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「Apple Watch Series 10」は10周年の“集大成”といえる完成度 46mmケースへの乗り換えを決断した理由

ITmedia Mobile 2024年9月17日 21時5分

 初代Apple Watchの登場から間もなく10年がたとうとしている。その間、Apple WatchはApple Payやセルラー通信を取り込み、機能的にも大きく進化してきた。2023年に発売されたApple Watch Series 9では、iPhoneやiPadなどでおなじみのNeural Engineも取り込み、機械学習を端末内部でより素早く処理できるようになっている。

 10周年を迎えるApple Watchの集大成として発売されるのが、Apple Watch Series 10だ。同モデルの発売に先立ち、46mm版の実機を試用することができた。そのレビューをお届けしよう。

●薄くスタイリッシュに、チタニウムケースはとにかく軽い

 Apple Watch Series 10最大の特徴は、そのサイズ感と重量だ。まず、ディスプレイは大小それぞれ1mmずつ拡大しており、より表示領域が大きくなった。Series 10は小サイズが42mm、大サイズが46mmだ。42mmという数字に聞き覚えがある人も多そうだが、実は初代モデルでは大サイズが42mmだった。徐々に表示領域を広げてきた結果、小さいApple Watchが10年前の大きいサイズに追い付いてしまったというわけだ。

 ディスプレイサイズが拡大した一方で、厚みは大幅に削減されている。42mm、46mmともに厚さは9.7mm。Series 9までの10.7mmから1mmも削減されている。たったの1mmと思うかもしれないが、10.7mmからの1mmは割合も大きいため、違いは歴然だ。筆者が普段着けているApple Watch Series 8のHermesモデルと比べると、ちょうどディスプレイのガラス1枚分ほど薄くなっていることが分かる。

 これによって、腕に着けたときのボテッとした印象がかなり薄まり、スタイリッシュさが増している。一度Series 10を着けてしまうと、それ以前のモデルが少々やぼったく感じてしまうほどだ。本体裏にあるセンサー部分の厚みも削減されているため、装着感が向上している。腕に着けたときの“異物感”が減っているため、自然に装着可能。普段時計をしていない人でも、抵抗感なく装着できそうだ。

 さらに大きいのは、重さが減少したことだ。特に変化が大きいのは、光沢感の強いチタニウムモデル。もともとステンレススチールを採用していた高級版だ。この素材がステンレススチールからチタニウムに変わったことで、小サイズは42.3gから34.4gに、大サイズは51.5gから41.7gにまで軽量化している。

 特筆すべきは、Series 9までの小サイズよりも、Series 10の大サイズの方が軽いことだ。上記の写真から分かるように、普段筆者が着けているSeries 8は41mmの小サイズ。今回試用したSeries 10は、46mmの大サイズだ。もともと筆者は、大きいサイズのズッシリとした重量感が少々苦手だったこともあり、歴代Apple Watchは小サイズを選択してきた。ところが、Series 10は大サイズの46mmを着けてもまったく違和感がない。薄く、軽くなったことで、むしろ大サイズの方がしっくりくると思ったほどだ。

 余談になるが、筆者は今回、Series 10の大サイズを購入することにした。サイズ変更に伴い、これまで集めてきたバンドが全て使えなくなってしまうため、決断にはかなり時間がかかったが、その価値はあると感じた。46mmもあれば、いざというときにキーボードを使えたり、電卓で計算したりするのも簡単。42mmより、情報量も多くなる。この軽さは、ぜひ一度装着して体感してみてほしい。

●素材変更による違いは? チタニウムのナチュラルとステンレススチールのシルバーを比較

 ステンレススチールからチタニウムに変わったことで、カラーリングも変更されている。Series 10のチタニウムモデルは、「ナチュラル」「スレート」「ゴールド」の3色。ステンレススチールで定番的な存在だった「シルバー」が存在しない。また、「スペースブラック」も用意されていない点には注意が必要になる。試用したのはナチュラル。装着しているバンドも、ナチュラルのミラネーゼループだ。

 チタニウムでナチュラルと聞くと、Apple Watch UltraシリーズやiPhone 15 Pro/15 Pro Maxのような仕上げを想起するかもしれないが、実物を見ると、仕上げは限りなくステンレススチールに近い。チタニウムの持つざらつき感は一切なく、逆に磨き上げられてキラリと光り輝いている。Apple Watch Ultraのような“チタン感”を期待した人には肩透かしかもしれないが、これまでステンレススチールを選んでいた人は安心してチタニウムケースを選択していい。

