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ニトリ、ワークマン、モンベルが続々参入 軽くて安い布製ランドセルは“価格破壊”を起こすか?

ITmedia ビジネスオンライン 2024年4月21日 6時30分

 ランドセルの高額化が止まらない。

 日本鞄協会ランドセル工業会の調査によると、4月に小学生になった児童の平均購入金額は5万9138円だった。同団体が2018年に実施した調査では5万1300円。その後、5万2300円(19年)、5万3600円(20年)、5万5339円(21年)、5万6425円(22年)、5万8524円(23年)と伸び続けている。

 高額なランドセルを購入する層の割合も増えている。

 購入したランドセルの購入金額帯を見ると、18年は「4万~5万4999円」(31.6%)が最も多く、「5万5000~6万4999円」(21.7%)、「2万5000~3万9999円」(18.2%)と続く。「6万5000円以上」の割合は16.8%だった。

 24年になると、「6万5000円以上」(37.6%)が最も多く、「5万5000~6万4999円」(22.5%)、「4万~5万4999円」(17.4%)と続く。

 25年度に入学する児童のためのランドセル選びが本格化しているが、有名な工房系ランドセルメーカーの商品ラインアップを見ると、価格帯は6万~20万円程度となっている。

 高額化の理由はいくつか考えられる。

 子どもの好みが多様化していることを受け、バリエーションが豊富になっている。かつては「男の子は黒」「女の子は赤」といったイメージが強かったが、性別に関係なく好きな色を選ぶケースも目立ってきた。新しい付加価値をアピールする商品も次々と登場している。さらに、ランドセル選びが親子3世代の思い出をつくる行事になっている点も、高額化と無関係ではない。

●ニトリの布製ランドセルは売れ行き好調

 こうした状況で、価格が2万円以下という布製ランドセルを発売する大手チェーンの動きが目立ってきた。

 ニトリは23年2月下旬から自社の通販サイトで軽さを強調したランドセルの販売を開始している。25年入学モデルの店頭販売は6月中旬を予定しており、価格は1万9990円だ。「超軽量ランドセルNシールドF」は重さが約840グラムで、「はっ水加工記事」「PC・タブレット/インナーポケット」といった子どもにとっての快適さを追求した12個の機能を備えている。

 同社の公式Webサイトでは、新入学以外の子どもも購入していることをアピールしている。具体的には「1年生の時と比べて身長が伸びたので、ランドセルが窮屈で背負いにくい」「通学時間が長いので軽いものがいい」「成長するにつれて、派手なデザインが恥ずかしくなる」「荷物が重くなるので肩や腰が痛くなる前にもっと軽いものを使いたい」といったシーンを挙げている。

 ニトリの広報担当者によると、23年の販売実績は同社のランドセル単品販売数量ベスト5以内に入っており非常に好調だったという。

●モンベルの通学用バックパックを自治体が配布

 アウトドスポーツ用品を手掛けるモンベル(大阪市)が、21年に富山県立山町と開発した通学用バックパック「わんパック」は、同社のECサイトにおいて1万4850円で販売している(わんパック 14の場合、以下同)。

 背面と底面はしっかりしたパネル入りで自立しており、型崩れを防ぐようになっている。水濡れに強い素材を採用しているのが特徴で、レインカバーと反射テープも備えている。同社は「これまで登山用品などの開発で培ってきた高機能素材や技術力を結集して完成させた」としている。

 発売当初は品薄状態が続いていたが、現在は全てのカラーで「在庫あり」という状態だ(4月19日時点)。重量は930グラムとなっている。

 当初は立山町内の小学校に入学する全児童に立山町からプレゼントするためのものだった。同町の舟橋貴之町長は「ランドセルは高額で家庭の負担にもなるため、機能的で軽く、経済的にも負担にならないものを町から子どもたちに贈りたいと考えた」とその背景を発表会で語っている。

 岡山県備前市や長崎県島原市では、行政が新小学生にわんパックを配布している。子育て家庭の負担を軽くするのが狙いだという。

 21年6月に沖縄県が発表した未就学児調査によると、「学用品やランドセルの購入費用が不足しそう」と回答した保護者の割合は全体の21.8%だった。

 物価高で生活が苦しいと感じる人が増える中、より安価なランドセルの需要は高まる可能性がある。

●ワークマンも参入

 ワークマンは6月、8800円の軽量ランドセル「ZSG03 スチューデントデイパック」を発売する。同社としてランドセルに参入するのは初めてのことだ。

 販売するランドセルはナイロン製で、これまで職人向けに生産してきたバッグのノウハウを活用している。防弾チョッキにも使用されるほど高い強度と耐久力がある「バリスティックナイロン」という生地を採用しているのも特徴だ。背面部分内部にはアルミ製の細いプレートを入れているが、同社の登山用リュックと同じものだという。

 このバッグを開発した担当者は、具体的な購入シーンとして「子どもが成長してサイズが合わなくなったから買い換えよう」「高学年になった子どもが、別のバッグで通学したいと言い出した」「通常のランドセルは重たいので、1年生になる子どもに背負わせるのはかわいそう」「せっかく高いランドセルを買っても、子どもが汚したり壊したりしたらどうしよう」を挙げる(出所:ワークマンが8800円「ランドセル」発売! 防弾チョッキと同じ生地 ワークマンらしさはどこにある?)。

●3サイズ展開する企業も

 水泳用品などを手掛けるフットマーク(東京都墨田区)は、布製ランドセルの「ラクサックジュニア プラス」を3サイズ展開している。身長140センチ以上向けの「145サイズ」、120~140センチ前後向けの「125サイズ」、95~120センチ前後向けの「100サイズ」だ。

 100サイズは2月に新たに加えた。より小柄な子ども向けの商品をそろえた理由について、同社の開発担当者は「小柄な子ども向けのサイズがほしいという要望が消費者から寄せられた」と説明する。

 ラクサックジュニアシリーズは、「軽く感じる」「小学生の成長に合わせて気軽に買い替える」といったコンセプトをアピール。一般的なランドセルの重さは1100~1300グラムだが、ラクサックジュニア プラスのシリーズは850~890グラムとしている。

 ラクサックジュニア プラスの価格は、自社ECサイトで1万6500~1万7600円。もう一つのシリーズであるラクサックジュニアについては、9900~1万1000円だ。

●軽いランドセルが登場する背景

 各社がこうした軽さをアピールするランドセルを発売する背景には、「ランドセルが重たい問題」がある。

 教科書協会の資料によると、小学校における教科書のページ数は年々増えている。05年度には全教科(1~6年合計、各社平均)で4857ページだったが、20年度には8520ページとなった。道徳・英語の授業が加わったことなどが影響しているという。

 フットマークが通学にランドセルを使用している小学1~3年生とその親1200組を対象に実施した調査によれば、ランドセルの平均的な重さは4.13キロで、全体の91.4%が「ランドセルが重い」と回答している。「ICT教育の推進により電子端末の支給が始まった」「熱中症予防のために水筒を持たせるようになった」「自宅学習の重視」などが背景にあると考えられる。

 このように、各社が販売をする布製ランドセルには、子どもの負担を減らすという目的もある。

 軽くて安い布製ランドセルが普及し始めると、ランドセル業界に価格破壊が起きるかもしれない。

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