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ドンキ運営元が格安SIMを提供するワケ 既存MVNOとタッグ、「おごってもらう感覚」で家計を応援

ITmedia Mobile 2024年9月12日 23時9分

 ドン・キホーテを展開するPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は9月13日、MVNOサービス「マジモバ」と、モバイルWi-Fiサービス「最驚 Wi-Fi」を始める。PPIHグループのリテール子会社とエックスモバイルが提携する形で提供する。契約は一部店舗とWebサイトにて受け付ける。

 マジモバはデータ通信、SMS、音声通話を利用できるサービス。月額料金は3GBで770円(税込み、以下同)、15GBで2508円、25GBで3278円、50GBで6050円だ。通話定額オプションサービスとして、月額880円で10分かけ放題の「かけ放題ライト」と、月額1980円でかけ放題の「かけ放題フル」を用意する。3GBは「驚安プラン」、15GB、25GB、50GBを「最驚プラン」という扱いだ。

 最驚 Wi-Fiは、1日10GB(月間300GB)のデータ容量を月額4180円で利用できるサービス。モバイルWi-Fiルーターの料金は発生しない。国内では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの回線のうち、最適な回線に自動接続する。海外151の国と地域では、ネットワークを切り替えずに利用できるが、海外では別途料金が発生する。2年未満の解約時には、解約手数料の4180円が別途かかる。

●料金だけを追求せず、PPIHならではの切り口で物価高騰に苦しむ家計を応援

 ここまでの内容だけでは、他社とほとんど変わらないサービスだと感じるが、マジモバと最驚 Wi-Fiの独自性はどこにあるのか。9月12日の記者会見に登壇した、PPIH 上席執行役員の森谷健史氏と、エックスモバイル代表取締役の木野将徳氏によるプレゼンテーションをもとに解説する。

 PPIHは、企業理念である「顧客最優先主義」を掲げ、顧客が求める商品を求めやすい価格で提供する「マジ価格」や、支払い時に端数を値引きする「マジ値引き」など、独自電子マネー「majica(マジカ)」会員を対象に、“驚安の買い物体験”を提供する取り組みに力を入れている。

 この取り組みをさらに拡張するべく、PPIHは「家計の固定費」の中でも通信費に着目した。総務省による2024年6月の家計調査報告によると、家計の固定費(住居、光熱、水道、交通、通信の合計で算出)の中で14.1%を占めるのが通信費となっている。「お客さまにとって最も都合のよい通信サービス」の実現を掲げるPPIHは、マジモバと最驚 Wi-Fiで「お客さまにお得で驚安なお買い物とサービス体験を拡充させていきたい」と考える。

 新サービスで注目すべきは、料金の安さはもちろんだが、主に電子マネーの「majica」ユーザーに向けたサービスであること。

 マジモバの最驚プラン(15GB、25GB、50GB)の契約者でmajicaアプリ会員には、ドン・キホーテをはじめとするmajica加盟店で商品と交換できるクーポンを「#今月のおごり」として毎月提供する。クーポンは、PPIHのキャラクターであるドンペン、アピタン、ド情ちゃんにおごってもらえる設定になっており、毎月10日にmajicaアプリ上で配信する。

 UCSカード会員の場合、マジモバの利用料金をUCSカード払いにすると、支払料金のポイント還元率が、通常の0.5%から5倍の2%にアップする。こちらは、驚安プランと最驚プラン共通の特典となっている。

 majicaは、ドン・キホーテが2014年3月に開始した電子マネーサービス。PPIHグループのドン・キホーテ、MEGAドン・キホーテ、アピタ、ピアゴ含むmajica加盟店で利用できる。利用者が買い物をする際にmajica マネーかUCSカードで支払うとポイントがたまる。ためたポイントは1ポイント=1円として買い物に利用できる。

●新サービスは「majica(マジカ)」の延長、携帯事業への新規参入ではない

 マジモバのサービス内容を見ると、まさに、顧客ファーストなPPIHグループならではの特典といえる。 森谷氏は、今回の発表内容が「利益重視の新事業でなければ、携帯電話事業への参入でもない」とアピールする。

 森谷氏は、「majicaの延長として、お客さまとのタッチポイントをたくさん取っていきたい。お客さまにとってよりよいサービスをご紹介したい、という要素の方が強い。現時点で売り上げ目標(そこまで大きな目標)は定めていない。われわれ自らが通信事業者になることも検討していない」とも話す。

 手を組む相手にエックスモバイルを選んだ理由について、森谷氏は「われわれは小売業なので、変化に対応していくというところが一番重要だなと思ったときに、エックスモバイルは柔軟性があると判断した。通信に関してもドコモ回線を利用するところも大きかった」と説明する。

 顧客ファーストなサービスや体験を重視するのがPPIHなら、MVNOサービスに欠かせない通信を担うのがエックスモバイルだ。社名の「X」をコラボのXとして、「消費者の“好き“X mobile」「推し」「○○モバイル」など、数多くのインフルエンサーや企業とコラボしたモバイルブランドを複数展開してきた。

 その事例の1つに「ホワイトレーベル戦略」の一環として立ち上げた「HORIE MOBILE(ホリエモバイル)」がある。その名の通り、事業家の堀江貴文氏がプロデュースし、YouTubeの動画では堀江氏と木野氏が宣伝する場面もある。

 一方、PPIHの森谷氏は、「店頭でのプロモーションみたいなものもかけていく予定だが、芸能人を起用した広告は考えていない」としており、マジモバ/最驚 Wi-Fiの宣伝手法や位置付けはHORIE MOBILEとは異なるようだ。

 では、マジモバと最驚 Wi-Fiは、どのようにして誕生したのだろうか。「激安、驚安といえば、多くの人がドンキ(ドン・キホーテ)を想起するのではないか?」という問いかけからプレゼンを始めたエックスモバイルの木野氏は、自身の体験談とともに、マジモバ開始に至るまでの経緯をこう紹介した。

 「お金がない時期には、地元の岐阜にあるアピタやユニーへ閉店間際に向かい、安くなる食品を買ったのを思い出す。その後、エックスモバイルの創業から間もない頃、当時は専務(現在はPPIH代表取締役社長)だった吉田直樹氏にモバイルの提案を行ったことがあった。そのときはまだこのような形にはならなかった」

 「今から約2年前、吉田社長に再チャレンジの機会をいただいた。結果、即座にプロジェクトチームが組成され、PPIHグループの皆さんと数えきれないほどの打ち合わせを経て、マジモバをともに準備してきた」

 「失礼ながら夜中にメールで返事をしてしまうことがあったが、何時に返してもPPIHの皆さんからお返事があった。それどころかマジモバをどうすればよくできるのか、価格をもっと下げられないか、といったアイデアが次々に出てきた」

 これまでの期間を木野氏は、「ワクドキ」の期間であったと表現し、丁寧に振り返った。その上で、「マジモバがドン・キホーテやユニーで展開されることを、1人の経営者としてうれしく思う」とした。

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