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ドコモは「dポイントマーケット」でECの弱点を解消できるのか? 経済圏拡大には物足りない部分も

ITmedia Mobile 2024年10月5日 13時16分

 NTTドコモは、10月3日にdポイントクラブを改定した。一部ランクのポイント還元率を変更するとともに、dカードを設定したd払いに対するポイントアップを実施。ドコモの通信料を支払う際には、ランクに応じた上乗せも行う。ためたポイントによって還元率が向上するのは、他の共通ポイントにないドコモ独自の仕組み。ポイントプログラム改定で、dカードシフトを敷くとともに、還元対象を決済にも広げる。

 一方で、ポイントをためるという観点では、課題もあった。リアル店舗の加盟店を充実させてきたドコモだが、ネットで対応しているところはまだまだ少ない。これを解決するため、新たに立ち上げるのが10月8日にスタートする「dポイントマーケット」だ。オンラインショッピングが弱点の1つだったドコモだが、この状況を挽回できるのか。その中身を見ていきたい。

●「3つ星」以上の還元率低下ながら、d払いでの還元などを追加

 dポイントクラブが、10月3日に改定された。目玉になっているのは主に3つだ。1つは、還元率が1.5倍に上がる「2つ星」に上がりやすくなっていること。改定後は3カ月で50ポイントためるだけで済み、ライトユーザーでもすぐに1.5倍還元の恩恵を受けられるようになった。2つ目は、「3つ星」以上の場合、dカードを設定したd払いで追加のポイント還元を受けられるようになったことだ。最高ランクの「5つ星」の場合、通常の1%還元に加えて、さらに1%のポイントが付与される。

 3つ目は、携帯電話代金への支払いにdポイントを充当した際の上乗せだ。これは「3つ星」以上が対象で、「3つ星」が1%、「4つ星」が2%、「5つ星」になると5%まで率が上がる。例えば、ahamoの基本料金である2970円を支払う際に、「5つ星」であれば2829ポイントで足りるようになるということだ。あくまでポイントだが、携帯電話料金の割引に近く、お得感がある施策といえる。

 ただし、d払いを使わない場合のポイント還元率は「3つ星」以上で悪化している。もともと「3つ星」と「4つ星」が2倍、「5つ星」が2.5倍だったため、それぞれ0.5倍ずつ還元倍率が引き下げられている。単純にdポイントカードを提示するだけでは、ポイントがたまりづらくなる。現金払いやクレジットカード、他社のスマホ決済サービスを使っていたユーザーにとっては、改悪にもなっている点には注意が必要だ。

 また、先に述べたようにd払いのポイント上乗せも、dカードを設定している場合に限られる。銀行や信用金庫からチャージした残高や、他社クレカを設定しているとポイント還元率は通常のままだ。携帯電話合算払いも対象だが、こちらもその携帯電話料金をdカードで支払っているケースに限定されるため、実質的な違いはない。こうした点を踏まえると、ドコモは、dポイントクラブの改定でより好調なdカードへのシフトを強めたといえそうだ。

 一部ユーザーにとって改悪になった新たなdポイントクラブだが、競合の共通ポイントで同様の仕組みを採用しているところは見当たらない。「2つ星」以上ならポイント還元率が1.5倍、一般的な0.5%還元の加盟店では0.75%還元になるため、優位性は維持できている格好だ。加盟店の店舗数も多いため、この改定で他社にユーザーを奪われる心配は少ないだろう。一方で、dポイントには課題もあった。それがEC店舗への対応だ。

●手薄だったEC事業を補うdポイントマーケットをオープン、ランク連動が特徴に

 ドコモのコンシューマサービスカンパニー カンパニーコーポレート部コマース室の森大輔氏は、「dポイントをためる、使える場所として街のお店には一定のご満足をいただいているが、dポイントがネットで利用できるイメージがなく、オンラインでもっと利用できるようにしてほしいというお声をいただいている」と語る。

 ドコモ自身も「dショッピング」や「dファッション」といったECのモール事業を展開しており、ここではdポイントの付与や利用に対応しているものの、その規模は楽天市場を擁する楽天グループや、Yahoo!ショッピングモールを展開するソフトバンクに比べると小さい。Amazonにも対応したが、ポイント付与の条件が厳しく、かつ上限額も小さい。

