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「Xperia 1 VI」ファンイベントで感じた“体験”の重要性 設計で苦労したカメラは「テレマクロ」推し

ITmedia Mobile 2024年7月17日 16時30分

 KDDIとソニーは7月12日に「Xperia 1 VI」「Xperia 10 VI」の発売を記念したファンイベントを共同で開催した。場所は「esports Style UENO」(東京・台東区)で、auユーザーだけでなく他キャリアユーザーを含む、抽選に当選した人が集った。

 本イベントではXperia 1 VIが貸し出され、実機を触りながらプレゼンテーションを聞けた他、プロのカメラマンからのアドバイスを参考に、Xperiaでの撮影体験を行えた。この記事では本イベントで語られたことや、開催の意図をお伝えする。なお、説明はXperia 1 VIにフォーカスしたものとなる。

●Xperia 1 VIの設計で苦労したのはカメラ テレマクロ撮影機能を体験

 Xperia 1 VIは、アスペクト比が19.5:9の有機ELディスプレイや最大7倍の光学ズームが可能なアウトカメラ、容量5000mAhのバッテリー、3.5mmイヤフォンジャックなどを搭載する。KDDIの他にもNTTドコモ、ソフトバンク、ソニーストアなどが販売している。

 本イベントで多くの時間を割いて説明されたのはカメラだ。ソニーで商品企画を担当する八木隆典氏は、Xperia 1 VIの光学ズームについて、「画質劣化なくさまざまな被写体を撮影できる」ことを重視して、カメラの設計を行ったと語る。

 先代モデル「Xperia 1 V」からの変更点については、「より遠くのものを撮影できるようになった」ことをアピールしつつ、スペックにも触れて説明した。Xperia 1 Vでは85-125mmの間が光学ズーム域で最大5.2倍の光学ズームが可能だった。新モデルのXperia 1 VIでは85-170mmの間が光学ズーム域となり、最大で7倍の光学ズームが可能となっている。

 八木氏は、大きな望遠レンズがスマートフォンのボディーに入っていることを、展示物と合わせて紹介。ソニーで商品設計を担当した榎嶋大輔氏も望遠力をアピールするとともに、「望遠のカメラモジュールをボディーに詰め込むのに最も時間を費やした」と開発時の苦労を明かした。

 望遠力については「肉眼を超え細部まで写すテレマクロ撮影」というフレーズだけでなく、作例でイメージがわくようになっていた。瞳の奥に写るまつげや、水滴の中にまるで花びらがあるかのような作例は、スマートフォンで撮影したとは思えない仕上がりだ。

 そのテレマクロ撮影機能は実機で試すこともできたが、撮影に少し苦戦する人もいた。スタッフが実機で丁寧に説明していたが、ピント合わせは少し時間がかかるようだ。

 テレマクロ撮影はどのようなシーンにおいて役立つのか。ここで少し補足したい。カメラのレンズには被写体に近づける距離に限界があり、近づき過ぎてしまうと、ピントが合わなくなってしまう。撮影できたとしても、手や人の影が映り込んでしまう。

 そこで、ソニーが考えたのは、望遠力を生かしたマクロ撮影だ。被写体に近づかなくても、光学ズームで劣化なく撮影でき、まるでマクロレンズで撮影したかのような仕上がりとなる。

●写真家/ビデオグラファー視点でXperia 1 VIを解説 「逆さ持ちのスマホ」で日常を面白く切り取れる

 カメラ機能に関しては、写真家/ビデオグラファーとして活動する中西学氏が、作例とともにXperia 1 VIの凄さを語り、写真撮影のコツなどを紹介した。

 よくある他社のデジタルズームだと、レンズを伸ばしてズームしているわけではなく、単に画像の一部分を切り取っているだけなので劣化しがち。一方、Xperia 1 VIは物理的にレンズの位置を動かす。一眼レフカメラの望遠レンズを伸ばすような形で撮影するため、きれいな仕上がりとなることを中西氏は評価していた。

 日頃からビデオグラファーとしても活動する中西氏らしい気付きとして、Xperia 1 VIが手ブレ補正に強いことを挙げる。手ブレ補正により、「静止画撮影だけでなく、映像制作にも活用できる」と中西氏は語る。

 また、スマートフォンを逆さにして撮る、という常識とは逆の発想も中西氏ならでは。「私はダイナミックに撮ることが多いので、スマートフォンを逆さに持って下から取ることが多い」と中西氏。逆さに持つ、とはカメラレンズが地面に近くなるように持つ、という意味。底面が上を向くように持ち、下から見上げるように撮影すると、日常を面白く切り取れるようだ。

