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カラー電子ペーパー搭載「BOOX Go Color 7」で読書体験が超快適に テキスト主体なら文句なし

ITmedia Mobile 2024年7月12日 10時5分

 長年Kindle PaperWhite(第10世代)を愛用してきた筆者だが、2018年発売ということもあり、その反応速度の遅さにはもどかしさを感じていた。スマートフォンでの読書体験にも慣れた今、電子書籍リーダーにも進化を求めていた。

 そんな中で出会ったのが、ONYX International製の「BOOX Go Color 7」だ。E-Ink Kaleido3スクリーンを搭載し、200g切りの薄く軽い電子書籍リーダーながら、液晶タブレットのようにカラー表示が可能となっている。日本ではSKTが公式代理店として6月末に発売した。Amazon.co.jpでの販売価格は4万9800円だ。

●エントリータブレット並みのハードウェア

 BOOX Go Color 7のハードウェア構成は、エントリーモデルのAndroidタブレットに相当する。プロセッサは公称ではQualcomm製8コアとなっているが、Snapdragon 680を採用しているようだ。これはXiaomiの2万円台のタブレットRedmi Pad SEと同じプロセッサ。メモリは4GBと控えめだが、読書のためのデバイスとしては性能に不足はない。

 バッテリー容量は2400mAhと小さめだが、電子書籍リーダーとしての使用では十分な持続時間を実現している。1日1時間の読書で約1週間は継ぎ足し充電なしで使用できた。

 ソフトウェア面では、Google Play対応が大きな利点となっている。旧世代のBOOX製品ではプリインストールされていない場合もあったが、本機ではGoogle Playを標準搭載。ChromeなどのGoogle製アプリも自由にインストールでき、「Androidを探す」機能も利用可能だ。これにより、一般的なAndroidタブレットと遜色ない使い勝手を実現している。

 一方で、いくつかの制限も存在する。OSが最適化されているため、待機状態ではアプリの動作が制限される。待機状態からの起動は20秒ほどかかるので、せっかちなユーザーには気になるかもしれない。

 ホーム画面は独自のランチャーアプリが採用されており、他のランチャーへの変更はできない。プリインストールされているBOOXの電子書籍ストアは英語版と中国語版のみで、日本語版は提供されていない。ストアのラインアップも、プロジェクト・グーテンベルク(日本の青空文庫に相当)の書籍が中心で、最新のベストセラーは見当たらない。

●テキスト主体の電子書籍の表示がスピーディーで大満足

 筆者にとって重要だったのは、テキスト主体の電子書籍の読書体験だ。この点についていえば、BOOX Go Color 7は「最高」の一言に尽きる。

 これまで使用していたKindle PaperWhiteと比較して、BOOX Go Color 7の反応性は明らかに速い。タッチパネルの追従速度は速く、画面描画の速度も電子書籍リーダーとしては期待以上に速い。本体前面にある音量ボタンを使用したページめくりも可能になっており、片手での操作性も良好だ。

 そして、モノクロ電子ペーパーのKindleデバイスでは1色のマーカーしか表示できず、マーカー量が多くなると逆に読みづらくなってしまうことがあった。

 BOOX Go Color 7のカラー電子ペーパーが最も生きるのが、書籍へのマーカー機能だ。本機ではAndroid版のKindleアプリを起動して、4色のマーカーをしっかりと塗り分けることができる。

 マーカーをカラフルに塗り分けられることが非常にありがたかった。重要度や分野ごとに色分けしてマーキングができ、後から復習する際の効率が大幅に向上する。

●アプリによってリフレッシュモードを切り替え可能

 ここで改めて電子ペーパーの特徴と、その弱点である「ゴースト」について確認しておこう。電子ペーパーはバックライトとなる光源が不要なので目に優しく、直射日光下での視認性がいい。省電力の面でも表示内容を表示しない限りは電力を消費しないため、電子書籍と相性がいいという特性がある。

 一方で、従来の電子ペーパーはリフレッシュレートが低く、動きのあるものの表示は不得手だった。これは、電子ペーパーの画素の白黒の濃淡を表現するために、画素内部の黒い粒子と白い粒子の位置を電気的に制御する必要があり、その粒子の移動に時間がかかるためだ。

 また、黒から白への切り替え時に、黒い部分が残像として残る「ゴースト」と呼ばれる現象が発生することがある。これを防ぐために、画面全体を白黒表示でリフレッシュする必要があり、ページ切り替え時に画面が点滅する特徴が見られる。

 これは前の画面の残像が次の画面に影響を与える現象だ。BOOX Go Color 7では、このゴースト対策としてリフレッシュ機能が搭載されている。

 BOOXには電子ペーパーのリフレッシュのモードとして「ノーマル」「A2」「スピード」「リーガル」の4つが用意されている。これらのモードは、ゴーストを抑える具合とアプリが求めるスクロールの頻度の兼ね合いを見て選択するといいようだ。

 具体的には、Kindleのような電子書籍アプリでは「ノーマル」モードを選択すると違和感なく表示できた。楽天マガジンのような雑誌アプリでは「スピード」モードが効果的だった。ChromeやXのようなSNSアプリやWebブラウザを使用する際は「A2」モードを選択すると最適だと分かった。

 ノーマルモードでは10回ページを切り替えると1回リフレッシュが走るように設定されており、ゴーストがたまってきたなと感じる前にリフレッシュされる印象だ。一方、A2モードではゴーストが残りやすい傾向にある。しかし、実際に雑誌を読んでいるときなどは、裏面が透けて見える程度であまり気にならなかった。

