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ドコモの新料金「eximo ポイ活」を分析 お得だが“dカード必須”が障壁に、裾野拡大には課題も

ITmedia Mobile 2024年8月3日 6時5分

 NTTドコモは、「eximo ポイ活」を8月1日に開始した。ポイ活プランとしては、4月に導入した「ahamoポイ活」に続く形となる。ahamoポイ活は、ahamo大盛りに「ポイ活オプション」を付ける形だったのに対し、eximo ポイ活は1つの料金プランとして、通常のeximoとは別建てになった。データ容量による金額の変動がないなど、通常のeximoともやや料金体系が異なっている。

 ahamoポイ活と同様、終了日未定のキャンペーンとして当初は10%のポイント還元を行う。上限も5000ポイントと、ahamoポイ活よりも大盤振る舞いだ。一方で、還元の条件にはdカードが必須になっている点は、d払いなら残高での支払いも対象だったahamoポイ活との大きな違いといえる。ここからは、dカードの取扱高を伸ばしていきたいドコモの狙いが透けて見える。※料金は特記したもの以外、全て税込み。

●データ容量無制限でdカードに10%還元、料金充当すれば2728円に

 eximo ポイ活は、eximoと決済のポイント還元を連動させた料金プラン。通常のeximoは、1GB以下と1GB超3GB、3GB以上の3段階に料金が変動する段階制を採用しているのに対し、eximo ポイ活は無制限のみ。料金の変動がないという意味では、データ使用量の多いユーザーに向けたものといえる。各種割引適用前の料金は1万615円になる。2

 通常のeximoと同様、家族で3回線以上契約している場合には、「みんなドコモ割」で1100円の割引を受けられる。また、固定回線とのセット割である「ドコモ光/home 5Gセット割」も用意。こちらも、料金から1100円が割り引かれる。これに加えて、料金をdカードで支払うと、187円の「dカードお支払割」が適用される。3つの割引で、料金は8228円まで下がる。この建てつけはeximoと同じだ。

 eximoで3GBを超えたときの料金は、各種割引適用前で7315円。割引適用後は4928円に下がる。ポイント還元がある分、eximo ポイ活はeximoより3300円高くなる。ポイント還元はdカードやdカードで支払うd払いが対象で、還元率は終了時期未定のキャンペーンで10%になっている。還元の上限は毎月5000ポイントだ。

 簡単にまとめると、eximoより3300円多く支払う代わりに、5000ポイント得られる権利を手に入れるということになる。毎月5万円、dカードやd払いを利用するユーザーであれば、eximoより1700円分お得になるというわけだ。この仕組みは、2200円のオプションを契約し、最大4000ポイントの還元を受けられるahamoポイ活に近い。もともとeximoを契約しており、かつdカードでの支払いが毎月5万円程度あるユーザーにとって、お得度の高い料金プランといえそうだ。

 dポイントは、携帯電話料金の支払いに充当することも可能。ポイントは、税別の料金に適用される。5000ポイントなら、5500円の割引になるということだ。仮にeximo ポイ活で得たポイントを全て充当すると、料金は5500円引きの2728円にまで下がる。割引などの違いや経済圏連携もあるため単純には比較できないものの、この金額は楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」で20GBを超えたときの3278円より安い。

 同じポイ活プランだが、ahamoポイ活はd払いでの還元だったのに対し、eximo ポイ活はdカードに主軸が置かれている。d払いも還元の対象になっているが、これは支払いをdカードに設定した場合に限定される。この点は、銀行や信用金庫からチャージした残高での支払いで還元を受けられたahamoポイ活との違いだ。

 ただし、10%還元はあくまでキャンペーンという位置付けになっている点には注意が必要だ。時期は未定だが、終了後の還元率はdカードGOLDが5%、dカードが3%になり、その分だけ還元を受け切るためのハードルも上がる。その額はdカードGOLDで10万円。dカードだと16万6667円もの支払いが必要になる。3%や5%でもクレジットカードとしては十分高い還元率だが、eximo ポイ活を契約すると料金も3300円上がってしまうため、毎月の決済額によって契約するかどうかの判断は分かれることになりそうだ。

●還元対象になる決済は広い、狙いはdカードの取扱高拡大か

 ahamoポイ活と違い、eximo ポイ活での還元にdカードが必要になったのは、ユーザーの声を受けてのことだという。ドコモの コンシューマサービスカンパニー マーケティング戦略部 部長 山本明宏氏は、「(ahamoポイ活の)お客さまから、dカードをメインで利用しているので、カード決済にも対応してほしいという声が一定数あった」と明かす。

