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「iPhone 15 Pro」「Pixel 8 Pro」のカメラを北欧旅で比較 総合点の高いiPhoneか、とがった機能が光るPixelか

ITmedia Mobile 2024年8月11日 13時0分

 スマートフォン市場において、AppleのiPhoneとGoogleのPixelは特異な存在です。両社ともソフトウェア開発を主軸とする企業でありながら、自社設計のプロセッサを搭載した独自のハードウェアを展開している点で共通しています。

 この類似性から、両者の最新フラグシップモデルであるiPhone 15 ProとPixel 8 Proはしばしば比較の対象となります。その中でも特に注目を集めるのがカメラ性能。スマートフォンカメラの進化は目覚ましく、両社ともAIを駆使した画像処理技術を競い合っています。

 これら2機種を持って北欧に出掛ける機会がありましたので、今回はどちらの方が旅カメラとして使いやすいか、比較検証してみました。

・iPhone 13 ProとPixel 6 Pro、どちらが“旅カメラ”に向いている? 宮古島で撮影してきた

●どんなシーンでも常に持ち運んでいることがスマホの強み

 iPhoneとPixel共通してよかったところは、手軽に写真を撮れるところです。軽量で多機能なスマホはカメラと違い、ホテルから出てちょっとした散歩をするときにも持ち出します。それゆえに、思いがけない出会いに対してチャンスを逃がさず撮影できます。

 特にAndroidの電源キーダブルクリックによるカメラ起動は優秀です。iPhoneも15 Proからモーションボタン長押しによるカメラ起動ができるようになりましたが、モーションボタンの位置の都合上、片手でクイックにカメラを起動する点ではPixelの方が使いやすいです。

 自分の場合は海外で利用可能なSIMやApple Payが入っていた都合上、iPhoneを持ち出すことが多かったですが、どちらも画角・画質・レスポンスなどの面では信頼できる機材ですので、おおむねどんなシーンでも対応可能です。

 また、アウトドアな環境でも気兼ねなく利用できるのもスマホの優位性です。ほとんどの一眼カメラはボタン、ズーム機構、レンズ交換機能ゆえに雨が降ると取り出しにくい一方で、スマホはIP規格の防水機能がついていることが多く、どんな環境でも比較的安心して使えます。

 どんなにいい機材を持っていても、その場で使えなければ意味がありません。そういった意味で、常に手元から取り出せるスマホは最強です。

●自然な色味が魅力的なiPhone

 Pixelと比較してiPhoneの方がいいといえる一番のポイントは、オートホワイトバランス、つまり色味です。iPhoneは超広角、広角、望遠3つの画角ともに自然な色味であり、カメラによって色味が変わることもありません。特に北欧特有のビビッド目なパステルカラーはiPhoneの方が得意に感じました。

 デジタルカメラが苦手とする暗いところの赤色や、ベタ塗り高彩度になりがちな夕景をそのまま~現実より少し強調したくらいに仕上げ、無編集でも目を引くように仕上げてくれるところはさすがiPhoneといったところ。写真初心者にとって、とてもいいチューニングがなされている印象です。

 暗い室内や、性能が比較的低い超広角カメラでも色があせることなく安定したカラーで描写してくれるのもよいです。どんなシーンでも期待通りのアウトプットを出してくれるため、iPhone1台でも安心して出掛けることができました。

●幅広く使えるポートレートモード

 ポートレートが使いやすいのもiPhoneがよかった理由です。Pixelの場合、ポートレートモードにするとデジタルズームをした1.5倍と2倍のどちらかの画角しか選べない一方で、iPhoneは1倍、2倍、3倍の3つの画角から選択可能。人に限らず、どんなシーンでも前ボケ後ろボケともに自然な仕上がりで撮影してくれました。

 近頃、1型センサーを搭載して広角で何もせずともボケやすいスマホが出てきていますが、ポートレートで撮影したものはそれ以上にボケ量が大きくなります。そういった意味でも、一眼カメラの広角単焦点のような使い心地が得られるのはiPhoneの方でした。

●パノラマもiPhoneの方が使いやすくて高解像度

 個人的に意外だったのがパノラマ機能。画像をつなぎ合わせる都合上、AIに強いPixelの方がいいイメージでしたが、実際は逆でした。

 ほぼ同じ画角で撮影したパノラマ写真を切り出したところ、iPhoneの方が断然解像度が高い結果に。さらに、Pixelには1つしかモードがないのに対して、iPhoneは3種類のカメラどれでもパノラマが撮れるため、自由度という点でもiPhoneの方が断然いい結果になりました。

 余談ですが、iPhoneは海外に行けば自動的にシャッター音がなくなるため、撮影体験として非常に快適でした。Pixelは日本モデルだと海外ローミングに接続しても自動的にシャッター音が消えることがなく、美術館やレストランなど静かなシーンで使うのはiPhoneの方が断然よかったです。

