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「Xperia 1 VI」を1カ月使って感じた“変化と進化” これぞ唯一無二のエンタメマシンだ

ITmedia Mobile 2024年8月12日 10時0分

 6月に発売され、話題を集めるソニーの新型スマートフォン「Xperia 1 VI」は、画面性能やアスペクト比の変更をはじめとした従来モデルから“大きな変化”があった。今回は筆者が発売日に購入してからおおむね1カ月利用し、感じたことをまとめていく。

●画面輝度の向上とバッテリー持ちが大きく進化 マクロ機能を備えたカメラが新しい

 Xperia 1 VIを利用して、最も“乗り換えた恩恵”を受けている点が、画面輝度(明るさ)の向上とバッテリー持ちの向上だ。

 画面輝度はメーカーも従来モデルのXperia 1 Vと比較して、1.5倍の明るさになったと公称している。これは見比べてみると、従来よりも明確に画面が明るくなったことを実感できた。特に晴天下の視認性は「サンライトビジョン」という輝度ブースト機能もあって、従来機種よりも大きく向上したように感じた。

 そして、バッテリーの持ちも大きく向上している。メーカー公称では従来の2倍としているが、実際に使ってみると数値的には近い。これは画面解像度の変更や可変リフレッシュレート制御といったディスプレイの変化、最新プロセッサの採用、各種最適化が行われていることが理由だ。

 試しに画面輝度を最大にしてYouTubeを1時間視聴してみたところ、Xperia 1 VIは5%の消費に対して、Xperia 1 Vでは9%消費した。同じバッテリー容量の端末でもXperia 1 VIの方がバッテリーの減りが少ない。

 ここまで大きな差となれば、多くの方がバッテリー持ちの進化を実感できるはず。バッテリーについては関連記事の方もチェックしてほしい。

 大きく進化した点にカメラ性能がある。メインカメラは、Xperia 5 V同様にインセンサーズームに対応した。これによって2倍望遠での画質が向上した。

 望遠カメラは望遠端が170mm相当と伸びたため、最大ズーム倍率は以前よりも大きくなった。望遠カメラは近年のXperiaらしく、光学式の可変ズーム機構を採用している。あえて光学式を採用している理由は、動画撮影時のシームレスなズームの体現。本体の薄型化によって、高画素センサーが採用できない分の穴埋めだと考える。

 ソフトウェア面は高速連写や瞳AFなどの機能に加え、Xperia 1 VIでは「姿勢推定技術」を新たに搭載した。被写体を骨格レベルで認識、追従する機能で、一度狙った被写体を遮るものが多いシーンでも追い続けることができる。この他にも全体的にレンズ構成やコーティングを見直し、よりくっきりとした写真が撮影できるように仕上がった。

 今作でイチオシのマクロ撮影機能は非常に面白い。Xperia 1 VIのテレマクロは最短撮影距離が40mmと、現在市場に出ているスマートフォンの中でもトップレベルで「寄れる」。細かい部分を撮影できることはもちろん、場面によっては拡大鏡代わりに利用できる。

●懸念していた「変化」は使っていくとそこまで気にならない

 画面比率をはじめとしたXperia 1 VIの“変化”は、同時に「今までのXperiaらしさを失う」という意見がXperia を長期間愛用しているユーザーを中心に多かった。これらの懸念点について、実際に1カ月使ってみて印象は変化しただろうか。

 筆者のような今までのXperia 1ユーザーの視点から見ていくと、Xperia 1 VIは画面アスペクト比の変更が実感できる大きな変化だ。当初このサイズ感に筆者もある種の戸惑いを抱いたが、実際に1カ月使ってみると、この横幅は慣れもあって気にならなくなる。

 Xperia 1 Vをはじめとした21:9比率の機種を改めて持ってみると「細い」という感想を抱くものの、Xperia 1 VIに対して「横幅が広くて使いにくい」といった場面は感じられなかった。

 Xperia 1 VIの画面解像度は従来の4KからフルHD+になった。比較してみるとXperia 1 VIの方がドット感は伺えるものの、実使用においてこの差を感じる場面は少なかった。

 むしろ、画面解像度の変更によって画面のピーク輝度向上、LTPO(可変リフレッシュレート)に対応できた。これによって、前述した屋外での視認性向上やバッテリー持ちの向上を果たした。画面解像度の変更によって失ったものよりも、普通にスマートフォンを使う上ではプラスとなる場面の方が多いことを実感した。

 筆者も「スマホVR」といった高精細な画面が求められる場面以外で、解像度変更によるマイナスな要素を感じなかった。実用面を考慮したプラスの意味での変化だ。

 ソフトウェアの大きな変化として、カメラアプリの操作UIが変更された。これに合わせ、従来までの「Photography Pro」「Videography Pro」「Cinema Pro」の3つに分かれていたカメラアプリが1つに統合された。

 従来のアプリ群は撮影用途ごとにアプリを選ぶという使い方では理にかなっていた。一方で、多くのユーザーからすると「動画を撮るのにどのアプリが適切か分からない」といった意見が多かった事も事実だ。

