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スマホの実質負担額、ソフトバンクが最も「分かりにくい」と感じる理由

ITmedia Mobile 2024年7月17日 10時5分

 スマートフォンの価格には「一括価格」と「実質負担額」がある。一括価格は商品の定価であり、割引前の金額となる。実質負担額は大手キャリアの端末購入プログラムを利用した際、実際に支払う金額を指す。

 4キャリアは2024年現在、スマートフォンを残価設定のある24回払い、または48回払いで購入し、スマートフォンを返却すると、返却時点に応じて支払いの一部が免除されるプログラムを一部機種向けに提供している。この免除される金額を引いた額が、実質負担額となる。

 この実質負担額は、各社のオンラインストアや製品ページで確認できるため、どのタイミングでスマホを返却すると、どのくらいの金額で運用できるのかが分かる。しかし、その中で特に分かりづらいと感じるキャリアがある。ソフトバンクだ。

●最安のケースになる実質負担額の算出が困難

 まずは実質負担額について。ソフトバンクをはじめとする大手キャリアでは、分割購入や一定期間使用後の返却などを条件とした端末購入プログラムを適用することで、1回払いで購入するよりも割安な価格(実質的に安い価格)で端末を入手できる。

 各社ともにオンラインショップや製品ページで1回払いと実質負担額を明記しているが、ソフトバンクでは1回払いも実質負担額も「総額」と表記されており、パッと見だとどちらが1回払いなのか実質負担額なのかが分かりづらい。

 ミッドレンジモデルの「Google Pixel 8a」を例に挙げると、製品ページに総額と小さな字で記載された方の7万7760円(税込み、以下同)が1回払いの金額で、その少し下に「新トクするサポートなら超おトク」と記載のある総額2万2008円が実質負担額に見える。

 ……と、いいたいところだが、実はこれ、最終的な実質負担額ではない。

 ここで伝えたいのは、「最安の実質負担額」を算出しづらいこと。ソフトバンクオンラインショップでは、MNPで乗り換えた上で端末を購入すると、「オンラインショップ割」という割り引きを受けられる。

 先に挙げたPixel 8aをソフトバンクオンラインショップで購入する場合、総額と書かれた2万2008円からオンラインショップ割の2万1984円を引いた金額、つまり24円が最終的な実質負担額となる。しかしソフトバンクの製品ページには、オンラインショップ割を加味した、最終的な実質負担額が明記されておらず、消費者自身で算出する必要があるのだ。

 ソフトバンクオンラインショップから製品を選び、契約種別で「MNP」を選択した後に表示される「機種・プラン」のページには、オンラインショップ割を加味した実質負担額は表示されるが、オンラインショップで機種を選択した最初のページや、(オンラインショップとは別の)製品ページには明記されないので、やはり分かりにくいと感じる。

●「新トクするサポート(プレミアム)」対象機種の価格表記はさらに分かりづらい

 最も分かりづらいのは「新トクするサポート(プレミアム)」の対象機種の価格だ。

 新トクするサポート(プレミアム)を利用するには、対象機種を48回払いで購入する際、「あんしん保証パック」に加入の上、「早トクオプションの利用料」を支払い、購入から13カ月目以降に特典利用を申し込むなどすれば、最大36回分の対象機種の分割支払金または賦払金の支払いが不要になる。

 ここまでの内容はニュースリリースなどに記載されているが、最終的な実質負担額がソフトバンクの製品ページには明記されておらず、こちらも自分で算出しなければならない。

 利用条件に含まれているあんしん保証パックだが、機種やシリーズによって、加入できるサービスや利用料が異なる。

 例えば、Google Pixel、シャープ製スマートフォン(2021年以降発売機種、法人モデルを除く)、モトローラ製スマートフォン(2023年以降発売機種)、Xiaomi製スマートフォン(2024年以降発売機種)は、月額990円の「あんしん保証パックネクスト」に加入できる。その他のスマートフォン、ソニー製スマートフォンのXperiaなどは、月額715円の「あんしん保証パックプラス」に加入できる。

 あんしん保証パックだけでなく、早トクオプションの利用料の1万2100円も別途発生するため、実質負担額に加算して考えた方がいい。

 実際、どのような計算式になるのか。シャープ製スマートフォンのハイエンドモデル「AQUOS R9」で確かめたい。

 AQUOS R9は1回払いが12万4560円だが、この金額は計算に含めなくてよい。見るべきはその下に記載の3万1824円だ。この金額に早トクオプション利用料の1万2100円と、あんしん保証パックネクスト利用料の1万2870円(月額990円×13回分)を足した5万6794円からオンラインショップ割の2万1984円を引いた3万4810円が、ソフトバンクオンラインショップで購入し、1年後に返却した場合の実質負担額となる。

