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KDDIとローソンの提携で「ギガ」「クーポン」「ポイント」がお得に カギを握るpovoとPontaパス

ITmedia Mobile 2024年9月21日 6時5分

 KDDIは、株式公開買い付けで三菱商事とともにローソンの共同経営に乗り出した。9月2日には、KDDIでコンシューマー事業やサービス企画などを務めてきた雨宮俊武氏がローソン代表取締役副社長に就任。同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を担当していく。この体制変更を受け、KDDI、三菱商事、ローソンの3社は、9月18日に「未来のコンビニ」のコンセプトを披露した。

 三菱商事とともにローソンの親会社となったKDDIは、AIサイネージや配送、品出しなどの店舗業務最適化などを行っていく。また、ローソン店舗内で、電気やガスなどの生活インフラを対象にしたリモート接客を実施する見込みだ。ドローンやStarlinkを配備し、災害対策の拠点としても活用する。

 一方で、通信サービスのユーザー基盤を生かし、ローソンへの送客を行っていくのもKDDIの役割だ。鍵になるのが、povo2.0と「auスマートパスプレミアム」をリニューアルした「Pontaパス」。その中身を見ていきたい。

●サブ回線として他キャリアユーザーにも広げていくpovo、ローソンはその販売拠点に

 「あらゆるキャリアのサブ回線として、ドコモのユーザーでもソフトバンクのユーザーでもセットアップでき、速度制限の問題を解決していく」――発表会でこう語ったのは、KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏だ。KDDIは、povoのeSIMを「ギガチャージ専用eSIM」として、ローソンの店頭で販売し、ユーザーが持つ端末の“2回線目”を狙っていく。

 ギガチャージ専用eSIMは、povo2.0で導入したデータプランを活用する方針。ローソン内につるしてあるPOSAカード(Apple Gift CardやGoogle Playギフトカード)のコーナーにpovoのカードを並べ、レジでデータ容量を選択できるようにしていくという。povo2.0は、3月に本人確認不要のデータプランを開始したが、この仕組みを活用し、ユーザーが手軽にデータ容量を追加できるようにする。

 2018年に発売されたiPhone XS/XRシリーズ以降、物理SIMとeSIMのデュアルSIMに対応したスマホのラインアップは徐々に拡大しており、現在はAndroidも含め、この仕様が一般的になった。一部モデルは、eSIMとeSIMのデュアルSIMにも対応する。大手キャリアでは、データ容量無制限の料金プランが増えているものの、サブブランドやオンライン専用プランでは、上限が設けられていることが多い。

 追加のデータ容量は、1GBあたり500円から1000円が相場。これに対し、“ギガ不足”になった際にローソンに駆け込めば、もともと契約しているキャリアよりも割安にデータ容量を追加できる――これが、ギガチャージ専用eSIMのメリットだ。ユーザーが購入すればKDDIの収入になるのはもちろんだが、ローソンに行けばデータ容量が買えるとなれば、店舗への送客も見込める。リアルな接点を持たないpovoにとっては、貴重な販路になるだろう。

 高橋氏は、「これからは通信回線がメインではなく、いろいろなサービスに(通信回線が)埋め込まれていく。コンビニにうまく埋め込まれていくサービスの形として、ご提案したい」と語る。同氏は、2022年に発生したKDDIの大規模通信障害を挙げつつ、「サブ回線を持っていただくことが生活の安心を支えることになる」と語り、povoを販売する意義を強調した。

●来店ごとに100MBをプレゼント、ギガとトッピングで送客を図る

 過去に本連載でも触れたように、povoはホワイトレーベル化し、他社のサービスに溶け込むことで普及を図ろうとしている。SDKをパートナーに公開し、専用のトッピングなども用意できるようにしていく。これが、povo3.0のコンセプトだ。9月に開催されたKDDI SUMMITでは、Abemaや富士ソフト、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの名前が挙がっていが、ここに傘下に収めたローソンも加わることになる。

 とはいえ、単にeSIMを販売しているだけだと、ローソンへの送客効果は限定的になる。その解決策としてKDDIが導入するのが、「povo Data Oasis」という仕組みだ。ユーザーがローソンに行き、povo shopにアクセスしたあと、ボタンを押すだけで1回につき100MBがチャージされる。料金は無料。1カ月にチャージできる回数は10回まで。ローソンに10回行くだけで、計1GBのデータ容量が手に入るというわけだ。