 新アプリは使いやすくまとまっていると感じた。従来のアプリは「専用機の操作系」をスマホに落とし込んだ結果、操作項目の並びやキーワードが専門的すぎて一般ユーザーからは「分かりにくい」と評価されていた。

 今作では大衆向けのXperia 10シリーズのカメラアプリに近づけ、従来機のユーザー向けにしっかり追い込めるプロモードを残している。多くの方にとって、一般的なスマートフォンと同様“使いやすいカメラアプリ”に仕上がった。

 新アプリにて利用できなくなった要素の多くは、Cinema Proの機能やフィルター類だ。注目を集めたクリエイティブルックやS-CinetoneフィルターをはじめとしたPhotography ProやVideography Proに備わってきた機能の多くは今作でも利用できる。

●変化と進化の中でも「ソニーらしさ」は健在 実際に使って体感できた「唯一無二のスマートフォン」

 今回、フルモデルチェンジしたXperia 1 VIを改めて1カ月利用してみて、多くの変化がありながらも違和感なく利用できていることに気付いた。その理由を考えてみると、使っていくうちの慣れはもちろん、Xperia 1 VIが変化こそあれど「ソニーらしさ」と呼べる要素をしっかり残している点に行き着いた。

 例えば、ディスプレイの解像度を近年のハイエンド機では主流のWQHD+や1.5Kと呼ばれるものではなく、あえてフルHD+とした理由は「コンテンツ製作者に合わせるため」というこだわりがある。同社のテレビ「ブラビア」を基準とした画面チューニングも、ブラビアの画質チームと共同で作り上げた。画質調整は“ブラビアの実機と見比べる”といった手法も用いられた。

 進化したとアピールするフルレンジステレオスピーカーは、ユニットを一新してさらなる高音質化を果たした。従来よりも低域がしっかり出るようになったので、音に厚みが増している。Xperiaの場合は他社の機種と比較しても端末の共振がかなり少なく「音量が出るだけ」のスマートフォンとは異なる高音質な仕上がりとなっている。

 イヤフォンジャックに関しても音をよくするため、細やかながら進化を遂げた。例えば、イヤフォンのジャックと基板の間に使われているフラットケーブルの導体幅を太くし、抵抗値を下げるというアナログ的な手法で音質向上を狙うこだわりも感じられる。

 ソフトウェアも「DSEE Ultimate」「360 Upmix」といった独自の音響効果も備えている。「過去最高音質のXperia」といううたい文句も使ってみると納得する。

 ゲーミング機能も「ゲームを最高画質で楽しむ」だけでなく、ライブ配信をはじめとした第三者への発信要素、YouTube向けの動画コンテンツ制作者向け要素も多く兼ね備えている。決定的な場面を残せる「RTレコード」をはじめ、スマホ単独での音声ミキサー、スクリーンショットの連写機能、外部キャプチャーボードへの出力機能まで備えるなど、他社のゲームモードには備えない機能が充実している。

 この他にもXperiaをカメラの外付けディスプレイとして利用できる「外部モニターモード」、以前より支持される「サイドセンス」というショートカットも引き続き利用できる。ハードウェア的な特徴では、シャッターキーの存在はもちろん、今となっては珍しい、3.5mmイヤフォンジャックとmicroSDスロットの両方が利用できるハイエンドスマホであることも見逃せない。

 これらの「ソニーらしさ」というこだわりが詰め込まれたXperia 1 VIは、映像や音楽の視聴、ゲームなども高いレベルで楽しめる。コンテンツの消費だけでなく、制作といったクリエイティブな需要にも応えてくれる。

 今のXperiaはスマートフォンだけでなく、カメラやテレビ、ゲーム機といったハードに加えて、さまざまな映像、音楽、ゲームをはじめとしたコンテンツまで作っているソニーだからこそ作ることのできる「究極のエンタメマシン」だ。ここまで行くと唯一無二のスマートフォンという言葉が適切かもしれない。

 このエンタメマシンという要素が残されていることが、大きな変化があっても違和感なく利用できている理由だと考える。形は変わっても中身の本質はしっかりと受け継がれている。

 まとめになるが、Xperia 1 VIでは画面アスペクト比や画面解像度の変更、プロ仕様のカメラアプリが廃されたことで「唯一無二」な点が失われたことは惜しい部分。以前からのファン目線では気になるところである。

 今作の変更はそれらのマイナス要素以上に、今回の変更で得たものがプラスに働いていると考える。そして、ハードウェア、ソフトウェア面でも以前から続く「Xperiaらしさ」をしっかりと継承している。

 従来の不安要素だったソフトウェアアップデート期間も4年間に延長することが明言されたため、より長きにわたって安心して利用できるようになった。Android OSのアップデートも3回のメジャーアップデートが行われる予定。

 あらゆる部分が進化したXperia 1 VIは、初めてXperiaを検討している方にも、今までXperiaを使ってきた長期ユーザーもきっと満足できる仕上がりだ。

●著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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