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Xiaomiが“スマホじゃない”31製品を一挙投入するワケ 「ブランドの入口」になり「自社ストア開設」への布石にも

ITmedia Mobile 2024年8月31日 6時5分

 Xiaomiの日本法人にあたるXiaomi Japanは、8月28日にイベントを開催。計31種類にも及ぶ新製品を一挙に発表した。同日に販売を開始しており、Xiaomiが公式で運営するAmazonや楽天市場で購入が可能な他、渋谷PARCOで9月30日まで開催しているポップアップストアでも取り扱う予定だ。

 日本市場に参入して以降、スマートフォンやタブレットを中心にラインアップを拡大してきたXiaomiだが、その一方でそれらの端末とつながるIoTデバイスも徐々に拡大してきた。8月には、製品のバリエーションをさらに増やし、スーツケースなどの旅行用品やボールペンのような雑貨も販売している。

 7月、8月と2段構えでスマホ以外の製品を増やしてきたXiaomiだが、背景には自社ストアを日本で構える検討が進んできていることがある。「スマホメーカーが始めた無印良品」とも評されることがあるXiaomiだが、その戦略を日本でも本格化させようとしていることがうかがえる。ここでは、そのラインアップや同社の戦略を解説していきたい。

●チューナーレステレビから毛玉取り機まで全31製品を一挙に発売

 Xiaomiが発表した新製品は、全31種類。ジャンルとしてはチューナーレステレビやPC用のモニターなどが数を稼いでいる一方で、ロボット掃除機やペットに餌やりができる給餌機、さらには電気すら不要なスーツケース、リュックサックなどまで、幅広い製品を取りそろえている。炊飯器のように、食生活に欠かせない調理家電も発売する。

 8月5日に発売されたスーツケースや保温ポット、ジェルペンなどを加味すると、その数やバラエティはさらに広がる。これまでも、スマホやタブレット、ウェアラブル製品を投入しつつ、ロボット掃除機やスマートカメラなどのIoT製品は取り扱ってきたが、そのジャンルは限定されていた。ここにきて、ついに本格展開を開始したといっていいだろう。

 ジャンルはバラバラながらも、製品のデザインにはある程度統一感があり、比較的シンプルにまとめられている。ロゴや派手なデザインで主張しているわけではないため、普段の生活にも取り入れやすい。それでいてコストパフォーマンスも高いというのは、スマホやタブレットとの共通項といえる。

 例えば、チューナーレステレビはミニLEDを採用した最上位モデルの「Xiaomi TV S Mini LED」の75型でも14万9800円(税込み、以下同)。よりお手頃な「Xiaomi TV A」だと、65型でも7万6800円だ。ごみの回収やモップの自動洗浄を行う「Omniステーション」付きのロボット掃除機「Xiaomiロボット掃除機 X20+」は5万9800円。競合の製品と比べると、価格をかなり抑えていることが分かる。

 雑貨系の商品にもその価格設定は踏襲されている。同社が初めて日本で投入する「Xiaomi毛玉リムーバー」は、わずか1480円。アルミフレームを採用したスーツケースも、20インチなら1万6800円と手ごろだ。先に発表されていたジェルペンは赤の10本パックが580円。ボリュームディスカウントではあるが、1本あたりの単価は58円と安い。しかもインクがギッシリ詰まっており、通常の製品より4倍長く使えることを売りにしている。

●IT機器から雑貨まで取りそろえるXiaomi、ブランド浸透にも寄与

 日本ではいわゆるスマホメーカーという見方をされていたXiaomiだが、これは同社の一面でしかない。確かに売り上げを占める割合はスマホが高いものの、欧州やアジアなどの海外ではIoT製品や雑貨などまで幅広く手掛けるメーカーとして有名だ。こうした製品群を自社ストアで展開し、ブランド化していくのがXiaomiの戦略だ。IoT製品であれば、それを制御するスマホとのシナジー効果も期待できる。

 一方で、スーツケースやバッグ、ボールペンなどの雑貨ともいえる製品は、当然ながらスマホやタブレットとは一切連携しない。Wi-FiやBluetoothはおろか、バッテリーも内蔵していない。デザインのテイストは一部共通しているものの、スマホとは関係性は薄い。むしろないといってもいいほどだ。では、なぜXiaomiはこうした製品を展開しているのか。

