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着用努力義務化から1年 安全な「自転車ヘルメット」の選び方を紹介 CE規格取得をうたうモデルには落とし穴も

Fav-Log by ITmedia 2024年7月11日 6時10分

 2023年4月1日と7月1日の道路交通法の一部改正により、すべての自転車利用者と特定原付(特定小型原動機付自転車)の利用者においてヘルメットの着用が努力義務となりました。

 乗車用ヘルメットについてはSGマークなどの安全性を示すマークが付いたものを使うように警察庁から注意喚起されていますが、ネットショップで見かける商品には一見、安全規格を満たしているようにうたいつつも、実は乗車用ヘルメットには向いていないモデルもよく見かけます。

 ここでは、ちゃんと使える「自転車ヘルメット」の安全規格について改めておさらいしていこうと思います。

●国内の自転車ヘルメットの安全規格について

 自転車ヘルメットの安全規格について国内で一般的なのは製品安全協会の「SG」、日本自転車競技連盟の「JCF」でしょう。

 認証する団体名のイメージ通り、SGマークは一般向けの商品から競技志向の商品も含め幅広い製品に付与されており、JCFマークはより競技志向の強いブランドや製品に付与されているイメージです。

 街の自転車屋さんに置いてあるものはほとんどがSGマークの商品で、ロードバイクなどをメインに取り扱うプロショップになるとJCFマークを付けた商品が増えてくる印象です。

 この国内の2つの安全規格を取得した商品については、どれを選んでも問題になることは基本的に無いでしょう。

●国外の自転車ヘルメットの安全規格について

 国外の団体が認証する安全規格にも目を向けると一気に種類が増えてきます。代表的なものだけでも欧州標準化委員会の「CE EN1078」、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会の「CPSC(1203)」、米国試験材料協会の「ASTM」の3つがあります。

 この中で要注意なのが、CEマークの付いたヘルメットです。というのもCEマークには自転車ヘルメットに付与されるCE EN1078以外にも、工業用ヘルメットに付与される「CE EN812」という規格もあり、このEN812のヘルメットでは自転車用の安全基準を満たさないためです。

 しかしながら、Amazonなどネットショップで売っている商品には自転車ヘルメットとして売りつつ、CE EN812の規格しか得ていないものが散見されます。

 次の項目では工業用ヘルメットを自転車乗車時に被ることの問題点を紹介していきます。

●工業用ヘルメット向け規格「CE EN812」は自転車には向かない

 その問題点というのは、工業用ヘルメットでは自転車乗車時に起こりうる事故に対して耐衝撃性や保護性能がまったく足りていないことです。

 SGマークの認定基準の制定や改正にも関わる日本ヘルメット工業会の発行物『自転車用ヘルメットに関する安全基準を満たす製品について』でも“「EN812(軽作業帽)」は耐衝撃性が低く、障害物に頭をぶつけるなど、静的な物体から着用者を保護するためにのみの性能に限定されます”と書かれています。

 実際にCE EN812のみを取得したヘルメットでは、プラスチック製のインナーが入っているだけで、自転車ヘルメットに見られる発泡スチロールなどでできた衝撃緩和用の衝撃吸収ライナーはありません。これでは乗車する人の体重と自転車の車重、速度分のエネルギーが1点に集中する可能性のある自転車事故においてはほとんど役に立たないでしょう。

●こんなヘルメットには要注意。認証取得が疑わしい商品も

 これらの知識をもとに実際に某ネットショップの「自転車ヘルメットの売れ筋ランキング」TOP20を見てみると、いずれの規格も取得していない商品が1つ、CE EN812しか取得していない商品が2つ見つかりました。

 実は、こういった堂々とCE EN812しか取得していないことを書いている商品はまだマシで、本当に恐ろしいのは下記の画像のような日本ヘルメット工業会の発行物で“自転車用ヘルメット基準を満たさない製品の例”として挙げられているものとまったく同じ構造であるにも関わらず、CE EN1078、CPSC認証取得品などとうたっている商品が2つもランキングに入っていたことです。

 上記の画像のような構造では自転車用の安全基準を満たすことはほぼ不可能なので、CE EN1078取得、CPSC取得といった文言に惑わされずに判断する必要があります。

 本来であれば販売サイト側で弾くか規格への適合について正確に表示すべきなのでしょうが、販売店が無数にあり、それぞれが商品ページを作るシステムでは限界があるということなのでしょう。現状では消費者側が判断力を身につける必要があります。

●自転車ヘルメットを選ぶ際の確認事項をおさらい

 まず初めに確認するのは、信頼できる安全規格を取得しているかです。国内で言えばSGとJCF、海外ならCE EN1078、CPSC、ASTMのマークを取得しているか確認しましょう。

 先ほどは挙げませんでしたが、ドイツ製品安全法による「GS」、イタリアのヘルメットメーカー「KASK」独自の安全基準「WG11」も信頼性の高い規格です。これらのマークを確実に取得したヘルメットであれば安心して使用できます。

 しかし、認証取得をうたいつつも、本当か疑わしい商品もあります。前の項で紹介したようなプラスチックインナーのみで発泡スチロールなどの衝撃吸収ライナーを備えていない商品が、自転車ヘルメット向けの安全規格を取得するのは難しいです。うたい文句だけに惑わされず構造もしっかり確認してから購入するようにしましょう。

 自転車ヘルメットは、いざという時に大きなケガを防いだり命を守ったりしてくれる重要な装備。この記事の内容が安全な自転車ヘルメット選びに少しでも役に立てば幸いです。

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