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「Pixel 9 Pro Fold」と「Pixel Fold」を徹底比較 弱点だったカメラ画質が改善 “次”に期待したいことは?

ITmedia Mobile 2024年9月4日 6時0分

 Googleの新型フォルダブルスマートフォン「Google Pixel 9 Pro Fold」。折りたたみ端末史上最薄をうたう他、新しいアシスタント「Gemini」を利用しやすくなるなど、初代「Google Pixel Fold」からの進化が大きい。国内ではGoogleの他、NTTドコモ、au(KDDI/沖縄セルラー電話)、ソフトバンクが取り扱う。

 販売価格は各社で異なるが、Google オンラインストアでの価格は25万7500円(税込み、以下同)で、先代「Google Pixel Fold」の25万3000円から4500円値上がりしている。スペックや機能の概要は速報記事で伝えたが、この記事では実機比較で分かった“進化点”と“改善を希望したい点”をまとめたい。

●Pixel 9 Pro Foldはより薄く軽量に

 Pixel Foldと同様に、Pixel 9 Pro Foldは閉じると一般的なスマホに近いサイズ感で、開くとコンパクトなタブレット大のサイズになる横折りタイプのフォルダブルスマホだ(以下、記事内では「折りたたみスマホ」と表記する)。

 実機を手にして最初に気付いたのはサイズ感だ。折りたたみスマホとして最薄レベルを目指したというPixel 9 Pro Foldのサイズは、折りたたんだ際の横幅がPixel Foldよりも抑えられて持ちやすい。折りたたんだ状態の厚さもPixel Foldより約1.6mm薄くなり、全体的にスリムなボディーへと進化している。

 念のため、数値でもサイズが分かるようにPixel 9 Pro FoldとPixel Foldの違いを記載しておく。折りたたんだ状態のサイズはPixel Foldから幅が2.4mm減、高さが15.5mm増、厚さが1.6mm減となっている。開いた状態のサイズは、Pixel Foldから幅が8.5mm減、高さが15.5mm増、厚さが0.7mm減だ。重量は約257gと、Pixel Foldの約283gから26gほど軽量化された。

・折りたたんだ状態のサイズ

・Pixel Fold:約79.5(幅)×139.7(高さ)×12.1(厚さ)mm

・Pixel 9 Pro Fold:約77.1(幅)×155.2(高さ)×10.5(厚さ)mm

・開いた状態のサイズ

・Pixel Fold:約158.7(幅)×139.7(高さ)×5.8(厚さ)mm

・Pixel 9 Pro Fold:約150.2(幅)×155.2(高さ)×5.1(厚さ)mm

 一方で、アウトカメラは「Pixel 6」から継承されてきた「カメラバー」ではなく、背面左上にオフセット配置されている。率直にいうと、ここのレイアウトはPixel Foldから変更しないでほしかったと思う。X(旧Twitter)でも、この外観に関して賛否があったが、筆者が気になるのはカメラの配列(レイアウト)が実用的かどうかだ。

 Pixel Foldのアウトカメラは長方形のバーに納まるのに対し、Pixel 9 Pro Foldでは1つの四角いバンプ(台座)に集約されている。閉じた状態で机の上などに置くと、カメラバーを採用するPixel Foldは安定する。ストレートタイプの「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」も、形こそ変わったがカメラバーを採用した。安定して置ける点が気に入っている。

 一方、バーデザインではないPixel 9 Pro Foldは、見た目の目新しさはあるが置いたときの安定性に欠ける。ここは困りものだ。

●AIアシスタント「Gemini」は折りたたみスマホでも利用可能

 Pixel 9シリーズで見逃せない便利機能の1つが、同シリーズからはLLM(大規模言語モデル)をベースとした生成AIエージェント「Gemini」だ。これまでPixelシリーズの音声エージェント機能を担っていたのは「Googleアシスタント」だったが、Geminiが標準となることで複雑な質問にも回答できるようになった。

 Geminiは1画面のPixel 9/Pixel 9 Pro/Pixel 9 Pro XLでも利用しやすい。しかし、Pixel 9 Pro Foldで使うと「やっぱり大画面でこそ見やすい」と感じたシーンがあった。例えば、TV番組に出演しているタレントがロケで訪れた場所の名を発言したとする。ただ、番組名には地名がなく、TVの画面に地図や場所の詳細が出るわけでもない。そんな時、Pixel 9 Pro Foldを開いてGeminiを起動して「これ(場所の名)ってどこにあるの?」と聞くと、即座に回答を示してくれる。しかも地図付きでだ。

