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KDDI、都心で5Gのフルパワー発揮へ 他キャリアにない強みは?

ITmedia Mobile 2024年6月14日 21時35分

 KDDIは14日、5GのSub6帯エリアを拡大する計画を実施し、2024年5月末までにSub6エリアを関東地方で2.8倍、全国で1.5倍に拡大したと発表した。

 Sub6エリアでは300Mbps超の通信が可能で、実測値として従来の4G LTE転用の5Gエリアと比較して下り通信速度が約3倍に向上したとする。

 Sub6帯は5Gの開始に伴って割り当てられた新周波数帯で、KDDIは3.7GHz帯と4.0GHz帯を保有している。4Gの既存周波数帯を転用した5Gと対比して、「真の5G」と呼称されることもある。

●高速化の鍵は「衛星干渉」の改善

 KDDIが今回行ったSub6帯5Gの高速化には、5Gのポテンシャルを引き出す可能性がある。

 KDDIが割り当てられたSub6周波数帯には、本来の性能を100%発揮できない制約があった。その要因は「衛星干渉」だ。人工衛星の受信帯域として使われているため、人工衛星の地球局の周辺では衛星のへの影響が出ないように、出力を落として制御を行っていた。

 衛星地上局は東名阪地域に多く立地していたため、需要が多い都市部で出力を落とした運用をしていた。局によってはアンテナの角度を本来よりも下向きに設定していることもあった。

 この制約は衛星地上局の移転が進んで、2023年3月末になくなった。そこでKDDIは3月から5月にかけて、出力を落としていた基地局の性能最大化を進めた。

 出力向上の結果、5G Sub6帯のカバーエリアは約2倍に拡大。アンテナ角度を上向きにする制御によって、さらに2倍に向上した。カバーエリアとしては100mメッシュ(100m四方に区切った面積)で調整前は4.3万メッシュだったところ、アンテナ角度の最適化後は12.2万メッシュまで広がったとしている。

 さらに、レイテンシ(応答速度)の改善も見込めるという。例えば対戦ゲームでは30msecが確保できれば安定したプレイができ、20msecaあれば快適という。KDDIはレイテンシでソフトバンクに遅れを取っていたが、出力向上によりレイテンシ20msec以内のエリアが拡大し、5Gエリアのうち75%で20msec以内を実現できたとしている。

●基地局の出力アップ40Mbps→300Mbpsに

 14日の発表会と合わせて、東京・芝公園で5Gの通信カバレッジを改善するデモンストレーションを行った。ネットワーク運用センターでコマンドを打ち込むと、出力向上とアンテナ角度の調整が行われるというものだ。スピードテストでの計測では、実施前は下り40Mbps前後だったが、実施後は300~400Mbpsに速度が改善した。実行速度は、従来の約3倍の向上が見込める。これまで100Mbps以下だったエリアで、実測値で300Mbpsの通信速度が期待できるという。これは一度に大容量の通信を行う場合に効果を発揮する。例えば動画を視聴し始める時に待ち時間が短くなるといった実用上のメリットがある。

●設置最多のSub6基地局が強みに

 KDDIの前田大輔技術企画本部長は「200MHzを保有していることがいよいよ強みとなってくると話す。

 5G開始時のSub6周波数割り当てにおいてKDDIとドコモは200MHz、ソフトバンクと楽天モバイルは100MHzの割り当てを受けている。これまで衛星干渉の影響でフルに利用できなかったSub6帯が本格的に活用できるようになったことで、高速化や容量拡大の点で有利になるという。

 また、基地局数の多さも強みとなる。KDDIが運用する基地局数は2024年6月現在で9.4万局を超える。2023年末の7.2万局から、半年で2.2万局を増やしている。

 このうちSub6の基地局数は3.9万局で、他キャリアと比較しても運用数が多い。この置局の多さが、今後のネットワーク品質改善の上で強みとなってくるという。

 KDDIの佐藤拓郎技術企画部長は「基地局数が多い場合は局あたりの出力を抑えないと衛星事業者への干渉条件を超えてしまうため、これまで干渉制御を強めにかけてきた。衛星干渉の緩和によるエリア拡大効果は、KDDIが一番受けることになる」とコメントした。

 さらに、KDDIが周波数割り当てを受けている3.7GHz帯と4.0GHz帯が近い範囲にあることも整備上有利に働くという。また、「Massive MIMO」という多くのアンテナを使って、同時にたくさんのユーザーに電波を送るアンテナ技術の活用もしやすくなる。Massive MIMOの活用により、特に混雑している駅前などのエリアでの通信速度改善も期待できる。Sub6の2波を同時に制御するサムスン電子製のMMU(Massive MIMO UNIT)を日本で初めて導入し、2024年度中に運用開始する方針を示した。

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