Infoseek 楽天

“ミッドレンジの王者”OPPOを猛追するモトローラ 「OPPO Reno11 A」vs「moto g64 5G」に注目

ITmedia Mobile 2024年6月22日 6時5分

 オウガ・ジャパンは、同社の“顔”ともいえるReno Aシリーズの最新モデル「OPPO Reno11 A」を発表した。6月27日に発売され、大手キャリアではソフトバンクのY!mobileと、楽天モバイルが取り扱う。IIJmioを筆頭に、MVNO各社でもオープンマーケット版が販売される。先代モデルはスペックがほぼ据え置きだったが、Reno11 Aはパフォーマンスを向上させ、カメラや急速充電なども全面的に刷新しているのが特徴だ。

 Reno Aシリーズは、オープンマーケットのAndroidスマホとして販売台数1位をキープし続けている。シリーズ全体での累計出荷台数は210万台を突破。Reno11 Aの登場で、この数字はさらに拡大する見込みだ。一方で、そんなOPPOの座を狙うメーカーも台頭し始めている。Reno11 Aと同日に「moto g64 5G」を発表した、モトローラだ。日本仕様を取り入れ、コストパフォーマンスに優れたモデルという点で、2機種には共通点も多い。そんな両社の戦略を比較していきたい。

●カメラや重電速度などの性能を大きく上げつつ価格は据え置き

 2023年に発売された「Reno9 A」は、2022年モデルの「Reno7 A」を焼き直した1台だった。いわばマイナーチェンジといった位置付けで、プロセッサやカメラなどの性能は据え置きになっていた。これに対し、Reno11 Aはフルモデルチェンジといえるほど、それぞれの機能が進化している。ミッドレンジモデルであることに変わりはないが、パフォーマンスや充電速度、ディスプレイ、カメラなど、多くの機能が底上げされた。

 プロセッサはMediaTekの「Dimensity 7050」。Qualcommの「Snapdragon 695 5G」を搭載していたReno7 AやReno9 Aに比べ、3割近くトータルでの処理能力は上がっている。よりパフォーマンスを求めるアプリに対応しやすくなったという点で、プロセッサを刷新した判断は正解だ。Reno 9Aではプロセッサが変わっていなかった点に不満の声も聞こえてきたが、OPPOとして、その意見に向き合ったといえる。

 実際、単にベンチマークソフトのスコアが上がっただけでなく、Reno9 Aまでは非対応だった4K動画の撮影に対応するなど、パフォーマンスを向上させたメリットもしっかり出ている。また、OPPOの急速充電技術「SUPERVOOCフラッシュチャージ」は、最大67Wまで高速化。約48分で100%まで充電することができる。USB PDにも対応しているため、専用充電器がなくても最大55Wの急速充電が可能だ。

 バッテリーの容量自体も、Reno9 Aの4500mAhから500mAh上がり、5000mAhに増加した。カメラはメインの広角カメラが6400万画素に上がった他、インカメラも3200万画素に。ディスプレイも0.3型大型化しているが、ベゼルを細くしたことで横幅は1mmアップにとどめている。さらにリフレッシュレートが90Hzから120Hzに上がり、スマホの基礎体力ともいえるスペックは軒並み向上している。

 にもかかわらず、価格はほぼ据え置きだ。オープンマーケット版の希望小売価格は4万8800円(税込み、以下同)。Reno9 Aが4万6800円だったため、2000円の差しかない。1年前と比べ、円安が進行している他、物価も上がっている。機能が進化したことまで加味すれば、むしろコストパフォーマンスはReno9 A以上によくなったといってもいいだろう。Y!mobileや楽天モバイルに加え、8社のMVNOが取り扱いを表明しているのは、そのためだ。

●グローバルモデルとの共通化を進めたReno11 A 防水・防塵はグレードダウンに

 では、なぜReno11 Aは5万円を下回る価格を打ち出せたのか。オウガ・ジャパンのプロダクト部 プランニングマネージャーの坂井公祐氏は「グローバルの仕様に合わせていくことで、スケールメリットを生かした」と語る。具体的には、防水・防塵(じん)の仕様がIPX8/IP6XからIPX5/IPX6にダウンしている。おサイフケータイには引き続き対応しているものの、その他の部分はグローバル版に準拠することでコストを抑えたというわけだ。

