Infoseek 楽天

新折りたたみ「Pixel 9 Pro Fold」の実力検証 初号機やGalaxy Z Fold6と比べて使い勝手はどうか

ITmedia Mobile 2024年9月4日 2時5分

 「Pixel 9」「Pixel 9 Pro XL」に続き、9月4日に「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro Fold」の2機種が発売される。今回取り上げたのは、フォルダブルスマホとして初めてナンバリングモデルになったPixel 9 Pro Fold。横開きのフォルダブルスマホとして、国内最薄の10.5mm(閉じたとき)を実現しており、注目を集めている。

 閉じるとスマホ、開くとミニタブレットのサイズになる横開きのフォルダブルスマホは、選択肢が少ない。海外ではOPPOやXiaomiをはじめとした中国メーカーが端末を投入しているものの、展開する市場が限定されており、いずれも日本未発売。国内の現行モデルという意味では、「Galaxy Z Fold6」が唯一のライバルだ。

 では、初代「Pixel Fold」やGalaxy Z Foldシリーズと比べ、Pixel 9 Pro Foldにはどのような特徴があるのか。これらのシリーズと比較しつつ、Pixel 9 Pro Foldをレビューしていきたい。

●大胆に変更したディスプレイ比率は吉と出るか、凶と出るか

 初代Pixel Foldは閉じると縦長のスマホ、開くと横長のタブレットになるのが特徴のフォルダブルスマホだった。これに対し、Pixel 9 Pro Foldはディスプレイ比率を変更。開いたときにミニタブレットと呼べるサイズ感になる点は同じだが、ディスプレイ比率は正方形に近い縦長になった。解像度でいえば、縦は2152ドット、横は2076ドットで、ほぼほぼ真四角ながらもわずかに縦長だ。

 この変更は使い勝手に影響する。例えば、Gmailアプリ。Pixel Foldでは画面を開くと即横長の画面に最適化した2カラム表示になっていた一方で、Pixel 9 Pro Foldでは通常のスマホと同じ1カラム表示になる。本体を横向きにすると2カラム表示に切り替わるものの、呼び出す手間がワンステップ増えた格好だ。

 ただし、アプリによってはそのまま横長と判断し、縦長のときとは違うUI(ユーザーインタフェース)になることもある。標準アプリは、むしろそちらの方が多かった。Chromeはその代表例で、開いた状態だと縦にしても画面上部にタブが表示される。RCS対応のメッセージアプリも2分割表示になる。画面の縦横比は変わったが、アプリごとに開いたときの挙動は異なるようだ。

 とはいえ、この解像度に追い付けていないアプリもある。少々挙動がおかしいのが、「X(旧Twitter)」。縦にしたときには画面いっぱいにポストのタイムラインが広がるが、横にすると、なぜかタイムラインが画面中央にギュッと凝縮されてしまい、左右に無駄なスペースが生まれる。

 困ったのが電子書籍アプリ。先代のPixel Foldは、開いた状態だと見開き表示になり、本体を横に倒すと単ページに切り替わっていた。コミックなどでは見開きのままでも大きな問題ないが、雑誌のようにもとの判型がA4なりA4変形だったりすると、見開き表示には8型でも小さすぎる。11型のiPad Proですら単ページ表示がちょうどいいほどで、8型の画面で見開きにしてしまうと、キャプションはおろか、本文も読みづらい。

 この影響が大きかったのが「dマガジン」で、Pixel 9 Pro Foldだと、単ページにする方法が見つからなかった。縦スクロールだと単ページになるが、上下が足りないので何か違う。Galaxy Z Fold6のように、縦では単ページ、横では見開きというように、端末の向きに応じて表示を切り替えられるといいのだが……。Pixel 9 Pro Foldの場合、いきなり縦長になったことで、アプリ側がきちんとキャッチアップできていないような印象もある。

●デザインは洗練されたが、カメラの進化はそこそこ

 のっけからネガティブな話が続いてしまった感はあるが、端末のデザインはうまくまとめられている。本体のアルミフレームは高級があり、何より薄い。徐々に薄型化してきたGalaxy Z Foldシリーズを、一気に抜き去ってきたのは面白い。先代のPixel Foldとの比較では、ヒンジ部分もかなり小型化しており、スタイリッシュさが増した格好だ。

 初代Pixel Foldと比べると、内側ディスプレイの周りのベゼルも細くなり、より没入感は高まっている。また、ディスプレイ比率の変更で、外側ディスプレイが縦長になり、操作性は“普通のスマホ”に近づいた。先に挙げたXのタイムラインのように、縦にズラッとコンテンツが並ぶスマホ特有のUIには、こちらの方が合っている。外側ディスプレイのサイズは6.3型。Pixel 9やPixel 9 Proと同サイズに設計されているため、片手でも操作できる。

