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楽天モバイルの赤字幅が縮小、プラチナバンドは前倒しでエリア化 三木谷氏は「若年層の利用増」もアピール

ITmedia Mobile 2024年8月10日 11時15分

 楽天グループが、2024年12月期第2四半期の連結決算を発表した。売上高を示す売上収益は前年同期比8.0%増の1兆509億800万円、営業損失は516億300万円の赤字だった。第2四半期単体では過去最高の売上収益となる5373億円、Non-GAAP営業利益は276億円改善した118億円の赤字で、通期黒字化に向けて着実な進捗(しんちょく)だとしている。

 同社の三木谷浩史会長兼社長は、四半期ベースで連結EBITDAが668億円の黒字、金融を除いたEBITDAも99億円の黒字になり、「財務状況も飛躍的に改善」(三木谷氏)している。

 特に楽天モバイル事業が順調で、マーケティング費用を除いたキャッシュフローで黒字化を達成。三木谷氏は「2020年に始まった挑戦的かつエキサイティングな楽天モバイルにおける楽天グループへの寄与は、キャッシュフロー上はポジティブになっている」とアピールする。

●楽天モバイルは770万回線に、収益も改善

 連結売上収益では、インターネットサービスが同3.1%増の3039億円、フィンテックセグメントが同12.0%増の2027億円、モバイルセグメントが同18.6%増の950億円となり、過去最高を達成。

 連結Non-GAAP営業利益も、インターネットサービスセグメントが同30.3%増の189億円、フィンテックセグメントが同28.1%増の423億円と好調で、モバイルセグメントも赤字は継続しながら218億円改善のマイナス606億円となった。結果として、連結EBITDAは668億円の黒字を達成。非金融事業だけでも99億円の黒字だった。

 懸案のモバイルセグメントは、全契約回線数が770万回線に到達。法人向けBCP回線を除くMVNOとMVNEでは726万回線となった。契約回線数が増加したことで収益性が改善。楽天モバイル単体の売上収益は同29.9%増の680億円、Non-GAAP営業損失は194億円改善の600億円の赤字となった。

 回線数の増加に加えて解約率が低下。「楽天ポイントを狙って短期間で解約するユーザーはいるが、それを除いた真水の解約率」(三木谷氏)では1.04%まで改善。MNOのARPUは2031円まで上昇。結果としてMNOサービスの売上は同42.2%増の401億4000万円となった。

 純増数は法人向けの拡大が奏功した他、紹介キャンペーンや楽天エコシステムからの契約が増加。他キャリアからの流入であるMNPも、2024年1月にプラスに転じて拡大。こうしたMNPユーザーは「メインで使ってくれるのでARPUの上昇にも寄与している」と三木谷氏は話す。

 楽天モバイルの矢澤社長は「SIM単体はMNPしやすいので契約は増えているが、端末バンドルもかなりのボリュームがあり好調に推移している」と話しており、SIM単体契約以外も伸びていると説明した

●プラチナバンドは前倒しで積極的に設置している

 さらなる利用者の拡大、解約率低下に向けて通信品質改善も強化。三木谷氏は「つながらないという意見はほとんどなくなりつつある」という微妙な表現をしつつ、「さらに最強にしていく」と強調する。

 6月27日には700MHz帯のプラチナバンドの商用サービスを開始。都市部から順次エリアを拡大することで、狭い路地や屋内の「ディープインドア」までをエリアにするよう拡大を積極的に実施していくと三木谷氏。

 KDDIの高橋誠社長やソフトバンクの宮川潤一社長は、楽天モバイルのプラチナバンドのエリア展開のスピードに疑問の声を挙げるが、三木谷氏は「サービス開始は1年半以上の大幅の前倒し。1.7GHz帯の頃も当初計画から3年以上前倒ししてエリア構築してきた。それと同じことをプラチナバンドでも行っていきたい」と説明。積極的なプラチナバンドのエリア構築をアピールする。

