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【特集】オーストラリアへ嫁いだ『戦争花嫁』 ふるさとで迎えた90歳の誕生日 広島・呉市

広島テレビ ニュース 2024年11月16日 8時0分

戦後、外国人兵士と結婚し、海外に移り住んだいわゆる『戦争花嫁』は、日本からアメリカへはおよそ4万5千人、オーストラリアへはおよそ650人が嫁いだと言われています。2025年、終戦から80年を迎えます。『戦争花嫁』も高齢になりました。そんな中、オーストラリアから里帰りし、家族とともにふるさとで迎えた90歳の誕生日を迎えた女性に密着しました。

ふるさとで家族と迎えた90歳

90歳を迎えた片山みす代さん

11月2日。片山みす代さんは90歳の誕生日を迎えました。

■片山みす代さん

「こういう誕生日、生まれて初めて。今度は100まで生きて、また長浜に来たいですけどね。」

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広島県呉市広で開かれたバースデーパーティーでは、みす代さんの子や孫らがお祝いの席を囲みます。この日のためにみな、オーストラリアなど海外から集まりました。ここは、みす代さんが生まれ育ったふるさとです。

家族とたどる思い出の場所

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誕生日前日。みす代さんたちの姿はJR広駅にありました。雨の中、向かったのは、長浜地区にあるみす代さんの母校の小学校です。

■長男・ケンさん

「当時と同じものはある?」

■片山みす代さん

「ないわ。かつては、木造の建物だったのよ。」

■長男・ケンさん

「木造だったんだ!」

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穏やかな瀬戸内の海に面した広島県呉市広長浜で、みす代さんは1934年に6人兄弟の3番目として生まれました。

■片山みす代さん

「私は学生時代、とっても恥ずかしがり屋だったの。」

■長男・ケンさん

「今は違うよ!」

■長女・イーレンさん

「ウソばっかり!信じられない!」

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子どものころから、歌を歌うことが大好きだったというみす代さん。小学校の卒業名簿が残っていました。

■片山みす代さん

「私の名前だわ。何人ぐらい残っているのかな、私の同級生。」

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さらに中学校では、サプライズが用意されていました。全校生徒が集まって、歓迎の会を催してくれたのです。落語や合唱を鑑賞し、みす代さんにとっても、家族にとっても特別な体験となりました。

■片山みす代さん

「本当に涙が出そうでした。まさか、この度こういう歓迎をしてもらえると思わなかったんで。」

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長浜公園を訪れたみす代さんは、当時の思い出を語ります。

■片山みす代さん

「昔はここが丸かったのよ。あそこから海に飛び込んでいたのよ。ここに船はなかったし。」

(中央)片山みす代さん

海とともに過ごした長浜での日々。しかし、そこに戦争が暗い影を落とします。

■片山みす代さん

「10代の時に食べるものはない、着るものもあまりない。」

あの日、ふるさとから見えたものは…

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軍港だった隣町の呉は、空襲で焼け野原になりました。長浜では大きな被害はなかったと言いますが…

■長女・イーレンさん

「母は原爆も見たの。」

■片山みす代さん

「煙だけね。長浜の山に上がっていたの、その日。急に雲が出てきて「呉の方のガスタンクが爆発したんじゃないかな」と言っていたら、夕方になったらケガをした人たちが来て「ピカドンピカドン」って。」

赤い糸で紡いだ絆…花嫁は渡豪を決意

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戦後の呉は、アメリカ軍に代わってイギリス連邦軍が占領、統治しました。その主力は、オーストラリア軍の兵士たちでした。みす代さんがオーストラリア軍の技術兵、9歳上のケンさんと出会ったのは、17歳の時です。

■片山みす代さん

「友達のお家に「食事においで」と言われて行ったら、たまたま彼女の誕生日だったんですよね。たまたま主人になる人も、彼も誘われていて、そこで初めて知り合って。恥ずかしくて旦那の前でこうして顔を見られない。2人でウブだったんですよ。」

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恋に落ちたふたり。いったんオーストラリアに帰国したケンさんですが、みす代さんに会いたい一心で、志願して再び日本へやって来ます。そして、1953年に結婚。新婚生活を送った家は、今も残っていました。

■片山みす代さん

「2階に住んでたの。オーナーが下に住んで。ものすごく思い出のあるところ です。本当に優しい人だったから。本当に私は運がよかったわけね、いい人に知り合って。」

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1955年、みす代さんは21歳でふるさとの長浜を離れ、オーストラリアへ渡りました。子どもも授かりました。

■片山みす代さん

「つらくあたる人がいるかもしれないから、覚悟してくるように(夫から)言われたんですけど、一度もそういう目に遭いませんでした。」

■長女・イーレンさん

「私は、学校で周りにからかわれたわ。見た目がアジア系だから。」

長女・イーレンさん

■片山みす代さん

「覚えているけど…「どうしてお父さんと結婚したの?」と言われたことがある。」

■長女・イーレンさん

「今は、日本人の血が流れていることを誇りに思うわ。とてもラッキーだと。」

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4人の子に恵まれたみす代さん。夫・ケンさんと支えあいながら、家族を守りました。

■片山みす代さん

「(夫が)亡くなって25年になるんですけど、本当にいい旦那だったです。優しかったです。いまだに、毎日考えないことはないです。」

家族と楽しむ、ふるさとの伝統の祭り

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ふるさとの長浜で90歳の誕生日を迎えたみす代さんは、秋祭りを楽しみにしていました。

■片山みす代さん

「なんか、うきうきしてきています。」

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最年長のみす代さんが、家族の誰よりも先に神社をめざします。ふるさとに受け継がれる伝統的な秋祭りを、家族にも見て、聞いて、体験してほしい。そして、久しぶりに、自分も楽しみたいという思いです。

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みす代さん、丈夫なのは足だけではありません。イカ焼きも、難なくかみ切ります。

みす代さん「初めてこういうものを見せてもらって、ありがとうね。」

■片山みす代さん

「戦争が終わったのが11歳で、当分余裕がなくて、こういうのを見たことがなくて。私にしてみたら、初めて見たようなもので。本当に楽しかったし、感激しました。」

タフな母の新たな目標

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■長女・イーレンさん

「この休暇、誕生日は夢だったの。私は夢がかなったわ。母にとっても。90歳で、こんなに健康でタフな母はいないわ。」

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歴史の波に翻弄されながらも、異国の地にたくましく根を張り、今も人生を謳歌するみす代さん。100歳の誕生日も、家族と長浜で迎えたい。新たな目標ができました。

【2024年11月13日放送】

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