●望遠の圧縮効果が魅力のPixel

 一方で、PixelがiPhoneよりよかった点は望遠領域です。Pixel 8 Proの望遠カメラは48MPセンサーを搭載した5倍ペリスコープ望遠となっており、iPhone 15 Proの12MP+3倍望遠よりも拡大して撮影可能です(Pro Maxは5倍望遠だが、センサーが12MPと画素数が低い)。

 それゆえに、北欧のかわいらしい町並みの一部を切り取るようなスナップ写真を撮る場合は、Pixelの望遠の方が役立つ場面が多かったです。

 特にiPhoneよりもよかったのが夜景×望遠の性能です。iPhoneだとノイジーとなってしまうようなシーンでもPixelはピクセルビニングを活用しているのか、高解像度でパキッとした写りとなります。

 どのようなシーンでも望遠カメラを活用した切り取る形でのスナップは、Pixelの方が高画質で撮れました。

●超広角マクロが美しい

 PixelはPixel 8 Proから超広角カメラも48MPセンサーとなったため、超広角カメラを使ったマクロ機能も実用的になりつつあります。

 iPhoneや従来のPixelは超広角カメラのセンサーが12MPしかなかったため、近づきすぎると影が落ちてしまい、影が落ちない位置からデジタルズームすると画質が落ちてしまうというジレンマがありました。一方で、Pixelは超広角も広角カメラ同様に48MPと高画素なため(現時点で8 Proのみ!)、デジタルズームしても画質が落ちることがなく、マクロが使いやすいです。

 欲をいえば望遠領域でマクロが利用したいですが、それは双方非対応。あくまでiPhoneとPixelで比較するのであれば、高画素のPixelの方が比較的マクロが美しく撮れると思います。

●長時間露光/アクションパンモードでクリエイティブな写真撮影体験が可能

 Pixelには長時間露光や流し撮りができる専用のモードが用意されています。

 ただ、意識して利用しようと思うシーンが少なく、それゆえに利用機会は少ないものの、こういった機能が用意されているからこそ創意工夫を働かせて撮影できるのはPixelのいいところでした。

 例えば、決まった動きをする鉄道は乗るときは長時間露光・撮るときはアクションパンで撮影できます。動画を撮ってしまうのもいいですが、1枚の写真で動きを表現するのもまた楽しいです。

 iPhoneでも夜景モードやLive Photosなどを使えば似たような写真は撮れますが、Pixelの方がより一眼カメラに近い使い心地と仕上がりになります。個人的には一眼カメラに流し撮り専用モードがあるのと同じで、Pixelの方が手になじみやすい感覚がありました。

●消しゴムマジックなどの多彩なAI機能で楽しく撮影できる

 AIを活用したPixelの代表機能である消しゴムマジックはなかなか実用的です。写真に写り込んだ不要なオブジェクトをAIが自動で検出し、ワンタップで自動的に消去できる機能ですが、撮影時には気付かなかったけれど見返してみたら微妙だった写真もAIがきれいに仕上げてくれます。特に一度きりになりうるような海外旅行で大活躍でした。

 消しゴムマジックは写っていない部分を推論している形になるため、もちろん多用は難しいです。ほんの一部だけ、明確に目立つところだけを修正するといった使い方がオススメです。

 他にも生成AIを活用した編集マジックもなかなか面白いです。従来の消しゴムマジックではいらない要素を削除したりなじませたりすることしかできませんでしたが、編集マジックでは移動や拡大縮小、さらには生成AIで空を変えることも可能です。

 とはいえ、消しゴムマジックは2024年5月にほぼ全てのGoogle Photosユーザーに開放されており、Pixel以外でも利用できるようになっております。一方で編集マジックはPixelとGoogle Oneユーザーは無制限に、それ以外の端末では月10枚まで保存可能と制限があります。今後もこういったAI機能はPixelの方が優先して利用できるはずですので、最先端のAIにいち早く触れてみたいという方にはPixelがオススメです。

 余談ではありますが、カメラ以外でPixelがよかった機能は温度測定ができること。Pixel 8 Proから搭載された温度センサーで温度が測れる機能ですが、ベーカリーで焼き立てのパンを特定したり、旅費節約のために自炊するときに油温を測ったりと何度か利用しました。

 音楽が分かる機能も役立ちました。Pixelは自動で環境音を取得し流れていた音楽を記録する機能があり、気に入った音楽を特定できます。

●総合点の高いiPhone、とがった機能のPixel

 旅を通じて感じたのがiPhoneの平均点の高さと、それと相対するPixelのツボに刺さるようなとがった機能たちでした。

 スマホカメラのよさはさまざまな機能を備えていつつ、ポケットに入れて持ち歩けることです。であれば、どんなシーンでも任せられるようなスマホがよりよいため、個人的にはiPhoneの方が好きだと感じました。

 ただ、決してPixelがダメというわけではなく、どちらも非常に優秀で満足できる写真を撮ることは可能ですし、Pixelの方が優れているシーンも多いです。iPhone 15 ProとPixel 8 Proの2機種の場合、カメラ性能で、というよりかはその写真をどうやって編集し誰に届けるかなども踏まえて、OS・アプリなどその他機能も含めて自分に合う方を選ぶのがいいと思います。

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