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「遮光100%日傘」は夏のスマホ冷却にも効果あり? 炎天下で徹底テストした

ITmedia Mobile 2024年8月20日 16時43分

 夏のスマホ利用で気になるのが「熱によるスマホの停止」「画面の見づらさ」「バッテリーが急激に減る現象」の3点だろう。そこで特に効果的なアイテムが、ここ2年で男性向け市場が急激に広がっている「遮光100%のビジネス日傘」だ。

 特に2024年は熱中症対策もあり、通勤時や屋外レジャー、イベントの行列など男性の日傘利用が一般的になりつつある。筆者も2023年から使用しているのだが、夏の日傘+スマホ利用が非常に快適になるにもかかわらず、触れられることが少ない。そこでこの記事では、実験を通じて、この遮光100%日傘とスマホの相性のよさについて深く紹介していこう。

●2022年ごろ日傘市場が激変! SNSで「遮光100%日傘」が人気に

 現在、街中で見る日傘は裏地の黒い「遮光100%日傘」がほとんどになり、以前の薄い日焼け止め日傘は見かけなくなりつつある。この発端は、初期のコロナ禍を経て外出が増え始めた2022年に、SNSの口コミで熱中症や雨対策にも適した裏地が黒色の「遮光100%・遮熱・UVカットの晴雨兼用」がヒットしたことにある。

 この流れで、男性からも熱中症防止アイテムとして遮光100%の日傘が注目され始めた。結果、2023年には各社がメンズ向け、ビジネス向けデザインの「遮光100%のビジネス日傘」も広く展開。ビジネスグッズや雑貨店の人気商品となったというわけだ。2023年は「日傘男子」「メンズ日傘」といった言葉も使われたが、2024年は熱中症対策のアイテムとして自然と浸透しつつある。

 スマホの利用についても、遮光100%の日傘があれば屋外の日差しを防ぐことで温度上昇の抑制や、光の映り込みによる見づらさの防止、消費電力の削減などさまざまな利点がある。

●「遮光100%日傘」でスマホの本体温度を約6度ダウン

 まずは「遮光100%、遮熱、UVカット」をうたう日傘の効果を検証しよう。下の写真は、一般的な折りたたみ傘と、遮光100%の日傘を屋内の照明に向けて傘を広げ、光の透過を比較したものだ。遮光100%だとほぼ光を通さないことが分かる。

 次に、最大気温34.2度の日の正午12時前後に、人間が屋外で5分立った状態の温度変化を計測した。結果、日傘なしだと頭頂部の髪の毛を中心に47.6度、日傘があれば頭頂部は37.0度と約10度分の遮熱を確認できた。

・日傘なし:47.6度

・日傘あり:37.0度

 正午12時前後にテストをしたので頭頂部ばかりが熱されてしまったが、最高気温35度を超える日や、朝や昼などより全身に直射日光を浴びる時間帯だとさらなる差が出るだろう。言うまでもなく、近年の夏の屋外活動で日傘や帽子といったアイテムは必携だ。

 次にスマホだ。こちらは昼14時台に、屋外の木製すのこにiPhone 15 Proを5分間載せた状態で温度変化を計測した。片方は直射日光に当たっている状態、もう片方は日傘で影を作った状態で計測した。結果、全体として約6度の変化を確認できた。

・日傘なし:46.0度

・日傘あり:38.7度

 日傘ありの37.8度は、普段屋内でアプリを利用していても達する温度だ。だが、日傘なしの45.0度は高負荷のアプリの利用中よりも熱く、これ以上の温度になるとiPhone自体が本体保護のために自動停止してしまう。夏の日中にスマホを利用する場合は、日傘を利用するか、建物の中や日陰に入って温度上昇を抑えるべきだろう。日差しを遮らなければ、いくら冷却アイテムを利用しても効果は薄い。

●日傘でスマホが2倍以上省電力に! ダークモードの効果もチェック

 日傘でスマホを利用するもう1つの利点が、スマホの画面が見やすい上に省電力で動作するという点だ。

 最近のスマホは明るい日中屋外でも画面を見やすくする「アウトドアモード」などと呼ばれる機能が搭載されている。確かにこのモードを搭載したスマホは、屋外でも比較的画面を見やすい。だが、光の反射による見づらさは防げない他、消費電力が大きくなるので、バッテリー残量が急速に減りがちだ。そこで日傘で日光を遮れば、画面の明るさを抑えつつ画面が見やすくなる。