 実際、キャッシュレス決済でも割合が高いのはクレジットカード。「キャッシュレス決済は約4割まで拡大しているが、中でもクレジットカードは8割を超えるなど、いまだに需要が大きい」(同)のが現状だ。還元対象をd払いのようなコード決済に絞ってしまうより、キャッシュレス決済の実態に即した還元方法になっているといえる。

 例えば、毎月支払う電気、ガス、水道などの公共料金は、都度決済のための操作が必要ないクレジットカードの方が簡単。ネットショッピングも、コード決済は対応状況にばらつきがあり、必ずしも利用できるとは限らない。逆に、クレジットカードならほぼ確実に対応しているため、利用シーンは広い。「還元対象にdカードを加えることで、より一層ポイント獲得が加速させる」(同)ことができるというわだ。

 ドコモにとっては、dカードの取扱高が上がるのがメリットになる。山本氏も、「dカードをサブでお使いの方いる」としながら、「ポイ活プランで、支払いをこちらに寄せていただきたい」と語る。想定しているのは、複数のクレジットカードを併用しているケースで、「他社のカードでお支払いしていたものを、dカードにしていただければ、あらゆる場面でお得を感じていただける」(同)。

 dカードの契約者数は、2023年度で1775万に伸びている。このうちdカードGOLDは1065万で、ゴールドカード比率は業界トップクラスの6割にも上る。契約者数は2023年にカード発行枚数で3000万を超えた楽天カードに及ばないものの、大手3キャリアの中では最大規模。「ポイントや特典を多く得られるお得なカードという認知が過半数」(同)といい、ユーザーからの支持も厚い。

 ドコモは、2024年10月にdポイントクラブも改定し、“dカードシフト”を強めていく。10月3日から、ランクによるポイント倍率アップ特典が一部下がる一方で、d払いの決済につくポイントが上乗せされる「d払い特典」を新設する。このd払い特典も、dカードやdカードを設定した携帯料金合算払いのみが対象。残高での還元は受けられない。料金プランやポイントプログラムとdカードをより密接にひも付けることで、取扱高を上げていきたい狙いが透けて見える。

●キャリアごとに異なるポイ活プラン、“dカード推し”は吉と出るか凶と出るか

 こうした点は、同じ決済連動の料金プランでも、コード決済サービスのPayPayと連動しているソフトバンクの「ペイトク」と対照的だ。ペイトクは、残高やポイントでの支払いも還元の対象になる一方で、PayPayカードでの直接決済には非対応。他社をリードするコード決済のPayPayに還元を寄せることで、利用を促進している。

 また、KDDIの「auマネ活プラン」は、単純な決済に応じたポイント還元ではなく、auじぶん銀行やau PAYカードをひも付け、毎月800円分のau PAY残高を還元する仕組みだ。これに加え、au PAYゴールドカードでのポイント還元率やauじぶん銀行の金利が上がる特典も用意されている。傘下の金融サービスとの相乗効果を狙った料金プランといっていいだろう。

 対するドコモは、金融サービスは拡大の途上で、コード決済以上にdカードが強い。その意味では、各社とも金融・決済分野での得意分野を生かし、料金プランと連携させてきたと言えそうだ。一方で、気軽に利用できるコード決済とは違い、クレジットカードは契約のハードルも上がるため、eximo ポイ活がどこまで伸びるかは未知数だ。これは数字にも表れている。先に挙げたように、dカードは2023年度で1775万契約まで伸びている一方で、d払いのユーザー数である5199万と比べるとユーザー数の規模は小さい。

 また、キャンペーンが終了すると、レギュラーのdカードは3%まで還元率が下がってしまうため、eximo ポイ活を選択するメリットが薄くなる。結果として、事実上の対象ユーザーになるのは1065万のdカードGOLD契約者に絞られる。その意味では、d払いの残高払いも対象になっていたahamoポイ活の方が受け皿は広い。dカードGOLDを持ち、eximoに契約していたユーザーは飛びつく可能性は高い反面、その裾野はやや狭くなる恐れもある。

 ドコモは、若年層の比率が高いahamoはコード決済、逆に年齢層の高いeximoはdカードといった形ですみ分けを狙っているようだ。山本氏も、ahamoポイ活がd払いを対象にしていた理由について、「若者はコード決済との親和性が高い」と語っていた。dカードで還元を受けらえるeximo ポイ活とは、「役割をすみ分けている」(同)というわけだ。

 とはいえ、2つのポイ活プランでポイント還元の条件が微妙に異なっているのは、少々複雑に見える。d払いを対象にするなら、還元条件はahamoポイ活とそろえつつ、dカードでの直接決済だけをeximo ポイ活の追加特典にした方が、よりシンプルになったのではないか。dカードの取扱高を伸ばしたいのは理解できるが、ドコモ側の都合が前面に出すぎている印象も受けた。

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