 高橋氏は、「そこでチャージしたら何かものを買わないと申し訳ないとなるのではないか。ぜひともローソンでお買い物をしていただければ」と語る。これは、来店を促すための仕組みとして、povoのデータ容量をプレゼントしているということ。au PAYでの決済を条件にしていた「ギガ活」に近いが、それよりも簡易で手間が少ない。共同経営するローソンを盛り上げるため、大盤振る舞いしている様子がうかがえる。

 実際、100MBをもらった後、ローソンでの買い物を促す仕掛けも用意されている。それがトッピングだ。現状のpovoでも、ローソンの商品券やからあげクンをセットにしたトッピングを販売することがあるが、povo Data Oasisでも、それを展開。サンプルとして挙げられていた画面には、ソフトクリームやからあげクン、カフェラテなどとデータ容量がセットになったトッピングが組み込まれていた。

 現状では、トッピングを購入した後、クーポンが届くまでにタイムラグが数日あるが、ローソン店内ですぐに買い物ができるよう、システムも改修していく方針だという。まず、povo Data Oasisが年内に開始され、その後、年度内にeSIMの販売を行っていく。ホワイトレーベル化を狙うpovoを活用し、サブ回線という位置付けを明確にすることで、auやUQ mobileだけなく、他社のユーザーもローソンに送客できる。povoの立ち位置をうまく生かしながら、ローソンとのシナジー効果を発揮する仕掛けを作り上げてきた格好だ。

●au、UQユーザーをローソンに送るPontaパス、キャリアフリー化も拡大か

 もう1つの仕掛けが、auスマートパスプレミアムをリニューアルするPontaパスだ。こちらは、「ローソンでワクワクをもっと」をコンセプトにしたサブスクリプションのサービスで、既存のauスマートパスプレミアムに加え、ローソンで活用できる特典を大幅に拡充する。料金は548円(税込み、以下同)で据え置きのまま、還元を手厚くしていく。

 1つ目が、週替わりのクーポン。からあげクンやコーヒーが無料になったり、ケーキが半額になったりするクーポンを、毎週配布する。総額は600円以上。これだけで、Pontaパスの月額料金は元が取れてしまう。配布するクーポンの種類は、「AIを活用してレコメンドする」(同)システムも導入していくため、好みの商品が安価に手に入る可能性が高まりそうだ。

 さらに、「Pontaパスブースト」として、au PAYでの決済につくポイントを最大2%に向上させる。毎月最大500ポイントという制限はあるが、こちらも月額料金以上の還元になる。高橋氏は、クーポンとPontaパスブースの還元で、「最大1100円以上お得になるので、このサービスに入っていただくしかない」と自信をのぞかせる。auスマートパスプレミアムは現時点で約1500万契約だが、リニューアルによってこれを2000万契約まで引き上げていく計画だ。

 ちなみに、2%という還元率は、ローソンが導入しているドコモのdポイントを強く意識していることもうかがえた。ローソンでdポイントカードを提示すると、通常は0.5%が還元される。ただし、同店では16時から23時59分まで、還元率を1%に向上させている。さらにdポイントは、dポイントクラブのランクが「2つ星」で1.5倍、「3つ星」「4つ星」で2倍になる。条件を比較的達成しやすい「3つ星」の場合、dポイントカードを提示するだけで2%が手に入るというわけだ。

 10月3日にdポイントクラブが改定されると3つ星の還元率は1.5倍まで下がるが、それでも16時以降だと還元率は1.5%になる。d払いの1.1%と合わせると、2.6%還元だ。これに対し、PontaパスのPontaブーストが適用された状態でau PAYを使い、Pontaポイントカードを読み取ってもらうと還元率は最大で3%になる。Pontaパスをトリガーにしつつ、ローソンでのお得感を演出することでauやUQ mobileのユーザーを送客する狙いが透けて見える。

 auスマートパスプレミアムはキャリアフリーのサービスだが、名称が名称なだけに、auやUQ mobileのユーザー比率は高い。一方、Pontaパスにリニューアルすることで、その対象はローソンの利用者など、Ponta加盟店に通う人に広がる。回線契約者をローソンに送り込みつつ、逆にローソンの効果で他キャリアのユーザーにPontaパスを利用してもらえれば、KDDIにとっても新たな収益源になる。データ容量にクーポン、ポイントと連携方法が少々生々しすぎるきらいもあるが、各サービスを発表したことで、KDDIとローソンのシナジーがより明確になったといえそうだ。

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