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10万円前後の「AQUOS R9」は“ハイエンドスマホ”として満足できる? シャープが「自信作」と断言するワケ

ITmedia Mobile 2024年7月4日 18時3分

 シャープの最新スマートフォン「AQUOS R9」が、7月12日にNTTドコモとソフトバンクから発売される。

 昨今のハイエンドスマートフォンは15万円~20万円が相場だが、AQUOS R9はドコモ版が11万7040円(税込み、以下同)、ソフトバンク版が12万4560円(いずれもオンラインショップ価格)。シャープが販売するオープンマーケット向けモデルの発売日は未定だが、こちらは当初予告していた通り、10万円前後になるという。

 この時期に、ハイエンドスマートフォンを10万円強で購入できるのはお得感が強いといえるが、一方で気になるのが、AQUOS R9が採用しているプロセッサだ。AQUOS R9はQualcommのSnapdragon 7+ Gen 3を採用しており、競合メーカーがフラグシップ機で採用しているSnapdragon 8 Gen 3ではない。ちなみにシャープも2023年発売の「AQUOS R8 pro」ではSnapdragon 8 Gen 2を採用していたが、今期はproの投入を見送っている。

 Snapdragonの7シリーズはミッドレンジ向けのチップというイメージがあり、パフォーマンスで見劣りするのではないかと懸念している人もいるだろう。そんな中、シャープが7月2日に開催した説明会で、クアルコムジャパンの中山泰方副社長がゲスト登壇し、Snapdragon 7+ Gen 3の性能について説明した。

 Snapdragon 7+ Gen 3では、「AI性能の向上」「カメラ性能の向上」「消費電力の改善」の3点を目標に開発してきたという。その結果、Gen 2と比較して、CPUで15%、GPUで45%改善しているという。性能アップしたチップの代表的な使い方として、中山氏は同時翻訳機能を挙げる。「よりスムーズで、自然なコミュニケーションをサポートする」と同氏。また、Snapdragon Low Light Visionにより、暗所でも動画や静止画をより自然かつ鮮明に撮影できるようになることも加えた。

 AQUOS R9では同時翻訳機能は備えていないが、生成AIを活用した機能として、留守番電話の要約機能を用意している。これは同時期に発売するエントリーモデルの「AQUOS wish4」は備えておらず、AIの機能をつかさどるSnapdragon 7+ Gen 3のNPU(Hexagon)を生かしたものといえる。

 消費電力については、Gen 2と比較して、Snapdragon 7+ Gen 3では5%の電力削減が可能になっているとのこと。「フラグシップに8シリーズがあるが、そこに使われている最新のアーキテクチャをSnapdragon 7+ Gen 3にも使っている。音楽再生なら約2時間長く、動画は約40分長く再生できる」(中山氏)

 Qualcommが公表しているスペックシートを見ると、Snapdragon 7+ Gen 3のCPUクロックスピードは最大2.8GHz。Snapdragon 7 Gen 3の最大2.63GHzより高くなっている一方で、Snapdragon 7+ Gen 2の最大2.91GHzよりはやや低い。ただし5GモデムはGen 2の「Snapdragon X62 5G」よりも新しい「Snapdragon X63 5G」を採用しており、X62の下り最大4.4Gbpsよりもより高速な下り最大5Gbpsの通信をサポートする。また、Wi-Fi 7に対応した「FastConnect 7800」をサポートするのは7シリーズではSnapdragon 7+ Gen 3のみだ。

 カメラの画像処理をつかさどるISP(Qualcomm Spectra)は、18ビットのコグニティブISPに対応しており、写真や動画のレイヤーを認識して画質を最適化できるという。

 一方、Snapdragonの8シリーズを見ると、CPUのクロックスピードはどの世代も3GHzを超えており、Snapdragon 8 Gen 3が最大3.4GHz、1世代前のSnapdragon 8 Gen 2が最大3.36GHzとなっている。5GモデムはSnapdragon 8 Gen 3が下り最大10Gbpsの「Snapdragon X75 5G」、Snapdragon 8 Gen 2が下り最大10Gbpsの「Snapdragon X70 5G」を搭載する。2つともFastConnect 7800や18ビットのコグニティブISPもサポートする。

 こうしてみると、CPUや5Gモデムの性能はSnapdragon 8シリーズの方が上だが、Wi-Fi 7対応やコグニティブISPなど共通している部分もある。5GについてはX63もミリ波は対応しており、国内の理論値での最速はドコモの4.9Gbpsなので、モデムチップの差がスループットに影響を及ぼすことは考えにくい。

 小林氏は「Xで動画がたくさん入っているタイムラインを一気にスクロールすると、7シリーズだと多少落ちるケースがあるが、8シリーズだと落ちづらい」と話すが、日常的な使い方では大きな差はないという認識。それはユーザーへの調査でも実証されている。

 「お客さまの認識を調べると、プロセッサが8シリーズかどうかなどのネームバリューを重視する人は1桁%。触っての気持ちよさや電池持ち、バランスを重視する人が圧倒的に多い。今回の選択は正しかったと思う。10万円前後でこれぐらいのパフォーマンスが出る商品はないと思う」(小林氏)

 携帯キャリアの端末購入プログラムは、1~2年後に返却して買い替える仕組みを取り入れているが、2年前の「AQUOS R7」から乗り換えても満足できるか? と小林氏に聞いてみたところ、「乗り換えても戦える仕上がり」とのこと。「パフォーマンスはAQUOS R7からも上がっている。1型センサーカメラの究極的な描写力では勝てないかもしれないが、メイン+広角の総合力、あとはISPやインカメラもよくなっている。そこには自信がある」

 小林氏は、7月2日の説明会冒頭でも、AQUOS R9とAQUOS wish4の仕上がりについて「自信作です」と断言した。その言葉通りの完成度か、発売後に確認していきたい。

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