●ドコモは端末補償+早期利用料を加味した実質負担額を明記

 このように、ソフトバンクの製品ページでは明確になっていない事項が多いと感じる。

 では、他キャリアはどうか。ドコモも、ソフトバンクの新トクするサポート(プレミアム)と同様に、1年後に端末を返却するとお得になる「いつでもカエドキプログラム+」を提供している。

 先に一例として挙げたAQUOS R9はドコモでも取り扱っており、いつでもカエドキプログラム+の対象になっている。ドコモオンラインショップを見ると、「一括払い」「いつでもカエドキプログラム+分割払い」「分割払い」という3つの項目がある。一括払いは言うまでもなく1回払いを指す。ドコモのAQUOS R9は11万7040円だ。

 約1年後に別の機種に変更する場合は、いつでもカエドキプログラム+分割払いをクリックかタップし、「2:23か月目以外で本機種をご返却する場合」を選択すると、内訳を確認できる。

 早期利用料の1万2100円、smartあんしん補償利用料の1万1440円(月額880円×13回分)、1~12回目までの分割金額の3万2142円、という情報が箇条書きで分かりやすく記載されているため、ソフトバンクのような算出は不要だ。

 ソフトバンクの場合、製品ページにオンラインショップでの価格を明記しているが、オンラインショップ割、新トクするサポート(プレミアム)で必要なあんしん保証パックの正確な利用料が明記されていない。AQUOS R9のページにはあんしん保証パックの料金として「月額使用料最大1740~550円」と明記されているが、どの料金が該当するのかが分からない。早トクオプション利用料は明記されているが、合計金額は算出しておらず、自分で計算する必要がある。

 KDDI(au)と楽天モバイルは、1年後に返却した場合に割安な実質負担額となるプログラムを提供していないが、auオンラインショップでは「au Online Shop お得割」、楽天モバイルでは乗り換えを条件とするポイント還元分を引いた金額を製品購入ページに記載している。

 ソフトバンクは、なぜオンラインショップ割を引いた実質負担額を製品ページに明記していないのだろうか。オンラインショップ割込みなら、他キャリアよりも安くなるケースもあるかもしれないだけに、もったいないと感じる。特に、ソフトバンクは1年で返却すると実質12円や24円になるなど、お得な施策を打ち出している。もう少し表記を工夫するだけで、魅力的なプログラムの理解促進につながるはずだ。

●価格のサイレント変更も難点

 ドコモオンラインショップでは、価格の変更がある場合も利用者に対して告知している。ドコモオンラインショップのトップページから「販売情報一覧」へ推移すると、価格改定や割引額の変更、キャンペーン情報が分かるようになっている。

 KDDIは、auオンラインショップのお知らせで、楽天モバイルは、製品ページにて価格変更があった機種のお知らせを掲出していることがあるが、価格改定日や割引額などの情報が網羅されているわけではない。この点は、ドコモオンラインショップの告知が最も分かりやすい。

 ソフトバンクオンラインショップでは、こうした情報の告知がなく、利用者としてはいつ何の機種の価格がどのように変更されたのかが分からない。いわゆる価格ページのサイレント更新だ。価格のお知らせをずっと追い続ける人は少数派だとしても、ドコモオンラインショップのように都度告知した方が親切ではないだろうか。

●あらゆるユーザーにとって分かりやすい表記を

 ここまでの内容をまとめると、以下の通り。

・実質負担額は、最終的な負担額を製品ページに分かりやすく明記してほしい

・価格の変更がある場合は、お知らせのページで最低でも「いつから」「どの機種が」「いくら安くなるのか」の3点を告知してほしい

 全ての通信キャリアで足並みをそろえるのは難しいかもしれないが、携帯電話はあらゆるリテラシーのユーザーが購入するもの。購入プログラムは、確かに短期間で機種変更をする人にとってはありがたい仕組みだが、条件が多岐にわたり、スマホに詳しくない人が初見で理解するのは困難だろう。それだけに、ユーザーにとって親切で、分かりやすい表記や告知を望みたい。

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