 では、日傘といわゆるアウトドアモードでどの程度消費電力に差が出てくるのだろうか。おおよそだが、「iPhone 15 Pro」の値を計測したのが以下のグラフだ。

 夏の日中屋外では画面を見やすくするために明るい「アウトドアモード」が有効になる。だが、その消費電力は日傘ありの場合と比べて2倍以上に及ぶ。さらにアプリ利用中の消費電力も加わるので、スマホのバッテリー急速に消費してしまう。

 これらの結果から、夏の屋外でのスマホ利用は日傘でスマホの温度上昇を抑えつつ、画面を見やすくして消費電力を抑えるのがベストといっていいだろう。もちろん、可能なら建物の中や日陰に入って利用するべきだ。

 このテストではiPhone 15 Proを先に紹介したが、あわせて大画面Androidスマートフォン「Pixel 8 Pro」と、ダイレクト給電設定で消費電力のより正確な数値を得られる「AQUOS R8」でもテストを行った。その結果も表で紹介しておく。

 どのモデルも、夏の日中屋外だと画面を明るくするために消費電力が大幅に増え、日傘の利用や屋内に入ると消費電力を抑えられる。

 この他、ダークモード時の消費電力に関してもテストしている。近年のスマホはOLED(有機EL)の特性を生かした省電力化のため、標準設定にしているモデルも多い。このモードでは画面のほとんどが黒くなり、その分消費電力を抑えやすくなる。

 日中屋外でもダークモードを利用すれば消費電力の問題は解決しそうだが、画面全体が黒くなるので光の反射や映り込みで文字を視認しづらくなる。どちらにせよ、日傘を利用するか、建物の中や日陰で操作した方がいい。

●軽さや色で選ぶ、メンズ向け「遮光100%のビジネス日傘」

 最後に、遮光100%をうたうビジネス日傘について紹介しておこう。冒頭で触れたように、2022年頃から裏地の黒い「100%遮光、遮熱、UVカットかつ晴雨兼用」の日傘が人気を集めるようになった。製品によっては東レ「サマーシールド」など、素材の性能を前面に押し出したモデルもある。

 メンズ向けを含めた遮光100%ビジネス日傘は複数のメーカーが販売している。2024年はシューズセレクションによる「東レ サマーシールドII」を採用の「COKAGE+」がヒット。こちらは入手が難しくなっている。また、現在ビジネスグッズや雑貨店での入手が容易なのはワールドパーティ「Wpc. IZA」だ。また、ドイツのブランド「Knirps」も晴雨兼用の日傘を展開している。

 形状は、ビジネス向けだと通常の折りたたみ傘と同じ形状の3つ折りタイプや、自動開閉のモデルが登場している。軽さはモデルやカラーによって異なるので注意しよう。

 全体的には200g前後の軽量モデルと、300g前後のしっかりとした骨組みや生地のモデルに分かれている。軽いモデルは持ち歩きやすいが、風の影響で簡単に裏返りやすい(破損防止のため裏返ること自体は問題ない)。剛性感やデザイン、カラー重視なら生地の選択肢が幅広い300g前後のモデルになりがちだ。

 自動開閉モデルも魅力的だ。夏の日傘の場合は雨の飛び散りや、開閉する場所をあまり気にしなくていい。積極的に日傘を使うのなら自動開閉モデルを選んでもいいだろう。なお、普通の傘と違って内部のスプリングを用いて開閉するので、手で無理やり開閉すると故障しかねない。人に貸すときは注意が必要だ。

 やや悩むのがカラーだ。メンズも想定したビジネス日傘は、従来の雨傘の定番色といえるブラックとネイビーをそろえている。だが、夏の猛暑ではもっと爽やかな色が欲しいという人も多いだろう。街で男性の日傘を見ると、つや消しのホワイトやグレー、またはアイボリーやベージュなども徐々に増えてきた。休日はよりこの傾向が強い。定番色に関しては、今後のメンズ向け日傘の広まりとともに変化していく可能性がある。

 ここまで、最近流行の遮光100%ビジネス日傘とスマホの便利な関係について紹介してきた。近年、熱中症対策で人やスマホ向けのさまざまな冷却アイテムを試す機会が増えているだろう。だが、まずは日差しを防がなければいくら冷却アイテムを使っても効果は薄い。まずは、遮光100%日傘で自身とスマホの温度上昇をしっかり防いでいこう。日差しを防げば、冷却アイテムも効果を発揮しやすくなる。

 近年、7~9月の間は熱中症対策が必須になっている。夏も後半に近づいているが、日傘などを使ってうまく乗り切っていこう。

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