 そのため、「必ずしも、お客さまのご要望にお応えしきれていなかった」(同)というのが実情だ。その反面、「物販系のECは14兆円まで市場規模が拡大することが見込まれている」(同)。上記のようなモール事業だけでなく、メーカーや小売りなども、ユーザーに直接商品を届けるため、ECを活用しており、こうしたサイトも「今後成長していくことが見込まれている」(同)。ここに対応するため、ドコモが新たに立ち上げたのが、dポイントマーケットだ。

 dポイントマーケットはアフィリエイト型のサービスで、いわゆるポイントサイトと呼ばれるような部類のもの。自社で加盟店に販売する場を与えるモール事業とは性格が異なり、加盟店の広告的な色合いも濃い。ユーザーが、そのサイトを経由して買い物をするだけでポイントが付与されるのが特徴だ。10月8日のスタート時点では、150の加盟店がそろう見込みだ。

 特徴的なのは、先に挙げたdポイントクラブの会員ランクとポイント付与率が連動するところにある。上乗せ分は、「2つ星」で1.5倍、「3つ星」「4つ星」で2倍、「5つ星」で3倍。ベースポイントは0.5%のため、それぞれのランクの還元率は0.75%、1%、1%、1.5%になる。ランク別特典が反映されるのは、あくまでベースポイントの0.5%に対してだが、家電やファッションアイテムなどで購入金額が大きくなる場合には、その影響が大きい。

 こうしたポイントサイトは、ドコモも「d払い ポイントGETモール」を運用しているが、dポイントマーケットとのかぶりもあるため、10月22日にサービスを終了する。また、d払い ポイントGETモールは「決済手段をd払いのお客さまに閉じていた」(同)が、dポイントマーケットは、一般的なポイントサイト同様、決済手段は問わない。クレジットカードや、他社のコード決済サービスなども利用可能だ。ポイントサイトを拡大することで、ECのニーズに応え、経済圏を拡大するというのがドコモの考えといっていいだろう。

●物足りない加盟店数、独自性をどう出すかも課題か

 一方で、競合他社、特にキャリアを持つ事業者のそれと比較すると、後発なだけにやや物足りない部分が残るのも事実だ。1つは、加盟店の数。楽天グループの楽天リーベイツは、2024年3月時点で800店舗以上をうたっており、選択肢はdポイントマーケットの数倍に及ぶ。ソフトバンク傘下のLINEブランドカタログも、2024年7月時点で約1000ショップをうたっている。

 こうしたポイントサイトでは、数だけでなく、ショップのバリエーションや種類も重要になる。例えば、LINEブランドカタログには、競合でもある楽天市場が掲載されており、ここを経由するだけで0.5%のポイントが上乗せになる。楽天リーベイツにも、au PAYマーケットといった競合サービスが掲載されている。モール型のサービスを掲載することで、ユーザーがポイント還元を受けやすくなるのがメリットだ。

 これに対し、dポイントマーケットでは「大手ECモールは今のところ予定していない」(森氏)。ドコモはAmazonとdポイントで提携しているが、そのAmazonもdポイントマーケットには掲載されないという。dポイントマーケットにもQoo10やビックカメラのように、商品数が豊富なサイトもそろっているが、これらの事業者は他社も利用しているため、ラインアップの観点でドコモの独自性が見えづらい。

 例えば、楽天リーベイツは海外発であることを生かし、オンライン旅行予約サイトや海外系ファッション通販サイトなどが充実している。後発でサービスを開始するのであれば、やはり“ドコモだけ”の加盟店はアピールしてほしかった。dポイントクラブのランクが反映されれば、他社を還元率で上回れる可能性はあるものの、欲しい商品やサービスがなければ利用は先細ってしまう。数や幅を広げ、独自性を出すには加盟店開拓が急務といえる。

 また、dポイントマーケットはあくまで“dポイントをためる”ことができるだけで、必ずしもdポイントの消費先にはならない。d払いやdポイント加盟店とは、必ずしもイコールではないからだ。先ほど引いた森氏のコメントでは、ユーザーの声としてオンラインで利用できる場所を増やしてほしいという意見も挙げられていたが、dポイントマーケットは、このニーズに100%応えられるサービスではない。

 オンラインでのdポイント経済圏を拡大するには、dポイントマーケットだけではやや物足りない印象も受ける。dポイントマーケット加盟店にd払い、dポイントの導入を促したり、先に挙げたdショッピングやdファッションといった自社サービスをテコ入れしたりといった、何らかの対策も合わせて必要になりそうだ。

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