をのぞきにきました。
■吹奏楽部部長(当時) 齋尾琥丈(さいお・こじょう)さん
「最初なので(生徒は)結構緊張していると思うんですけど、これから時間をかけて岡本先生も部活全体も、本当にみんなで良い音楽を作っていけたらなって思います。」
■吹奏楽部の新指導者 岡本息さん
「先生から「こうだよね」「こうしてね」と言うのも大事なんですけど、生徒たちの思いというか、やっぱり音楽なので一人一人思っていることがそれぞれ違うので。思っていることを、それぞれの感性を最大に生かしたいというか、生徒さんたちに人としても、音楽の奏者としても成長してほしいなと思っております。」
生徒に近い目線で、音楽の楽しさを伝えたい。岡本さんの指導は、始まったばかりです。
書店の店主が指導する卓球部
尾道市立因島南中学校の男子卓球部では、因島で長く続く書店の男性が、6年にわたって指導を続けています。
■因島書房店主 楠見剛(くすみ・つよし)さん
「仕事の時間が空いたときにお手伝い、協力しとるだけであって。私は顧問じゃないです。(普段は)書店員で、書店で営業しております。」
因島で60年続く書店「因島書房」の店主・楠見剛さんは、書店の仕事の合間をぬって、週に3日ほどボランティアで卓球部の指導におもむきます。
■因島書房店主 楠見剛さん
「サーブして続くかどうか。思ったより消耗激しかったなと思って。まだ全然、これからです!全然大丈夫です。」
体力的になかなかハードな練習。書店の店主がなぜ、部活の指導を買って出たのでしょうか?
■因島書房店主 楠見剛さん
「本の配達で職員室にうかがった時に、当時の校長先生が卓球部でマシンを購入しようかしまいか話していまして。高価な卓球マシン買うくらいなら、僕が来て球あげしますよって。」
以来、6年にわたって外部指導者として、生徒たちとつきあってきました。それだけでなく、書店の隣にある楠見さん個人の練習場を、生徒たちのために開放しました。もとは、楠見さんの2人の子どもためにつくった卓球道場です。コロナ禍の間は使っていませんでしたが、この日は「もっと練習したい」という生徒たちのために、久々に道場を開けました。
■卓球部の生徒は…
「部活ではやらないことをやって、楽しかったです。」
「早く来たかった。もうちょい。」
■因島書房店主 楠見剛さん
「試合で勝てるようになったら、もっともっと楽しくなってくるんですよ。人間的に成長したなって感じるときがあるんですよ。それを見たときに、(指導を)やってよかったなって思って。」
時代によって「カタチ」を変える部活動。地域や学校で子どもたちの成長を見守る、新しい仕組みづくりが求められています。
【テレビ派 2024年10月30日放送】