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「iOS 18」のパブリックβを試す ホーム画面のカスタマイズ性が大幅に向上、RCSは現時点では非対応か

ITmedia Mobile 2024年7月20日 11時31分

 Appleは、7月17日に、iOS 18など次期OSのパブリックβ版を公開、「ベータアップデート」を有効にしているユーザーへの配信を開始した。パブリックβ版とは、開発途上のOSを一般のユーザーに使ってもらい、修正点などのフィードバックを蓄積するための仕組みだ。正式版の配信に先立ち、最新OSに搭載された機能を利用できるのがユーザーにとってのメリットになる。

 以前は登録などの作業が必要だったパブリックβ版だが、iOS 16.4からは、設定アプリ上でベータアップデートを有効にするだけで、自身の端末にインストール可能になった。その意味では、β版ながら一般のユーザーでも手軽に試すことができる。

 気軽な反面、バグなども残っている可能性があるため、メインの端末にインストールするのはお勧めできないが、予備のiPhoneがある人は、一足先にiOS 18の世界を体験してみてもいいだろう。ここでは、配信されたばかりのパブリックβ版をもとに、iOS 18の特徴を紹介していきたい。

●カスタマイズ性が一気に高まったiOS 18、操作性にも影響あり

 パブリックβ版の配信が始まったiOS 18だが、残念ながら現時点ではAIを使った「Apple Intelligence」には非対応。仮に利用できたとしても、当初は言語が米国英語のみに限定されるため、日本のユーザーが生かし切ることはできない。文章のトーンを変える機能や、絵文字を生成する「Genmoji」、パーソナルコンテキストを理解するSiriなどは、2025年までお預けになる。

 これを除いたiOS 18の売りは、やはりカスタマイズ性が大きく高まったところにある。ホーム画面のアプリやウィジェットの並び替えが自由になったことだ。iOS 17までは、アプリやウィジェットが自動的に左上から配置されていた。アプリの数によっては、画面の下に隙間ができてしまうことになる。この設計は、初代iPhoneから10年以上踏襲されてきたものだ。

 iOS 18ではこの自動整列がなくなった。ユーザーはアプリのアイコンを下から並べていくこともできれば、壁紙の被写体を避けるように配置することもできる。アプリがズラリと並びすぎていると、必要なものを探し出すのが難しくなるが、この方式であれば、ある程度間隔を空けてアイコンを置くことも可能。1画面に並ぶアイコンを間引きやすくなったのは、操作性の向上にも貢献する。

 「Plus」や「Max」のつく大画面版iPhoneは、特に片手だと画面上部に指が届きにくかった。iOS 16でウィジェットが導入されてからは、“飾り”としてそれを配置しておくことで、頻繁にタッチするアイコンを下部に寄せられたものの、見栄えが変わったり、壁紙が覆われたりしてしまうのが難点だった。自由配置が可能になったことで、この問題がついに解消された格好だ。OSのアップデートではあるが、端末の選好にも変化を与えそうな印象を受けた。

 iOS 18を紹介するサイトなどではほとんど触れられていないが、そのウィジェットを呼び出す方法も簡単になった。同バージョンから、アプリのアイコンとウィジェットがシームレスに切り替わるようになっており、ワンタッチで両方の状態を行き来できる。アイコンを配置した後、もう少し目立たせるためにウィジェットにしたり、逆にウィジェットをアイコンに戻したりといった操作が、より直感的になった。

 アプリのセキュリティも強化されており、Face IDなどでロックをかけることも可能になっている。これまでは、サードパーティーアプリが個々にこうした機能を実装していたが、それをOSレベルでサポートした格好だ。プリインストールアプリの中では、「カレンダー」や「メール」「メモ」といったプライバシーに関わるアプリをロックできる。逆に、「時計」や「ショートカット」「マップ」などのアプリは、Face IDに非対応だった。また、アプリ自体を非表示してアプリライブラリーからしか呼び出せないようにすることも可能だ。

●アイコンの色合い変更やコントロールセンターのカスタマイズも可能に

 アイコンの配置の自由度が増しただけでなく、デザインのカスタマイズも選択肢が豊富になった。アプリごとに異なるアイコンの色彩を統一できるためだ。アイコンを移動可能な状態にした後、「カスタマイズ」を選ぶと、「ダーク」や「ライト」といったテーマを選択できる。ダークを選ぶと、アイコンも黒を基調としたものに切り替わる。

 ここで「色合い調整」を選択すると、アイコンの色合いを好みのものに調整することが可能だ。Androidには似たような機能があったが、アイコンの色合いが統一されると、見た目はそれに近くなる。このカスタマイズは、プリインストールされたApple純正アプリだけでなく、サードパーティーのアプリにも適用されるため、統一感が出しやすい。

 ただし、見栄えがよくなるのは、使い勝手がよくなるのとイコールではない点には注意が必要だ。色合いをそろえてしまうと、当然ながら、色という要素でアプリを区別しづらくなる。絵柄と文字、後は覚えていた場所だけでアイコンを見分けなければならず、少々紛らわしくなるのも事実だ。これはiOS 18に限った話ではないが、スタイリッシュさと使い勝手がトレードオフになることもある点には注意したい。