●カラー表示における解像度は低め コミックとの相性がいい

 E Inkディスプレイは液晶と異なる特性を持っている。特筆すべき点として、E Inkは輝度でコントラストを表現できないため、カラー表示時に解像度が落ちてしまうという課題がある。

 BOOX Go Color 7では、モノクロ表示時は300ppiの高解像度を実現しているが、カラー表示に切り替えると150ppiまで解像度が低下する。この解像度は初代iPad並みの解像感であり、細かい文字を含むコンテンツを閲覧する際に課題となる。

 実際にさまざまな出版物を閲覧してみると、解像度の違いによる影響は媒体によって異なることに気付いた。相性がよかったのは漫画だ。くっきりとした線画でサイズもコミック版と近い。カラーページの塗り分けもイラスト的だから電子ペーパーと相性が良い。このため、漫画を読むには非常に適しているといえる。

 雑誌の場合は、内容によって読みやすさに差が出た。週刊誌のようなモノクロページは非常に読みやすい。しかし、光沢紙に細身のフォントで印刷するようなグラフィックにこだわった雑誌では、文字が細すぎて読みづらいと感じた。

 日経電子版の紙面ビュワーも使用してみた。タイトルは問題なく読めるものの、本文は拡大しないとほぼ読めない状態だった。これは、カラー表示時の解像度低下が原因だと考えられる。

●SNSは“やや見づらい”が、それが逆にいい?

 Androidタブレットなだけに、BOOX Go Color 7ではSNSやWebブラウザも利用できる。テキスト主体のSNSを利用する場合、リフレッシュモードを「A2」に設定すると比較的滑らかに閲覧できる。しかし、画像が多く含まれるコンテンツをスクロールしていくとゴーストが徐々に蓄積されていくため、スマートフォンで見るときほどの読みやすさは感じられない。

 一見するとこれはデメリットに思えるが、実際には意外なメリットをもたらす。SNSに依存しがちな筆者にとって、この"少し見づらい"という特性は、SNSとの適切な距離感を保つために重要な要素となった。

 まず、SNSの利用が自然と適度に抑えられる。気分転換程度にSNSを開くことはあっても、長時間没頭することが少なくなる。そして、SNSの閲覧後、自然と本に戻ろうという気分になれるのだ。さらに、SNSへの過度の没頭を防ぐことで、全体的な集中力の維持にもつながっている。つまり、この“見づらさ”は、デジタルコンテンツとの健全な関係を築くための、ある種の「仕掛け」として機能しているのだ。

●スマホとファイル共有する、続きをBOOX Go Color 7で読む機能も

 スマートフォンとBOOXを連携して、ファイルをやりとりする方法は複数が用意されている。

 電子書籍リーダー側にBooxDropというアプリが用意されている。BooxDropアプリを使えば、BOOX端末をファイルサーバとして機能させ、スマートフォンから直接ファイルを転送できる。これにより、USBケーブルなしでも簡単にコンテンツを移動できる。また、BOOXのクラウドストレージを介したファイル転送も可能で、インターネット経由でのコンテンツ同期ができる。

 さらに、スマートフォンアプリも用意されている。スマホアプリでは、共有アプリから、後で見ているWebサイトやアプリの内容をBOOX端末に直接送る。手元にスマホしかないときでも取りあえず送信しておいて、電子ペーパー画面で後からゆっくり読むといった使い方も可能だ。

 スマートフォンの専用アプリはiOS版ならApp Storeから入手できる。ただし、Android版はGoogle Playに対応していないため、Webサイトから入手する一手間かかる点には注意が必要だ。

 筆者が特に有用と感じたのは、AI検索ツールのPerplexityとの組み合わせだ。Perplexityには学術論文に絞った検索機能があり、これを利用することでPDF形式の論文を効率的に探すことができる。さらに、検索した論文をそのまま電子書籍として読むことができる点が非常に便利だ。

 スマートフォンの小さな画面ではPDFを読むのはなかなか難しい。しかし、BOOX Go Color 7の7型という画面サイズは、学術論文のPDFを読むのに適している。文字は細かいものの、十分に判読可能だ。

●自分なりの活用法を見いだす楽しみ

 BOOX Go Color 7のカラー電子ペーパー搭載で、電子書籍リーダーながら豊富なアプリが選べるのが特徴だ。

 読書においては、反応速度がよく、ページめくりもスムーズ。さらに、カラーマーカー機能により、重要度や分野ごとに色分けしてマーキングができるため、読書効率が格段に上がる。

 ただし、カラー表示時は解像度が低下するため、細かい文字の多い雑誌や新聞の閲覧には向かないことも留意すべきポイントだ。一方、漫画の閲覧には最適で、目の疲れも軽減できる。カラー電子ペーパーは解像度が低下するという弱点があり、雑誌のようなグラフィック重視のコンテンツには適していない。

 Android搭載でスマートフォンと同じように、SNSアプリも起動できるが、興味深いのは、“ちょっと見づらい“ことが、かえってSNS依存を防ぐ効果があったこと。電子ペーパーの意外な恩恵だった。

 Androidデバイスというだけあり、電子書籍リーダーにとどまらず活用できるのが本機の魅力でもある。自分なりの使い方を模索するのも、また1つの楽しみだ。

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