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IIJ×OPPO、Xiaomi、モトローラが語るスマホ戦術 おサイフケータイは「永遠の悩み」、IIJmioは「モバイル業界の宝石箱」

ITmedia Mobile 2024年7月26日 14時55分

 MVNO事業のIIJmioを展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)は7月20日、ファンミーティング「IIJmio meeting 35」を開催した。東京・飯田橋のIIJ本社でリアルイベントを行うのは4年ぶり(オンライン配信も同時に行われた)。

 今回は端末をテーマとしたプログラム構成で、OPPOを展開するオウガ・ジャパン プロダクト部 丹下氏、Xiaomi Japan プロダクトプランニング本部 安達氏、モトローラ・モビリティ・ジャパン合同会社 テクニカルサポートグループ 見潮氏が登壇。会場では端末メーカー9社がブースを出し、自社製品を紹介していた。

●細分化された端末レンジ ミドルとハイエンドの隙間を開拓

 プログラムは、IIJmioのアップデート情報の紹介からスタート。IIJが「電気通信事業法第27条の3」の規制対象から外れたことで可能になった優待プログラム「IIJmioご愛顧感謝特典」を開始したこと、MNPワンストップに対応したこと、大容量の30ギガ、40ギガ、50ギガプランを新設したことなどを紹介した。

 一方で、「IIJmioクーポンスイッチ(みおぽん)」アプリが9月30日をもって提供終了することも説明。今後は同様の機能を提供する「My IIJmio」アプリの利用を呼びかけた。

 次に、IIJ MVNO事業部でデバイス事業を担当する永野氏が、スマートフォン市場のトレンドとIIJmioで取り扱っている最新端末を紹介した。

 初期SIMフリー市場の頃と比較して、スマホの品質は向上し、長く使えるようになったことで買い換えサイクルが伸びている。それに伴って端末メーカーもOSアップデートのサポート期間を2年以上に伸ばしている。

 総務省が中心となって端末価格の割引が規制されたが、これによって「実質レンタルのようなプラン」が生まれてきた。その結果、これまで自由に買い換えていた人たちも、「2年から3年使うサイクルが生まれてくるのでは」と永野氏は予想している。

 今、1番大きな課題が円安。2年間で20円も円安になり、端末価格を高くする原因になっている。

 こうした状況の中、ユーザーの購買行動も変化しており、IIJでは大きく4タイプに分類している。自分が求めている価値と合致する場合に購入するユーザー、「面白そう、期待できそう」という期待感で購買行動を起こすユーザー、コスパを感じたら購入するユーザー、安全安心を重視するユーザーの4つだ。

 最も多いのはコスパを感じたら購入するユーザーで、「ビジネスの根幹となっているのは事実」。ただ、コスパの感じ方はこの2年間で大きく変わってきたと永野氏は感じているという。

 このような状況の中、かつてハイエンドフラグシップ、ミドル、エントリーと3区分されていたスマホのラインアップは細分化が進んでいるとIIJは捉えている。

 大きく変化したのが、ミドルのスタンダードとハイエンドフラグシップのスタンダードとの間の価格差と性能差。ハイエンドフラグシップのスタンダードは10万円を超え、ミドルのスタンダードの約2倍。ハイエンドはCPU性能も上がっており、性能差が開いていると永野氏は指摘した。

 できた隙間は「よりコスパを感じてもらえる商品を出せるエリア」と考えて、IIJmioはミドルハイのエリアを開拓している。例えば2023年、国内通信事業者としてはIIJ独占販売となった「motorola edge 40」がそれに当たる。「ありがたいことに大反響で大ヒットモデルになった。ユーザー自身が求めている性能と、手が届く範囲の価格でいいものが欲しいという需要を再確認できた」という。2024年もこのミドルハイのゾーンは端末の投入数を増やしているそうだ。

 一方、想定外だったというのが「型落ち」ゾーン。これは型落ち端末が継続販売されているという意味ではなく、1年型落ちのハイエンドCPUを搭載してコストダウンして安くしたハイエンド端末のこと。Xiaomiの「POCO F6 pro」などがそれに当たる。永野氏が「新しいトレントになるかもしれない」と注目しているゾーンだ。

 ハイエンドの中でも、「Xiaomi 14 Ultra」や「razr 40 ultra」は特化型端末として、普通のハイエンドとは別のプレミアム領域の端末として扱っている。

 ミドル以下では、「エントリーのスタンダードの性能がどんどん上がっている」。エントリー向けCPUの性能は悪くなく、おサイフケータイ対応端末が増えて、FeliCaの有無で分類できなくなってきた。「整理が難しくなっている」と語っていた。

 「エントリーのスタンダード端末は価格上がったと思われるかもしれないが、その分、性能が上がっているので価格も上がっていることを再認識してほしい」(永野氏)

 この分類にIIJmioが扱っている主な端末を配置していくと、下のスライドのようになる。ミドル・ハイのゾーンに投入数を増やしているが、ミドル・スタンダード、ミドル・ロー、エントリー・スタンダードも充実しており、2024年の端末は「豊作」だという。