「Pixel Screenshots」も大画面で便利そうだが……

 「Pixel Screenshots」も、大画面で利用してみたい機能の1つだ。端末でスクリーンショットを撮ると、画像に関連する情報を保存する機能で、例えば、行ってみたいレストランのWebサイトやレビュー記事のスクリーンショットを撮影しておくと、そのレストランの住所やメニュー、URLなどを保存してくれる。Googleのマルチモーダル生成AI「Gemini Nano」と、本機の「Tensor G4プロセッサ」を活用した機能だ。

 こちらも折りたためる構造を生かして、Pixel 9よりも優れたUIを使えるのか、それともほとんど変わらないのかを確認……したかったのだが、2024年9月3日時点では米国以外では利用できない。Pixelならではの機能の1つなので、日本での提供を心待ちにしたい。

●アスペクト比が異なるインナーディスプレイとカバーディスプレイ

 続いて、折りたためるディスプレイでコンテンツがどれほど見やすいのかを確認したい。結論からいえばカバーディスプレイもインナーディスプレイもPixel Foldより満足度が高い。

 カバーディスプレイは5.8型のフルHD+(1080×2092ピクセル)から、0.5型大きく解像度もやや向上した6.3型のフルHD+(1080×2424ピクセル)となった。どちらも有機ELパネルを採用するが、横幅が削減された分、Pixel 9 Pro FoldはPixel Foldよりも握りやすくなった。

 このカバーディスプレイには、プレビューを表示しながらアウトカメラで撮影する機能も用意されている。これ自体はPixel Foldでもできることだが、Pixel 9 Pro Foldではカバーディスプレイにアニメーションを表示させ、子どもにカメラを向いてもらえる仕掛けが加わっている。新製品発表イベント「Made by Google」では子どもが不機嫌そうな顔をせずに済むと紹介されていた。

 自分も相手も同時に翻訳結果を確認できる「デュアルスクリーン通訳モード」もカバーディスプレイを生かした機能で、Pixel 9 Pro Foldでも利用できる。翻訳結果をカバーディスプレイとインナーディスプレイの両方に表示できるため、翻訳結果の提示を理由に自分のスマホを相手に手渡したり、自分側を向いたディスプレイを相手側に向けたりする必要がなくなる。

実は「横長」から「微妙に縦長」になったインナーディスプレイ アプリにどう影響?

 インナーディスプレイは7.6型フルHD+(2208×1840ピクセル)から、0.4型大きく解像度もやや向上した8型フルHD+(2076×2152ピクセル)へと進化した。最大輝度は1000ニト(HDR)/1450ニト(ピーク輝度)から1600ニト(HDR)/2700ニト(ピーク輝度)となり、より明るく表示できるようになった。

 ただ細かいスペック値よりも、気になったのがアスペクト比(横:縦)比だ。Pixel Foldが「6:5」で横長だったのに対し、Pixel 9 Pro Foldは「ほぼ1:1」で微妙に「横長」となった。これが、意外とコンテンツを見る時の印象に影響する。

 例えば、Webベースのビュワーで夏目漱石の「こころ」を読んでみたのだが、Pixel Foldではしっかりと見開き(2ページ)表示となったのに対して、Pixel 9 Pro Foldは1ページのみの表示となった。ところが、本体を90度回転させると、今度は逆にPixel Foldは1ページのみの表示、Pixel 9 Pro Foldは見開き表示となった。

 アプリの実装次第だが、「PIxel Foldでは横開きで見開きで使えていたのに、Pixel 9 Pro Foldではできない(向きを変えないとダメ)」といったことは、意外と起こるかもしれない。

 次に「dマガジン」アプリで雑誌を開くと、先ほどと挙動が異なった。Pixel Foldでは通常の向きでは見開き表示の状態となるが、本体を90度回転させると、1ページが中央に表示される(左右には余白が出る)。

 一方でPixel 9 Pro Foldでは、そのまま開いても、90度回転させても見開き表示となる。ただし、ピンチアウトすれば拡大できる(≒1ページ表示にできる)ので、実用面ではそれほど問題にはならないだろう。

 では「YouTube」アプリではどうなるか。くの字型にして机上に置くと、どちらも「上半分に動画、下半分にコントロールパネル」という表示となる。この基本的なUIに変更はないようだが、折りたたみスマホの利便性はこの辺りにもあるため、UIに関する大幅なアップデートがあれば、適時試してみたい。

 ところが、本体を目いっぱい開いてYouTubeの動画を視聴すると、インナーディスプレイのアスペクト比がもたらす問題に直面する。一般的なアスペクト比である「16:9」の動画を拡大せずに視聴すると、どちらの機種も上下左右に何も表示されない領域がどうしても出てしまう。90度回転させたとしても同様だ。

