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NTTデータは「AIエージェント活用の“次のステージ”」をどう見るか? AI事業のキーパーソンに聞く

ITmedia エンタープライズ 2025年1月20日 18時34分

 企業が「AIエージェント」をうまく活用していくにはどうすればよいのか。筆者は活用できるかどうかの分かれ目となりそうなマネジメントの問題を「AIマネジメント」として提起し、その現状や課題、対策について、国内ITサービスベンダー大手のAI事業のキーパーソンに取材した。

 4社取材企画の1回目となる本稿では、NTTデータグループの本橋賢二氏(グローバルイノベーション本部 Generative AI推進室 室長)に話を聞いた。

 同氏が説くAIマネジメント対策はどのようなものか。ユーザー企業の現時点でのAIエージェントの利用状況や、今後発生しそうな課題、単なる業務プロセス効率化にとどまらない、AIエージェント活用の「次のステージ」についても紹介する。

●NTTデータはどう見る? 「AIエージェントの可能性と課題」

 2024年後半から注目を集めるAIエージェントだが、企業での利用状況はどうなのか。本橋氏は次のように述べた。

 「ここにきてAIエージェントのサービスが相次いで登場しているので、まずは試しに使ってみようという企業が出ている段階だ。当社のお客さまでも先進的なところは実証実験を終えて本格的な利用に向けて動き出している。2025年は多くの企業がAIエージェントを順次本格的に活用することになるだろう」

 本橋氏の話からすると、AIマネジメントの問題はこれから発生するということだろう。現状を踏まえ、AIエージェントの可能性と課題について同氏はどのように見ているのか。まず、可能性については次のような見方を示した。

 「これまでの生成AIはタスク処理を効率化するものだったが、AIエージェントはそこから進展して業務プロセスを効率化、さらに自動化するものなので、コスト削減や生産性向上といった業務改善効果が格段に期待できる。さらに各業務のAIエージェント同士が連携して自律的に作業を実施するようになると、もっと広い範囲の業務プロセスの効率化が可能となり、ワーカー(人間)を強力にサポートしてくれる存在になり得る。こうなると、労働人口減少という日本の深刻な社会問題の解決にも寄与する可能性も大きくなるだろう」(図1)

 一方、課題については、「まずはハルシネーション(事実と異なる情報の生成)や著作権侵害、セキュリティといった生成AIそのものへの懸念がある。そしてそれにも関連するが、業務の異なるAIエージェントに対してそれぞれに適切なデータをどのように収集して管理し活用するのか。また、それぞれのAIエージェントを適切に運用できるのか。そもそもAIエージェントを構築する方法論がまだ確立されていないので、現状では利用に向けて手探りのところも多い」と指摘した。

 確かに、現状で提供されているAIエージェントのサービスは、SaaS(Software as a Service)によって個別の業務アプリケーションに適用されているものが多い。今後、それらを合わせた業務全体の効率化、そして自動化を図るにはどうすればよいのか。それこそが、AIマネジメント対策だ。

●NTTデータが説くAIマネジメント対策

 AIマネジメント対策について、本橋氏は次のように語った。

 「まず挙げたいのは、どの業務にどのAIエージェントを採用して効率化を図り、それをどう広げるかを、それぞれの企業で優先順位の高いユースケースから進める計画を明確に示すことが重要だ。AIエージェントの適用は手段であって、目的ではない。目的は何なのか。業務改善やワーカーへの貢献度を明示する必要がある」

 その上で、こう続けた。

 「生成AIは取りあえず自分たちで使ってみて、各自の業務タスクにおいて効果的ならば継続して利用すればよい。しかし、AIエージェントは業務プロセスが対象となることから、課題として挙げた生成AIそのものへの懸念をはじめ、データの扱いや、システムとしての構築や運用といった取り組みが必要なので、それらに対応できるエンジニアを配置しなければならない。その役割を担うIT部門としては、どのITサービスベンダーをパートナーに選ぶかも重要なポイントになるだろう」

 企業におけるAIマネジメント対策を大別すると、自社で全てを行うか、マルチベンダーのAIエージェントを取り扱えるITサービスベンダーをパートナーにするかの二択になる。NTTデータはそのITサービスベンダー大手のうちの1社だ。本橋氏は自社をこうアピールした。

 「AIエージェントのサービスが相次いで登場している。きちんと効果を出すために何をどのように採用すればよいのかと悩まれている企業のご要望に、当社はしっかりとお応えできると自負している。なぜならば、ITサービスベンダーとしてこれまでさまざまなお客さまの業種や業務ノウハウを蓄積している上、クラウドベンダーや業務アプリケーションベンダーとも幅広く連携していることから、どんなAIエージェントの活用形態にも対応できるからだ」

 マルチベンダービジネスとともに、NTTデータでは2024年10月、オフィスワーカーの生産性向上や付加価値業務へのシフトを実現するための生成AIコンセプト「SmartAgent」に基づいたAIエージェントサービスを発表し、展開している(図2)。

 最後に、AIマネジメント対策として、改めて訴求したい点を聞いたところ、本橋氏は次のように答えた。

 「AIエージェントの活用について、これまで業務プロセスの効率化、さらには自動化を目的として話してきた。加えて、当社が今多くのお客さまから相談を受けているのが、AIエージェントを使って新たなビジネスを創り出していけないかということだ。それには、最先端の生成AIを駆使することも必要になってくるだろう。そうしたクリエイティブな取り組みが、AIエージェント活用の次のステージになると考えている」

 クリエイティブな領域へ――。それこそ、人間とAIエージェントがコラボレートする醍醐味(だいごみ)かもしれない。

○著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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