 初心者にはまず「露出補正」を使ってほしい、と話す中西氏は、Xperia 1 VIでも露出補正ができることを訴えかけた。露出とはカメラのイメージセンサーに取り込まれる光の量を指す。その量はレンズの絞りとシャッター速度で決まる。オートモードではこれらをシーンに適切な値にすることで、ほどよい仕上がりとなるが、自分好みの明るさにすることも可能だ。

 その補正をカメラ任せにせず、ユーザー自らで行う、というのが中西氏の話す露出補正だ。露出を補正するためのスライドバーを調整して、「写真を暗くすると、全体のディティールがグッと出て、よりこの暗い表現がしやすくなる。露出補正を適正(0)にすると、カメラが判断したものしか記録できない」(中西氏)ため、この仕組みを覚えておくと表現の幅が広がるようだ。

 写真の色味を変更したい場合は「ホワイトバランス」の活用がおすすめだという。ホワイトバランスは暖色系にしたり、白色LEDに近い色にしたりするのに役立つ。また、構図を決めづらいときは「グリッドライン」を使うことで、水平を保ち、構図の中心を確認できるという。

●メディア向けとは違った伝え方を模索 KDDIは他のメーカーとの共同開催も検討

 本イベントでKDDIとソニーが工夫していたのは、専門用語を多用せず体験ベースでXperia 1 VIの魅力を伝えたことだ。メーカーやメディア向けのイベントによってはスペックや機能の説明で終わってしまうところ、一般参加者が集ったということもあり、魅力がより分かりやすく伝わってきた。その狙いは何だろうか。

 ソニーで商品企画を担当する八木隆典氏は「メディア向けのイベントとは違った説明をした」と明かす。「メディア向けのイベントではXperia 1 Vからの変更点として、4Kかつ21:9の廃止や、複数あったカメラアプリの結合を挙げていたが、本イベントにはXperiaを持っていない方もいらしていたため、優先度を下げて話をした」(八木氏)

 Xperia 1 VIはAIを活用して人間の骨格を認識し、被写体を追従できる「姿勢推定技術」を搭載している。人の骨格を学習させたことで実現した機能だが、本イベントではあえて「プレゼンテーションに含めないようにした」(八木氏)という。

 体験を重視したイベントとしたのは、「AIへの理解や関心のあるメディアと違い、一般の方々にとってはAIがどうなっているのかというよりも、結局、何ができるか(体験のところ)が大事だから。まだこの内容が世の中というか、エンドユーザーまで届ききっていない」(八木氏)ためだという。

 では、KDDIがソニーと本イベントを共同開催した狙いは何だろうか。

 KDDI パーソナル企画統括本部 プロダクト企画部の近藤隆行氏は、「お客さまによりスマートフォンの魅力を知ってほしい、という思いから、ファンイベントを開催している。最初の頃は開発者の方と実際にお客さまが直接、やりとりをしたり、Q&A形式で質問に答えたりしていたが、2023年から今回のような体験イベントを開催している」と話す。

 八木氏は「Xperia 1 VIの体験会を5月17日に開催し、この日はメディアの方々だけでなく、ロイヤルカスタマーの方々にもお声がけをした。Xperiaの価値を実体験で伝えたいというわれわれの思いとKDDIさんのお考えが合致したため、本イベントの開催に協力した。お客さまの反応を見られるのは貴重。このような場を設けることで、カメラやオーディオについて、今お持ちのスマートフォンと比較してもらえる。そのリアルな反応を確認できる」とした。

 スマートフォン市場を見ると、部品数の増加や多機能化、半導体不足などを背景に、Xperia 1 VIをはじめとするハイエンドモデルは、高騰化に歯止めがかからない。加えて、2020年以降はコロナ感染拡大防止の観点から、多くの人が密集するイベントの開催に踏み切れずにいた。

 こうしたいくつもの要因が重なり、ここ数年では特に「スマホの価格高騰」というワードが一人歩きし、メーカーとして本当に伝えたい、体験価値が十分に伝えづらい感があった。

 今後、KDDIとしては他のメーカーとの共同開催も考えているという。「カメラやそうでない魅力をお客さまにお伝えできる場を増やしていきたい。KDDIとしてはさまざまな端末を用意している。複数のメーカーが一堂に会す体験会を検討していきたい」(近藤氏)

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