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楽天モバイルの“株主優待SIM”を使ってみた 毎月30GBを1年間、サブ回線の運用に最適

ITmedia Mobile 2024年7月8日 11時7分

 楽天グループは第27期株主優待として、楽天モバイルの「音声+データ30GB/月」プランを1年間無料で利用可能な回線(以降、株主優待専用回線)を配布しました。

 この株主優待専用回線は、2023年12月末日権利日に楽天グループの株主名簿に記載のある100株(1単元)以上を保有する株主を対象として、5月以降順次配布されているものです。届いた日からおよそ1年間の間、毎月30GBのデータ通信とRakuten Link Officeアプリ経由での無料電話が可能な楽天モバイルの回線となっています。

 今回、この株主優待専用回線を使い機会があったので、実際の使用感をレポートしていきます。

●株主優待専用回線は法人プランをベースとした専用プラン

 株主優待専用回線は楽天モバイルが法人向けに提供している「Rakuten最強プラン ビジネス」をカスタマイズしたものとなっております。

 特徴は以下の通りです。

・30GB/月まで利用可能(※パートナー回線含む)

・30GB超過時は追加チャージ不可で、国内では200kbps、海外では128kbpsの通信制限がかかる

・my楽天モバイルやmy楽天モバイル Officeを利用した利用状況の確認に非対応

・通話は専用アプリ「Rakuten Link Office」経由なら無料

・Rakuten Link Office非利用時やナビダイヤル利用時など、国内通話有料分は請求金額が確定した場合に別途案内あり

・海外利用は2GB/月まで無料で利用可能

・海外電話・SMSは利用不可能

・eSIM→eSIM、eSIM→物理SIMなどの変更は問い合わせフォームにて対応(※ただし6月末時点で郵送まで最大2カ月かかるとのこと)

 株主優待専用回線はRakuten最強プラン ビジネスの音声+データ30GBプラン(3058円/月)をベースに、データチャージや海外通話などのオプション利用・変更ができないようなプランとなっています。

●受取でトラブル発生、開通すれば快適だが……

 株主優待専用回線は楽天グループ株式会社株主様ご優待専用サイトよりログインし、楽天IDをひも付けて先行申込に応募することで、5月頃に郵送され、それを受け取るだけで利用可能となります。なお、先行申し込みをしなかった場合は6月以降発送でネットか郵送によるKYCが別途必要です。

 マイナンバーなどの公的証書による本人確認が必要な本人受取限定郵便で佐川急便より配送されますが、ここでトラブルが発生。予定より早く4月下旬頃には届いたものの、株主名簿に片仮名で登録されていたためか、片仮名で届きました。

 株主優待専用回線は郵便受取でKYCも実施しているためか、名前が違うと受け取れません。今回、本人確認書類に一切片仮名が乗っていないため受け取れない事態となりました。

 余談ですが、こういった問題が多発しているのか、5月14日に総務省より「宛名が片仮名で表記されている本人限定受取郵便(特定事項伝達型)の本人確認方法に関する行政相談について」という題名の声明が発表されています。)

 株主優待専用のお問い合わせ先に電話し、名前を漢字に変更する依頼をしたところ、1カ月後の5月下旬頃にようやく受け取ることができました。

 届いた資料はeSIMのQRコードとガイド類の2枚のみ。あとはQRコードを手持ちのスマホで読み込むだけで開通です。

 回線自体の使用感としては一般的な楽天モバイルと全く同じです。地下やエレベーター内、混雑しているところといったところは相変わらずつながりにくいものの、つながってさえいれば快適そのものです。2024年6月よりサービス開始の700MHzプラチナバンドサービスと、そのエリア拡大に期待です。

 株主優待専用回線特有の事情として、my楽天モバイルアプリで利用状況が見られないのはやはり不便です。もちろんAndroidであれば設定より利用状況の確認と通信制限が、iOSであれば月ごとに統計情報のリセットさえ忘れなければ利用状況の確認のみできますが、海外利用分は分からないですし、体験としてはイマイチに感じます。

 30GBは絶対に使い切れないのであれば問題ないですが、つながりにくいところもあると考えると、あくまでサブ回線として利用するのがいいでしょう。

●優待SIMの狙いは株主への事業理解促進か 25年以降の株主優待は不明

 楽天グループは株主優待に関して「株主の皆様の日頃のご支援に感謝するとともに、当社グループのサービスをより多くの方にご理解いただく機会を提供することを目的」と説明していますが、第27期の株主優待は実質約3.7万円分の優待となっており、1単元約8万円の投資で得られる優待としてはかなりの大盤振る舞いのため、単純な株主還元ではなく、事業理解の促進という側面の方が強いと思われます。

 楽天グループの2023年通期のセグメント別利益は、インターネットサービスが768億円、フィンテックが1229億円の黒字なのに対して、モバイルが3375億円の赤字となっており、モバイル部門が足かせになっている状況です。一方で、回線契約数が直近わずか2カ月で650万から700万に拡大しており、単月黒字化や、楽天モバイルが2024年度末までに目指している800万~1000万回線というラインに近づいているのも事実です。

 そういった状況下で、株主に赤字事業のモバイル事業に触れてもらうことで、楽天経済圏におけるモバイルの中核的な価値と課題点を理解してもらおうとしているのだと思います。

 なお、楽天グループの株主は2023年12月段階で約53万人おり、株主優待専用回線ができることで単純に法人向け契約数が53万回線増えることになります。今回配布された株主優待専用回線も公表される契約者数に含まれるため、直接的な原資は楽天自社負担とはいえ、顧客基盤の拡大にも寄与します。

 株主優待専用回線は1年経過時点で自動解約となり契約延長はできないものの、12月末の2024年度決算時には契約回線数としてカウントされる上、実際に使った株主が楽天モバイルに乗り換えるきっかけにもなりえます。

 では、2025年以降も同じ優待を受け取ることは可能なのでしょうか。公式には2025年以降の株主優待は未定とアナウンスされていますが、株主優待の意図を踏まえると2024年とは異なるものになるのではないかと推測します。第1に、株主還元にしては大盤振る舞い過ぎること、第2に2024年中に単月黒字の目標達成できるのであれば、今以上の株主理解促進は不要であるためであり、特に目覚ましい契約者数の増加を踏まえると早々に目標の800万回線を突破しそうな気がします。

 とはいえ、直近の契約者数増加は既存顧客向けも含んだ乗り換え促進キャンペーンの影響が大きく、今のペースを維持できる保証はありません。どれぐらい契約者を獲得できるか、通信品質やARPUをどこまで向上できるのか、ひいては楽天モバイルは黒字化を達成できるのか、楽天グループとのシナジーをどこまで生かせるか。今後に注目です。

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