 16:9のコンテンツに適したのはインナーディスプレイなのだろうか――そこでふと「カバーディスプレイならどうだろう?」という疑問が芽生えた。

 Pixel Foldのカバーディスプレイは16:9に近いアスペクト比なので、あまり余白がないので見やすい。ただし、画面の片方の端部がインカメラに掛かってしまうので、その点が気になる人はいるかもしれない。

 それに対して、Pixel 9 Pro Foldのカバーディスプレイはアスペクト比が変わった影響で左右の余白が増えてしまった。ただし、映像がインカメラに掛からなくなるので、ある意味で見やすくはある。

●アウトカメラはデジタルズームの画質が改善

 アウトカメラについては、スペックだけを見れば、大きな進化がないと感じる。望遠カメラは0.5/1/5倍の光学ズームに対応しており、超解像ズームを合わせれば最大20倍のズームに対応する。構成は広角カメラ、超広角、望遠で変わらない。画素数は広角カメラ(約4800万画素)と望遠カメラ(約1080万画素)は同じだが、超広角カメラのみ約1080万画素から約1050万画素と少なくなっている。

 実際に0.5/1/5倍の光学ズームと、20倍のデジタルズームにおける仕上がりを比較すべく、Pixel 9 Pro FoldとPixel Foldで昼間の風景と夜景を撮り比べてみた。なお、どちらも手持ちで、全てオート(カメラ任せ)にして撮影した。

 Pixel 9 Pro Foldの超広角カメラは、画角がPixel Foldの121.1度から127度へと広くなり、より広く撮影できる。昼間の風景ではノイズが目立ったり、手ブレが補正されなかったり……ということもない。

 「Pixel Foldで弱点だった部分が解消されている」と感じたのが、デジタルズームでの撮影だった。被写体に船を選んでみたが、Pixel 9 Pro Foldは遠く離れた場所からでも船の先端部分がきれいに撮影できるようになった。Pixel Foldだと、船の帆を張るためのワイヤーはゆがんだように写るが、Pixel 9 Pro Foldではピントがしっかりと被写体に合って、きれいに撮影できる。

 夜景ならどう違うのかも気になるので、今度は夜の空港で撮影してみた。0.5/1倍は色味に若干の違いはあるものの、昼間と同様にほとんど差が見られなかった。ただ、光学5倍で比較すると、雲泥の差が出た。Pixel 9 Pro Foldでは遠くにある管制塔までクッキリと表現できるのに対し、Pixel Foldでは全体的にぼやけて、手ブレが十分に補正されていない。

 より遠くまで夜景を鮮明に撮影できるのも、Pixel 9 Pro Foldだった。空港の看板の文字やカーゴ(貨物)は、Pixel Foldでは手ブレで分かりづらかったのだが、Pixel 9 Pro Foldでは確認しやすい。

 厳しい条件下であるため、塗り絵のようにつぶれてしまっているが、デジタルズーム20倍の進化も確かめられた。

●ベンチマークには表れづらいPixel 9 Pro Foldの真価

 性能についても見ていこう。プロセッサはPixel Foldが「Google Tensor G2」、Pixel 9 Pro Foldが「Google Tensor G4」を搭載している。一応、世代的には2世代分のジャンプアップだ。メインメモリは12GBから16GBへと増量している。

 そんな両機に「Geekbench 6」アプリをインストールし、ベンチマークを計測したところ、次のようなスコアとなった。

・Pixel 9 Pro Fold

・シングルコア:1961

・マルチコア:4366

Pixel Fold

・シングルコア:1473

・マルチコア:3831

 順当にPixel 9 Pro Foldの方がスコアが良好(=よい性能)なのだが、アプリの起動/切り替えのスムーズさ、WebブラウザやSNSの閲覧の快適さにおいて、実用面で両者の差を感じる場面は意外と少ない。

 Pixel 9 Pro Foldの真価は、Tensor G4で実現するAI機能にある。例えば「編集マジック」の1つである「イマジネーション」では、画像内の変更したい部分を選択して、どのように変更したいのかをテキストで指示すると変更後の例が提示される。

 最初に撮影した写真の位置関係などまで含めて一時的に記録し、後から撮影者と合成することで第三者に撮影を依頼せずに済む「一緒に写る」や、画角を広げた写真の候補を4枚提示する「オートフレーム」など、AI推しの機能は多い。これらの機能はTensor G4のパワーを生かしてたものだ。ベンチマーク計測アプリだけでは、真価が伝わりづらい。

 Pixel 9 Pro Foldには、たくさんの機能がそろっている。しかし価格面で「求めやすい」とはいえず、大半の人にとっては簡単に手を出せないだろう。そうした人に向けて、機能の一部をそぎ落としてでも、安価なモデルが追加されると、手を出しやすくなりそうだ。

 Googleの折りたたみスマートフォンに「安価なモデルの選択肢」が増えることを心待ちにしたい。

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