 先ほどから比較のためにたびたび登場している私物のSeries 8はステンレススチールのシルバーだが、ナチュラルと並べてみてもあまり違いは感じられない。蛍光灯に当てると、ややナチュラルの方が黄色みがかっているように見えるが、ぱっと見でどちらがどちらかを言い当てるのは難しいような気もする。シルバーはApple Watch Hermesだけの色になってしまった一方で、通常モデルであればナチュラルを選んでおけば、従来のシルバーに近い印象になる。

 これはミラネーゼループのバンドも同じだ。こちらも同様にシルバーからナチュラルに変更されたが、色味は非常に近い。ただし、面積や加工の関係もあって、本体の色よりは黄色みが強いようにも見える。Series 9までのシルバーと並べると、一目瞭然だ。どちらかというと、ナチュラルの方が肌になじむ印象で少し柔らかな見た目になる。本体以上に、こちらの方が好みが分かれそうだ。

 ただし、既にシルバーのミラネーゼループを持っているのであれば、それを装着してもいい。Apple Watch Series 10でも、バンドの互換性は維持されている。42mmは41mmや40mmなど、46mmは45mmや44mmなどのバンドをそのまま利用可能だ(一部、ギリギリの設計になっているサードパーティーのバンドははまらないこともある)。先に述べた通り、本体のカラーリングはシルバーのように見えるため、ナチュラルの本体にシルバーのバンドを組み合わせても、違和感はほぼない。終売してしまったのが残念なほどだ。

 個人的には、光沢感の強く、高級感もあったステンレススチールのケースを気に入っていた。Series 10発表時に、チタニウムを採用したと聞いたとき、その質感が失われてしまうのでは……と頭によぎったが、それは杞憂だった。むしろ、素材を変え、軽量化したことのメリットが大きい。これまでステンレススチールを選んでいた人ほど、その差に気付きやすいはずだ。

●機能もさらに充実、10周年の集大成的なApple Watchに

 機能面では、6mまでの水深を検知できるようになったことが従来モデルまでとの大きな違いだ。「Apple Watch Ultra 2」は水深40mまで対応しているが、それと比べると浅い。ダイビングのようにより深く潜る場合にはApple Watch Ultra 2、シュノーケリングのように少しだけ潜る場合にはApple Watch Series 10という形ですみ分けが図られているようだ。

 実際、筆者は旅行の際にシュノーケリングを楽しむことはあるが、ダイビングは訓練などのハードルもあるため、あまりやろうと思ったことがない。Apple Watch Ultraが登場した際にも、自分にはあまり関係のない機能かな……と思ってしまった。これがシュノーケリングで使えるとなると、がぜん興味がわいてくる。よりライトに、海で遊びたい人に向け機能を絞り込んでいるといえそうだ。その方が、UltraではないApple Watch向きだ。

 水深計は、Apple Watchが水につかると自動的に起動する。コンプリケーションやアプリから呼び出すことも可能だ。シュノーケリングの記録は、Huish Outdoorsの開発した「Oceanic+」で取ることも可能だ。同アプリは、Apple Watch Ultraをダイブコンピュータ化するものだが、シュノーケリングだけなら無料で利用できる。Apple Watch Series 10にも対応しているため、ぜひインストールしておきたい1本だ。

 また、スピーカー部分のデザインが変わり、音楽の出力に対応した。Apple Musicで音楽を流してみたが、Apple Watchから音楽が流れるのは新鮮。これまでのApple Watchも着信音や電話の音声がスピーカーから流れていたが、より用途が広がった格好だ。ただし、音質はiPhoneなどのスマホと比べると、ペラペラな印象。スマホを持っているときに、あえて使うようなクオリティーではない。単体利用時に流すとなるとシチュエーションを選ぶため、使いどころが少々難しい気もした。

 最後に睡眠時無呼吸症候群の検出だが、こちらは残念ながら、通知が届くのに30日程度の利用が必要になるため、今回のレビューでは試すことができなかった。筆者が睡眠時無呼吸症候群でなければそもそも検出されないため、なかなかレビュー泣かせの機能といえる(その方が、健康ということで悲観すべきことではないのだが……)。

 薄く、軽くなったApple Watch Series 10は、過去最高のクオリティーだと評価できる。着け心地もいい。特に、これまでステンレススチールを使っていた人は、その軽さに驚くはずだ。高級感はそのままに、装着感のよさを両立しているところは、高く評価できる。Series 8以前からの機種変更であれば、親指と人差し指をダブルタップで操作できる機能も新たに使えることになる。新たにApple Watchを使い始める人はもちろん、既存モデルからの買い替えにもオススメできる1台だ。10年の集大成を、ぜひ体験してみてほしい。

(製品協力:アップルジャパン)

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