『わたしらしく生きるプロジェクト』です。女性の起業家を支援するコンテストが広島市で開かれました。コンテストに参加し、高齢化が進む今、「介護」の課題を解決しようと奮闘する、64歳の女性の挑戦を追いました。
11月、広島市内のホテルに1人の女性の姿がありました。西本理恵さん・64歳です。
■西本理恵さん
「もうなにがなんだか、頑張るのみ。」
西本さんはこの日、中四国の女性の起業家を支援するコンテストにのぞみました。
西本さんは、関節が破壊され動かなくなる病「関節リウマチ」を患っています。訴えるのは、自身の経験に基づいた「介護」に関するビジネスです。
■西本理恵さん(プレゼン)
「介護を、準備とマネジメントで支える、新しい形を提案します。」
広島市内の自宅に住む西本さん。要介護度は最も重い「5」で、生活には訪問介護員の存在が欠かせません。それでも「できることは全力で」。西本さんは、いつも笑顔です。
リウマチを発症したのは20代後半。キャビンアテンダントとして世界を飛び回っているさなか、激しい痛みに襲われました。
■西本理恵さん
「30代から80代~90代くらいの人の身体機能。不安ばっかりで、自分の体が自分じゃないっていう感じで。」
仕事を辞めて自宅に引きこもる絶望の日々は、6年続きました。しかし、ひとつの夢が西本さんを動かします。それは、自宅で見続けていた韓国ドラマの俳優に会いに行くというものでした。海外旅行という挑戦を支えてくれたのは、韓国でできた友人たちの温かさです。
■西本理恵さん
「もう、要介護5の私でも行けるっていうことがわかって、初めて自分が障害者である、こんなに重度なんだっていう自分を受け入れることができたの、そのとき。過去の自分はもうどうでもよくて、今の自分の方が大事だから、また来たいって。」
「今の自分を大切にしたい。」その思いが、事業の立ち上げを後押ししました。
指の関節が破壊され、キーボードを打つことはできません。音声入力を駆使します。提案するのは、「介護」についてスマートフォンで情報を共有するサービス。自身が介護を受ける中で、人手不足など今の制度の課題を実感します。離れて暮らす「家族」が、遠隔で「介護」に参加できる仕組みが必要だと考えたのです。
■西本理恵さん
「早くから親の意思、どうしたいかっていうことをね、お互い家族で共有しながら、何となくでもちゃんと知っていると、自分たちでもう「これでいい」っていうふうに、見送り方ができると思うんですね。」
12月10日、広島市内でコンテストの最後のプレゼンテーションが行われました。応募した26人から選ばれた5人のファイナリストが、思いのたけを伝えます。そこには、西本さんの姿もありました。
■西本理恵さん(プレゼン)
「より多くの人を救うことができる解決策「ファミリーケアナビセミナー」を開発しました。家族は、どこからでも気軽に介護を管理できるよう、サポートするものです。」
そして迎えた結果発表。西本さんの提案は、見事優秀賞を受賞しました。大賞には、広島大学の片桐萌絵さんが選ばれました。内容は、地域の伝統芸能を持続させる仕組みです。
■西本理恵さん
「ほっとした~。もうとにかくよかった、出られただけで。介護準備を早くして、人間としての尊厳を、家族としても社会としても、ちゃんとつくっていけると伝えていきたいです。」
西本さんは間もなく、介護セミナーの開催に向けて動き出す予定です。超高齢化社会を、自分らしさで変える挑戦が続きます。
【テレビ派 2024年12月12日放送】
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