 Xiaomi Japanのプロダクトプランニング本部長を務める安達晃彦氏は、「本国(中国)だと、ドライヤーや鼻毛カッターなどまであり、製品がグラデーションでそろう。こんなのがあったらいいんじゃない? という声も聞いて出している」と話す。「せっかく店舗に来たのに手ぶらで帰りたくないという人でも、数千円ぐらいのものなら取りあえず買ってみようという気になり、少しずつ(Xiaomiブランドが)浸透していく」(同)。

 確かに、メディアなどで初めてXiaomiを知り、店舗に来てみたユーザーがいきなり数万円、時には20万円に迫るスマホを買うシチュエーションは想像しづらい。そこに数千円程度で気軽に買える製品があれば、心理的なハードルを下げる効果がある。品質がよく、利便性が高ければ、次はスマホを買ってみてもいいのではと思えるかもしれない。Xiaomiブランドを知るための入口として、これらの製品が機能するというわけだ。

 Xiaomiは、「日本にグローバルの戦略をなるべく持ってくる」(同)方針で、規模を拡大している。8月にスマホ、タブレット以外の製品を一気に増やしているのは、そのためだ。本国が展開しているラインアップは膨大にあるが、今はスピード優先。「国に合わせたカスタマイズの度合いによって導入可否や順番が決まる」(同)といい、仕様を変えずにそのまま販売できそうな製品から日本での展開が決まっている状況だ。

 裏返すと、ラインアップの拡充は、日本で店舗をオープンする機運が高まっていることを意味する。Xiaomiストアを出店する布石として、スマホやタブレット以外の製品をそろえているというわけだ。安達氏は、「リテールチームが、日本のスタッフとどこがいいのかも含めて具体化の検討に入っている」と明かす。場所や物件などが決まったわけではないが、実現を前提にして条件などの検討をしていることがうかがえる。

●日本での常設店検討も具体化、ポップアップストアで蓄積したノウハウも生かす

 日本に店舗を構えるための条件も、徐々にそろいつつある。1つが、スマホのシェアが順調に拡大していること。同社は2024年第2四半期(4月から6月)の国内出荷台数で、Apple、Googleに次ぐシェア3位を獲得(Canalys調べ)。4月に「Redmi 12 5G」、5月に「Redmi Note 13 Pro 5G」や「Redmi Note 13 Pro+ 5G」などを立て続けに投入しており、好評を博しているようだ。

 また、ライカブランドのカメラを備えたフラグシップモデルの「Xiaomi 14 Ultra」も、5月に発売した。派生モデルや廉価モデルではない、ど真ん中のフラグシップモデルは初上陸だったが、こちらも話題性は十分でカメラ機能への評価も高い。約20万円と価格が高いため、ミッドレンジモデルなどと比べると納入数自体は少ないものの、販路によってはすぐに品切れになってしまっていたほどだ。

 渋谷PARCOに9月30日まで出店しているポップアップストアも、正式出店を控えた準備の一環だ。同店舗はグローバルで展開しているストアと什器や展示方法などをそろえ、その雰囲気を再現。実際に販売を行うことで、日本におけるオペレーションなどのノウハウも蓄積している。8月に発表された各種新製品が追加されたことで、品ぞろえも海外の店舗に近づきつつある。

 比較的、長期間に渡ってポップアップストアを運営し、「夏休みも重なったことで、運営のノウハウもたまってきた」(同)。実際、店舗を必要とする人は少なくないようで、スマホでも「実機を試してみたい、見てみたいというニーズがある」(同)。ポップアップストアでは、オンライン専用モデルとして展開している「POCO F6 Pro」も販売したが、家電量販店などで実機を見ることができないだけに、「あのポップアップストアでは引き合いが強かった」(同)という。

 海外メーカーでは、AppleがApple Storeを日本各地に展開している他、サムスン電子もGalaxy Harajukuでオープンマーケットモデルの販売を行っている。前者は販売店という色合いが濃い一方で、後者は宣伝も兼ねたショールームとしての役割が大きい。常設店舗に対するXiaomiのスタンスは、どちらかといえばAppleに近い。キャリアや量販店での販売にとどまることが多い海外メーカーとしては異例ともいえる動きなだけに、同社の動向に注目が集まる。

 とはいえ、物件が好立地になればなるほど、空きが少なくなる上にコストも高くなってしまう。物件所有者との交渉も必要になるため、渋谷PARCOでのポップアップストアが終了し次第、すぐに出店できるような状況ではない。計画がまとまるまでは、ポップアップストアの第2弾、第3弾でつないでいく可能性もある。安達氏は「公式ストアの展開については、情報がアップデートされたらお伝えしたい」と語っていたが、そのときを期待して待ちたい。

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