 通信品質の改善では、5G基地局のソフトウェアアップグレードも順次行い、より広いエリアカバレッジなどを実現するMassive MIMOを活用。「他社に比べてMassive MIMO比率が大きい」(同)という。

 さらに衛星通信との干渉緩和によって、各社基地局の出力を上げられるようになったが、この出力増とMassive MIMOの効果をあわせて、1つのセルあたりの5Gトラフィックは東京都内で2.3倍に、5Gにつながるユニークユーザー数は1.5倍になり、それぞれ効果が出ているようだ。

 5Gエリアの拡大もあわせてデータ利用量がさらに増加。2024年7月には1日あたり0.90GBとなったため、平均で1カ月30GB程度の利用量になる見込み。ARPUの増加につながるため、さらなる収益改善が期待される。

●30~34歳の10%以上が使う楽天モバイル

 「初めて公開するデータ」として紹介されたのが、年齢層ごとの楽天モバイル利用者の割合。特に30~34歳の10.2%が楽天モバイルを利用。23~29歳だと8.6%だが、半年で1.5%の上昇となり、「年内にはこの年代も10%を超えてくる。インターネットヘビーユーザー(の年代)はどんどん楽天モバイルに入っている。さらにショッピングや楽天カードを使ってもらえる」と三木谷氏は説明した。

 楽天モバイル単体のARPUは2031円だが、ユーザーが楽天市場、楽天カード、楽天証券などを使うことによるグループへの貢献を含めると3030円になると三木谷氏。2022年第1四半期には1546円だったことから倍近くにまで拡大。

 楽天モバイル契約者は、利用期間が長くなるにつれ楽天グループのサービスの利用が増加する傾向にあり、2年後には平均3.21個の楽天サービスを利用。楽天モバイルユーザーと非ユーザーを比べると、楽天市場の流通総額49.7%、楽天トラベルは12.0%、楽天カードは25.9%、それぞれ利用額が大きくなるという。

 こうしたシナジー効果によるグループ利益の押し上げ効果は順調に拡大しており、2024年第2四半期は初めて100億円を突破。三木谷氏は、この押し上げ効果が「今後1000億円、1500億円、2000億円と拡大していく」と見込む。

 楽天モバイルについて三木谷氏は、データ通信3GB未満で1078円(税込み、以下同)、無制限でも3278円という料金、Rakuten Linkによる国内通話無料、海外ローミング2GBまで無料といった料金プランについて、「他社がなかなかマネしづらい、本筋をいっているというか、とても魅力的なプラン」だとアピールする。

●楽天ペイメントも黒字化

 インターネットサービスセグメントは、ポイントプログラムSPUや0/5(0と5のつく日の特典)改定、全国旅行支援がなかったといった影響は合ったものの、売上収益は同3.1%増の3039億円、Non-GAAP営業利益は同30.3%増の189億円となった。

 SPUの改定などについては「より優良なお客さまに手厚くするという施策」(同)ということで国内ECの売上が成長し、収益性は改善したという。

 フィンテックセグメントは、売上収益は同12.0%増の2027億円、Non-GAAP営業収益は同28.1%増の423億円となり、初めて売上2000億円を達成した。

 楽天銀行、楽天証券、楽天カードが順調に拡大。さらに楽天ペイメントが取扱高の拡大で増収増益となり、売上収益は同23.5%増の225億円、Non-GAAP営業収益は39億円の改善となり、12億円の黒字となった。「なかなか競争の激しい業界だが、他社がなかなか黒字化できない中、楽天ペイメントは既に黒字化した」と三木谷氏。

●南海トラフ地震に伴い対策本部を立ち上げ

 なお、政府は8日に「南海トラフ地震臨時情報」を発表しており、これに対応して楽天モバイルは対策本部を立ち上げたという。楽天モバイルの矢澤俊介社長は「しばらく様子見だが、南海トラフ地震を想定して機材の準備をしている」と説明。

 地震発生時は、基地局の出力を制御してバッテリーの延命を図ることがソフトウェアでコントロールできる他、バッテリー、発電機、可搬型基地局を該当エリアに移動し始めているなど、準備を進めているという。

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