 ただし、横幅は77.1mmとPixel 9やPixel 9 Proの72mmより、5mm以上大きい。そのため、よりスリムな68.1mmのGalaxy Z Fold6と同じようにギュッと握ることは難しい。片手操作は可能だが、それがしやすいかというと別問題だ。逆に画面に表示される文字などは大きくなり、キーボードは打ちやすい。どちらがいいかは一長一短だが、個人的には握りやすいGalaxy Z Fold6の方が好みに近い。

 ヒンジの機構にも改良が加わっており、初代Pixel Foldよりも滑らかに開閉できる。内側ディスプレイの折り目も薄くなった。折り目が完全になくなったわけではないが、目立ちにくくなったことは確かだ。フォルダブルスマホの内側ディスプレイは、経年劣化で折り目がよりつきやすいため、もっと長期間使ってみないとその優劣は判断しづらいものの、改善されていることは間違いない。

 カメラの構成はPixel 9 Proと同じ、超広角、広角、望遠のトリプルカメラだが、スペックは少々異なる。メインの広角カメラは、他のPixel 9シリーズが50メガピクセルなのに対し、Pixel 9 Pro Foldは48メガピクセルで、画素数にすると200万画素ほど少ない。これは、他モデルのセンサーが1/1.31型なのに対し、Pixel 9 Pro Foldが1/2型だからだ。センサーサイズは初代Pixel Foldから大型化していないことになる。

 とはいえ、そこはもともとカメラ機能に定評のあるPixel。暗所での写りも含めて、撮れる写真のクオリティーは高い。一方で、Proを冠しながらも、動画の画質を向上させる「動画ブースト」の8K撮影には非対応。プロモードで画素数をそのまま生かして撮る超高解像度撮影にも対応していない(そもそも48メガピクセルなので)。また、Pixel 9 Proが対応した、動画の超解像ズームも利用できない。同じProでも、スペック差や機能差があるのは少々ややこしい点といえそうだ。

●2画面を生かした機能や机に置いたまま使える便利な機能も

 Pixel 9シリーズで新たに加わった「一緒に写る」も利用できる。ただし、この機能に関しては、半開きで置きっぱなしのまま撮影することができない。撮影者が最初の写真を撮った後、端末を受け渡す必要がなく、シャッターを切るだけで済むと思ったが、期待が外れてしまった格好だ。

 一方、フォルダブルスマホならではの機能も複数搭載されている。外側ディスプレイにファインダーの画面を表示して開いた状態で自撮りができる「背面カメラ セルフィー」は、Pixel 9 Pro Foldの特徴の1つだ。同様の機能はGalaxy Z Fold6にもあり、フォルダブルスマホでは一般的だが、Pixelシリーズの中では唯一、アウトカメラで高画質のセルフィーを撮れる。

 また、撮影時にキャラクターを表示し、被写体の注意を引く「こっちを見て」という機能も面白い。モトローラの「razr 40 ultra」などにも同様の機能はあり、Pixel独自とまではいえないが、声をかけてもカメラを見てくれない子どもを撮影するときなどに便利。これも、前後にディスプレイが載る構造のフォルダブルスマホならではだ。

 カメラに限らず、半開きのまま机などの上に置けるのは、フォルダブルスマホの特徴。Pixel 9 Pro Foldでも、このような使い方は可能だ。筆者が便利だと感じたのは、レコーダーアプリの文字起こし。通常のPixelだと、インタビューなどの際に相手に文字が見えてしまうが、半開きの状態で置けるPixel 9 Pro Foldならその心配がない。角度がつかないため画面も見やすい。筆者は、英語のプレゼンを文字起こししながら、聞き取りにくかったところを文字で確認しているが、そのような使い方がしやすい形状といえる。

 Galaxy Z Fold6との比較だと、半開きにした際の画面半分があまり横長になりすぎないこともあり、動画が小さくなりづらい。これは、正方形に近い形状の利点。Galaxy Z Fold6のように縦長だと、半開きした際の上半分がかなり細長くなってしまう。16:9などの画角で作られている映像を見るときの視認性、迫力はPixel 9 Pro Foldに軍配が上がる。

 このように見ていくと、初代Pixel Foldのような粗削りな印象は、だいぶ薄まっているように思える。一方で、それが完全になくなったわけではない。冒頭で言及した“アプリの縦横問題”はその1つ。初代Pixel Foldより軽くなったとはいえ、257gという重量もまだまだ削減の余地がある。個人的には薄さよりも細さや軽さを優先したいところで、この点でもGalaxy Z Fold6に及んでいない。ハードウェアについては次機種まで待つしかないものの、ソフトウェアはアップデートで改善できそうなだけに、今後の対応にも期待したい。

(製品協力:グーグル合同会社)

この記事の関連ニュース