 永野氏は「SIMフリー市場を盛り上げていくために、試行錯誤、創意工夫をしながらメーカーさんもわれわれIIJmioも頑張っております」と語っていた。

●おサイフケータイは本当に必須? メーカーにとっては「永遠の悩み」

 イベントの後半には、オウガ・ジャパン丹下氏、Xiaomi Japan安達氏、モトローラ・モビリティ・ジャパン見潮氏が登壇し、それぞれ自社の端末事業を簡単に紹介した後、永野氏も加えてトークセッションが行われた。トークセッションはIIJが質問を投げかけ、3氏が回答するという流れで行われた。

 3社ともグローバル展開するスマホメーカーだが、日本モデルで重視することは何かという質問に対し、Xiaomiの安達氏は「お客さまの心に刺さる特徴を持つ商品をグローバルの中から見つけて、日本に導入したい」と語った。

 「Xiaomiはグローバルシェア3位。めちゃくちゃ売っていて、日本のマーケット全体よりも売っています。スケールがあるので安く部品を調達し、生産できる。OPPOさん、モトローラさんもそうですが、スケールメリットがある。また、開発力が高く、いろいろなことに投資して新しいものを生み出すことができる。そのグローバルのよさを、できるだけ変えずに日本のお客さまにお届けしたい。

 POCOシリーズはその典型で、日本の認証は通っていますが、基本的にグローバル版そのまま。結果、評価されているそのままの内容でお届けできる。日本のお客さまに最適化させるというのは1つの軸ですが、グローバルの強みやスピード感、イノベーションを、そのままお届けすることを忘れずに、チームで議論しながらやっていきたいと思っています」(安達氏)

 オウガ・ジャパンの丹下氏は「右に同じ(笑)」と安達氏と同意見としながらも、「そのまま持ってくるのはちょっと難しいという意見もわれわれチームの中にはある」と回答。OPPOは早期から。防水防塵、おサイフケータイといった日本仕様にしっかり対応しているところも評価されている。

 「OPPOはグローバルシェア4位。グローバル全体で6億人以上のユーザーがいます。ですので、それぞれの国と地域のユーザーの声、当然、日本のお客さまの声も反映しながら、物作りをしていきたい」(丹下氏)

 モトローラの見潮氏も2氏と同意見。「FeliCaやIP68という日本市場で求められてる基本機能が入ってないという課題をクリアして、ようやくいろいろな端末に搭載されるようになった」状態であり、「日本の市場として、ユーザーが求めているデフォルトの機能をきっちり搭載していくことが今のスタンス」。その上で、「海外で進んでいる新しい機能をプロダクト企業としてキャッチアップして市場に届けたい」と語った。

 これらのコメントに対して、永野氏が「おサイフケータイは、やっぱりものすごく重要だと捉えていますか?」と質問。スマホを何台も運用している永野氏自身は、「乗り換えが面倒なので、おサイフケータイはスマートウォッチに搭載すればいい」との意見だ。

 見潮氏は「おサイフケータイは生活インフラであり重要」との回答。今後はスマホにマイナンバーカードを登録して使われる可能性もあり、サポートしておくという立場だ。

 丹下氏は「モデルによる」との意見。代替手段としてQRコード決済も普及している。「どの機種で、どういう使われ方しているのか、ユーザーさんの声を聞きながら対応していきたい」と述べた。

 安達氏は「永遠の悩み」と語った。おサイフケータイは20周年を迎え、インフラとして整っている。おサイフケータイ搭載の要望も多いという。ただ、「FeliCaを入れられないから、その商品を日本で出さないのはもったいなくないですか? とは思っている」とコメント。クレジットカードのタッチ決済が使えるようになり、他の選択肢も出てきている。スマホを複数台持って使い分けている人も多い。

 「FeliCaを必須にすると、日本導入のハードルがかなり上がるのは開発上、事実。グローバルで、あそこまでハードウェアを変更する非接触通信の規格はない。マストにしたらよくない、オープンに考えるべきというのが正直、本心です」(安達氏)

 安達氏は、いろいろな手法をユーザーと一緒に探っていきたいと語っていた。

●スマホのAIにはどうアプローチする? OPPOは「久しぶりにFindを持ってくる」

 2つ目の質問は「AIに対する取り組み」。各社とも積極的に取り組んではいるが、今後の話は新端末の話に直結するだけに、言えない部分も多かったようだ。

 安達氏は、カメラの画像処理で使われているAIを取り上げた。例えば、写真画質が非常に高く評価されているXiaomi 14 Ultraでも「画像処理に対して、めちゃくちゃAIを使っている」。1度シャッターを押すと、背後でRAW画像をいくつも撮影し、それを解析しながら最適な陰影やフォーカス具合を演算し、ポートレートモードの作品として出す。こうした作業をAISP(AIシグナルプロセッサ)が行っているという。なお、最近注目されている翻訳や文字起こし、要約などは「今後、日常になっていくと思う」とし、メーカーの差異化にはつながらないという考えを述べた。

 丹下氏は、Reno11 Aに画像処理に特化したAIが搭載され、「AI消しゴム」で活用されていることを紹介。今後については、GoogleやMicrosoft、QualcommやMediaTekと「強力に連携しながら作り上げている最中」として、多くを語らなかった。

 AIとは別に、丹下氏は「言えること」として「日本に今回、久しぶりにFindを持ってこようと思います」とサプライズ発言。会場はもちろん、永野氏、安達氏や見潮氏も驚いていた。

 なお、スマホに搭載してほしいAI機能について、会場の来場者からアイデアを募り、それについて3氏がコメントするシーンもあった。

●各メーカーの強みは? カラー名称はシンプルが一番?

