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サービス開始から10年のmineo 通信品質改善が純増に貢献、次の戦略は“ライトファン”の獲得

ITmedia Mobile 2024年6月5日 19時56分

 オプテージのMVNOサービス「mineo」が2024年6月3日に10周年を迎えた。コンシューマ事業推進本部でモバイル事業戦略部長を務める松田守弘氏や、モバイル事業戦略部の田村慎吾氏らが「mineo渋谷」に姿を見せ、これまでに重視してきたことや、今後の事業戦略を説明した。記事内の価格は特記事項を除き全て税込みとする。

●6月3日に10周年を迎えたmineo、通信品質改善が契約数の純増に寄与

 松田氏はまず10周年を迎えたmineoの回線数について説明した。mineoのサービスはいまから10年前の2014年6月3日に開始。当時の運営会社は関西電力系のケイ・オプティコムで、MVNOとして初めてKDDIの通信網とレイヤー2接続したサービスとして、下り最大150Mbpsのau 4G LTEを利用した。

 開始当初の料金はデータ通信のみの「シングルタイプ」で月額980円(税別)で、090番などの携帯電話番号も使える「デュアルタイプ」で月額1590円(税別)だった。その後、NTTドコモとソフトバンクの回線も選べるようになり、マルチキャリア対応を前面に打ち出した頃もあった。2024年6月現在は毎月使用可能なデータ容量で選ぶ「マイピタ」(月額880円から)、月曜日~金曜日の12時~13時の通信速度が制限される代わりに、データ使い放題になる「マイそく」(月額250円から)を提供し、ユニークなサービスを売りにする。

 そんなmineoの回線契約数について、松田氏は2023年12月末時点で126万回線を突破したと1月30日の会見で説明していたが、2024年に130万回線を突破したことに加え、「近年では法人のユーザーにも広く利用されるようになった」(松田氏)ことを明らかにした。その上で、「長く愛されるmineo」になり、「ずっとmineoがいい」と思ってもらえるようなサービスを目指し、10周年を迎えた今だからこそ「原点に立ち返り、地味でも、長く愛されるアップデートを掲げて取り組んでいきたい」と抱負を述べた。

 mineoは、2024年に通信品質の改善と、長期利用特典の見直しに力を入れている。田村氏は「1~3月の利用者純増数が前年同期比で約2倍」となり、テレビCMやプロモーションの強化だけでなく、「モバイル事業におけるベースの価値」(田村氏)である通信品質の改善が寄与していることを説明する。ユーザーがmineoを解約する際に行われたアンケートによれば、2024年1月~3月における通信速度の不満が2023年1月~3月時点と比べて最大で5%減少し、通信品質改善の効果が出ていることが分かった。田村氏はこのデータを踏まえ、「2022年月間平均解約率が1.7%弱から1.6%強に減った」とし、「向上させた水準をしっかり維持していきたい」と述べた。

 利用者特典制度の「ファン∞とく」では、コミュニティーサイト「マイネ王」での活動状況に応じて特典を付与する形だったが、2月28日からは活動状況ではなく契約年数に応じて特典を付与している。田村氏によれば、オプションを試せる「10分かけ放題」や端末割引などが全体のうちの6割ほどを占めている。さらに、10分かけ放題は同じオプションの利用のうちの約7割を占め、端末割引に関するオプションは3000円引き/7000円引きが約8割を占めており、端末割引は高額なものの方が利用されていることが分かる。田村氏は「今後の利用状況を踏まえて、ラインラップの見直しを検討していく」とした。

●コアなファン獲得のmineo、今後はライトユーザーの獲得にも注力

 mineoは、これまでにユニークな機能を打ち出し、コアなファンを獲得してきた経緯がある。その1つが「mineo米」をユーザーに還元する取り組みで、mineoユーザーとオプテージ社員が育てた米を使って、mineoのイメージカラーである緑色のグリーンカレーを考案している。モバイル事業運営チームの冲中秀伸氏は2024年6月現在、「販売は予定していない」としたが、オフ会やコミュティーサイト「マイネ王」でプレゼントしている。

 また、余ったデータ通信容量(パケット)を全国のユーザーで分け合う機能「フリータンク」は、mineoユーザーがデータをタンクに入れると、mineo渋谷のタンク(ディスプレイ)にもリアルタイムに反映され、日々共有できるデータタンクであることが分かりやすく可視化されている。

 災害が発生したときに、テレビ局によるYouTubeライブなどの動画で災害情報を収集する際、データ通信を多く使う。そんなときのためにもmineoのフリータンクでは、「10GBまでパケットを引き出せるようにしている」(冲中氏)そうだ。「2017年に始まり、これまでにのべ68万人を対象とし、累計で39回開放した」(同氏)

 mineoは1月1日16時10分の能登半島地震を受けて災害支援タンクを開放した。オプテージは防災の日である2023年9月1日~3日に、災害時にmineoユーザーが寄付したパケットを解放する「災害支援タンク」を提供しており、ユニークなサービスの有用性もしっかりと証明している。

 コミュニティーサイト「マイネ王」は、ユーザー同士がオンラインでコミュニケーションを取れる場、投稿された困り感に対して詳しいユーザーがアドバイスする場としても活用されている。事務局による投稿に付いた「ポジティブなコメント、ハッピーなコメントをカウントしている」(同氏)とのことで、「これらが100万に達成すると、桜の(木の下で)食事をする取り組み」を実施していたが、「桜を植えさせてもらえる公園を探すのが大変」だったという。2018年からは地域活性化も意識し、表題を「mineo green project」に改め、石川県七尾市で2019年に桜を植樹したそうだ。

 mineoユーザーによる「スマホ相談会」では、mineoのサポートアンバサダーと、スマホ慣れしていない人と、mineoに対して困り感を抱く人が集い、対面で相談し合った。

 こうした取り組みから分かることは、mineoがいかにファンを重視しているかだ。加えて、2016年1月25日に打ち出したブランド・ステートメントである「Fun with Fans!」に基づき、メガキャリアでは実現できなかった、あるいは実現しづらい新たな試みに挑戦し続け、mineoとユーザーのコミュニケーションの中で、利便性があり新たな発見につながるサービスを創っている。実際、前述のマイネ王に寄せられた意見は、サービスに反映されることがある。

 冲中氏いわく、mineoのこうした地道な取り組みは「差別化の源泉」につながっており、「コミュニティーサイトがあれば、直接フィードバックを投稿してもらえるし、オフ会でユーザーとコミュニケーションをする取り組みは10年弱続けている」と手応えを語る。サービスの中には、ユーザーの声から生まれたものもあり、それが結果として、「他社にはない、mineo独自のサービス」(同氏)となっているそうだ。

 収益性の改善にもつながっているとのことで、コアファンの人数は4000人程度、ライトファンは20万人程度となっている。このうち、コアファンは「解約率が低く、紹介率も高い」という。mineoにとってはコアファンが増える方が収益性の改善につながるが、冲中氏は「実際、コアファンを増やすのは難しい」と述べる。ライトファンも「解約率は低く、紹介率も十分に高い」ことから、今後は戦略の軸足を「コアファンとライトファンの獲得」に移す。

 冲中氏は「10周年という区切りがあるので、皆さんに還元して感謝を伝えるイベントを、11月に大阪で1000人規模のイベントを実施する」としたが、詳細は「企画中だ」として明かさなかった。「ユーザーとの共創をかかげたmineoらしい取り組み」も継続する考えで、「飲食店をやっているユーザーが、キッチンカーで出店するといった取り組みができたらいい」と構想の一例を挙げた。

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