 プロセッサがQualcommからMediaTekに変更されたのも、こうした戦略を踏まえたものだという。坂井氏は、「トータルで価格をどう抑えるか。性能を下げるわけにはいかないので、この価格帯で優れた性能を持っているプロセッサを選択した」と話す。

 実は海外では、Reno11 Aに先立ち、「Reno11 F 5G」というモデルが2月に発表されている。海外モデルのため、おサイフケータイには非対応だが、プロセッサや急速充電、ディスプレイ、カメラなどの仕様は同じ。一部カラーや背面処理も共通している。兄弟機というより“双子”に近い。防水・防塵のスペックがグレードダウンしているのも、グローバルモデルとの共通化が進んだためだ。

 もともと日本専用モデルとして開発され、いわゆるベースモデルがなかったReno Aシリーズだが、Reno11 Aでは、その立ち位置がやや変わっていることがうかがえる。背面が光を受けて輝くOPPO Glowは、ダークグリーンのみ。コーラルパープルに日本市場では珍しい派手なテクスチャーが採用されているのも、グローバルモデルとの共通化が進んだためだろう。

 コストパフォーマンスの高さや日本仕様を盛り込んだことで人気を博しているOPPOのReno Aシリーズだが、ここに「待った」をかけるメーカーも徐々に増えている。発表を同日にぶつけてきたのが、レノボ傘下のモトローラだ。同社は、moto g64 5Gを6月20日に発表。Y!mobile向けには、メモリ容量を減らし、コストを抑えたmoto g64y 5Gを用意した。

●OPPOに対抗するモトローラ、ポイントは価格と基本性能

 moto g64 5Gは日本仕様に対応したミッドレンジモデルで、2023年に発売された「moto g53j 5G」の後継機。型番から日本を意味する「j」の文字はなくなったものの、引き続きおサイフケータイに対応する。防塵には対応していないが、IP52の防滴には対応。moto g53j 5GではHD+だったディスプレイは解像度が上がり、フルHD+と精細になっている。リフレッシュレートも120Hzだ。

 同モデルも、Reno11 Aと同様、プロセッサをQualcommのSnapdragonからMediaTekのDimensityに変更。「Dimensity 7025」を搭載することで、パフォーマンスの底上げを図っている。また、急速充電は18Wから30Wに高速化。カメラの画素数などはそのままだが、光学式手ブレ補正に対応し、ブレをより軽減できるようになった。インカメラの画素数は800万画素から1600万画素に上がっている。

 パフォーマンスに関してはReno11 Aに近いmoto g64 5Gだが、オープンマーケット版の価格は、同社オンラインストアで3万4800円。先代のmoto g53j 5Gと同額で、4万8800円のReno11 Aを大きく下回ってきた。超広角カメラを搭載していなかったり、防塵に非対応だったりと、仕様面ではReno11 Aに及んでいない部分はあるが、コストパフォーマンスは抜群に高い。

 日本市場に特化して誕生した初代Reno Aは、発売時の価格が3万5800円だったが、世代を経るに従い徐々に価格が上がり、今では5万円に迫っている。ラインアップ全体を見ると、Reno11 Aの下に2万9800円でおサイフケータイにも対応した「OPPO A79 5G」が存在するが、プロセッサは「Dimensity 6020」でパフォーマンスではmoto g64に見劣りする。A79 5GとReno11 Aの間を、モトローラが埋めてきた格好だ。

 オープンマーケットだけでなく、2機種ともY!mobileが販売するため、OPPOとモトローラの競争は激化する可能性が高い。一方で、先に挙げたようにReno11 Aは楽天モバイルも販売する他、幅広いMVNOが取り扱う。これに対し、moto g64 5GはMVNOの販路をIIJmioに限定しており、すみ分けが図られている。ミッドレンジのシェア拡大を狙うモトローラだが、キャリアやMVNOの取り扱いがOPPOに比べて少ないのは課題といえそうだ。

この記事の関連ニュース