 カスタマイズ可能なのは、ホーム画面だけではない。コントロールセンターも自由度が増している機能の1つだ。これまでのiOSとは異なり、コントロールセンター内の各項目のサイズを、ある程度まで変更可能になった。また、縦スワイプでコントロールセンターの各項目を呼び出す操作も追加されている。サイズが固定されており、位置の変更や表示/非表示しか選択肢がなかった従来のそれより、使い勝手は増している。

 例えば、従来のコントロールセンターだと、AirDropを「すべての人」に切り替えるには、通信関連のボタンがまとまったフォルダのようなメニューを長押ししてから2階層目に入り、「AirDrop」をタップしなければならなかった。iOS 18では、通信関連の項目を一覧化し、しかも1ページ目にセットすることができる。タップの回数が減り、必要なものを呼び出しやすくなったというわけだ。

 また、細かなところだが、コントロールセンターの上部に電源キーが配置されるようになった。現行のiPhoneは、シャットダウンをするために、サイドキーと音量キーの上を長押しする必要がある(設定からも終了は可能)。ただ、同じボタンの短押しにスクリーンショットが割り当てられているため、終了しようと思ったら画面を撮ってしまったということが起こりがちだ。コントロールセンターから終了メニューを呼び出せることで、再起動などがしやすくなった。

●AIを使って進化した計算機や留守番電話、RCSは現状非対応か

 冒頭でApple Intelligenceへの対応は2025年になると書いたが、AIを使った一部の機能はきちんと実装されている。計算機は、その1つだ。iOS 18の計算機は、いわゆる電卓としてだけでなく、手書きの計算メモとしても利用することが可能だ。四則演算はもちろん、平方根や累乗、三角関数などの計算も一瞬でできる。やや動作が重いのは、パブリックβだからかもしれない。

 うれしいのは、通貨の換算に対応しているところだ。計算機の切り替えメニューをタップし、「換算」をオンにすると通貨が表示される。為替レートは、米Yahoo!fainanceのものを参照しているようだ。他にも、角度や面積、エネルギーなどの単位などの変換を行うことができる。サードパーティーのアプリに近いものはあるが、標準アプリにこうした機能が組み込まれるのは便利。単純な換算アプリとは違い、そのまま計算がしやすい点も評価できるポイントだ。

 同じくAIを駆使した機能としては、留守番電話のリアルタイム文字起こしが日本語で利用できるようになった。この機能はiOS 17で対応していたが、当初は英語に言語が限定されており、日本語は非対応だった。肝心の精度はまだ向上の余地があるものの、どんな内容が吹き込まれたかの類推をすることは可能。今後の改善にも期待したいところだ。

 iOS 18では、写真アプリも刷新されている。顔検出を使った「ピープル」や、思い出を自動で表示する「メモリー」などの項目は、全て画面下部のウィンドウにまとめられ、縦スクロールで表示していく形式になった。これまでの「For You」タブや「アルバム」タブが統合され、「ライブラリ」からスムーズに呼び出せるようになったといえる。SNSなどで多い縦スクロールを全面的に取り入れることで、操作体系を刷新した格好だ。

 Appleはひっそりとしか発表していなかったが、メッセージアプリがRCS(Rich Communication Services)に対応しているのも、iOS 18の新たな機能だ。どちらかといえば競合のGoogleが歓迎している印象が強かったが、晴れてiOSでも、AndroidとRCSでメッセージをやりとりすることが可能になっている。ただし、パブリックβ版では、これを利用することができなかった。

 これは、機能が実装されていないわけではなく、キャリア側の対応が必要になるためだろう。米国では、RCSをサポートするキャリアに接続すると、メッセージアプリの設定にRCSを有効にするボタンが表示されるというレポートが挙がっているが、筆者がauと楽天モバイルで試した限り、そのような設定は表示されなかった。

 AndroidのGoogleメッセージはIMSと呼ばれるメッセージを制御するシステムをGoogle側が運用しており、Googleが直接提供しているケースと、キャリアがそれを利用しているケースに分かれる。これに対し、iOSのメッセージアプリではキャリアがそれを担うようだ。RCSが標準化された際に想定されていたのはメッセージアプリのような対応方法だが、日本では3キャリアが「+メッセージ」を導入済み。iOSのメッセージアプリに対応するかは、不透明だ。この点がどうなるかは、キャリア側の発表を待つ必要がある。

【更新:2024年7月20日13時00分 Googleメッセージについて、一部加筆修正いたしました。】

 ホーム画面やコントロールセンターを大きく変えたiOS 18だが、細かなアップデートも多い。見た目だけでなく、使い勝手も変わる可能性が高く、正式版の登場にも期待が高まる。ここにApple Intelligenceが加われば、これまでとは別物のOSと感じられるようなものになるはずだ。とはいえ、日本がその恩恵にあずかれるのは、もう少し先の話。OSにAIを全面的に取り込むため、例年以上に不確定な要素が例年以上に多くなっているといえそうだ。

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