 3問目は「各メーカーの強み」。

 Xiaomiの安達氏は、コスパの高さに加え、会社のスケールが大きいことから、結果としてエントリーからフラグシップまで幅広いラインアップを用意できること。スマホ以外のさまざまなプロダクトもそろえていることをアピールした。また、経営陣とユーザーとの距離が近いことも強みとして挙げた。

 「CEOの雷軍が、自ら3時間ぶっ続けのスピーチをしたり、いろいろなイベントでユーザーと関わったり、Xでコミュニケーションを取ったりというのは、企業文化として創業時からあるもの。日本でもファンミーティングやセミナーなど、ユーザーさんとのオンライン、オフラインでの交流、SNSを通じた双方向のコミュニケーションをすることで、生の情報をダイレクトに感じられるブランドにしようとしています。他のメーカーさんにない、われわれの強みになっているんじゃないかなと思います」(安達氏)

 OPPOの丹下氏は「自社一貫体制からくる品質の高さ」を挙げた。

 「薄軽、大容量バッテリー、4年間、長く使える性能をこれからも継続していこうと考えています。薄軽は変わらず、もっと大容量にすることも企画しています。今後も、お客さんに長く使っていただく端末を作っていくのがOPPOの特色であり、強みだと思っています」(丹下氏)

 モトローラの見潮氏は、世界各地に開発拠点があることで「非常にダイバーシティーに富んでいること」を強みとして挙げた。

 「開発拠点が、ヘッドクオーターのあるアメリカに加え、ブラジル、中国、インドにあり、議論していると、いろいろな視点が入ってきて、お互いに尊重しながら活発な議論ができ、端末開発にユーザーの意見を反映しやすい環境になっています。言いたいことを言える風通しのいい会社で、言ったことを取り入れてくれる。非常にいい環境で開発できていることが、モトローラが今伸びている原因になっていると思います」(見潮氏)

 グローバルで開発されたものが日本に入ってくるだけでなく、日本仕様のIP68がグローバルで導入され、インドなどでは非常に好評だという。「フェアに見るところがモトローラの強みじゃないか」と見潮氏は語っていた。

 永野氏はモトローラの端末のカラーに対するこだわりを紹介した。カラー名称が毎回異なり、商談ではそのこだわりを説明されるという。見潮氏によると、ときに「色が想像できないような名前があって、それはやめてくれとお願いする」そうだ。

 ユニークなカラー名称が採用されることについては、商品企画の経験が長い安達氏がカラー名称決定の裏側を語り、会場は笑いに包まれた。

 「ブラック、ホワイト、シルバー、レッドでいいんですよ。でも、チーム内で『次の後継はマットブラックだから別の名前がいいんじゃないか』となると、だんだん接頭語とか接尾語がついてきて名称が凝ったものになる。しばらくするとだんだん収集がつかなくなって、また普通のブラックに戻ったりする。僕の経験では3周ぐらいしてます。メーカーさんによって、そのサイクルがちょっと違っていて、モトローラさんは、今、こだわり期が来ているのかもしれないですね。まぁ、あんまり考えなくてもいいんじゃないかなって思いますよね(笑)」

●IIJmioは「モバイル業界の宝石箱」

 最後に、「端末メーカーから見たIIJmio」が語られた。

 安達氏は「こんなに品ぞろえがいい販路(チャネル)はないですよ。モバイル業界の宝石箱です。もしくは博物館、幕の内弁当」と表現。丹下氏は「やっぱり右に同じですね(笑)」としながら、IIJmioで取り扱う「Reno11 A」には67Wの急速充電器が付属することなどを挙げ、「ユーザーさんを獲得する魅力的な会社さん」と称賛した。見潮氏も再び「右に同じ」と語り、モトローラの製品を約8年、それもほぼ全ての機種を取り扱ってくれている状況に謝意を述べた。

 「モトローラのブランド認知があまり高くない中、IIJさんがユーザーさんに製品や価値を伝えてくれている。ユーザーさんから返ってきた意見もこちらに届けてくれる。非常に良い関係を築けていている。これからもユーザーさん含めWin-Win-Winの関係を築いていきたい」(見潮氏)

 これらのコメントに対し永野氏は、「SIMフリー市場を盛り上げていくための大事なパートナーさんたち」と返答。さらにユーザーに対しては以下のように呼びかけた。

 「一販路としては、宝石箱を続けるには、ファンの方々の力が非常に重要。ファンの皆さんがいてくださるから、メーカーさんにいろいろな端末を持ってきていただける。この宝石箱を続けられるように、みんなでちゃんと端末買いましょう!」

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