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ヨシノパワーの固体電池ポータブル電源「Yoshino B300 SST」を試す リビングに置いても違和感のないデザインに注目

ITmedia Mobile 2024年10月8日 12時0分

 地震や大雨、台風――日本は自然災害の多い国だ。その備えの1つとして、大容量のバッテリーを備える「ポータブル電源」に注目が集まっている。ポータブル電源は、キャンプをはじめとするアウトドア活動を充実させる意味でも人気の商品となっており、規模の大きな家電量販店では、ポータブル電源コーナーが設置されるほどだ。

 これだけ盛り上がりを見せているだけあって、ポータブル電源に参入するメーカーも多く、選択肢も豊富だ。購入を検討する人から「どれを選べばいいのか悩ましい」という話を聞くことも珍しくない。

 そんな中、従来は採用例がほぼ皆無だった「固体電池」を使ったポータブル電源を武器に、2023年末に日本参入を果たしたのがヨシノパワージャパンだ。

 今回、同社からポータブル電源のエントリーモデル「YOSHINO POWER B300 SST」(実売価格5万円弱)をお借りして、その実力をチェックしてみた。

●丸みを帯びたデザイン×カラーリングの妙でリビングにもなじむ

 先述の通り、B300 SSTはヨシノパワージャパンが販売するポータブル電源としてはエントリーモデルで、内蔵バッテリーの定格容量は241Whとなる。バッテリーモジュールは同社の親会社「Yoshino Technology」(米カリフォルニア州)の兄弟会社が製図した固体電池で、上位モデルと共通のものを使っている(品質に差はない)。

 肝心の出力スペックだが、定格値でAC(交流)出力が最大300W、USBポートを含むDC(直流)出力と合せて最大600Wとなる。上位モデルと比べると、AC出力はそれほど大きくないため、電子レンジや電気ケトルといった消費電力の大きい家電の稼働には向いていない。充電サイクル数(※1)は約4000回で、重量は約4.5kgとなる。

 用途や利用環境次第な面はあるものの、充電サイクル数は比較的長めに確保されているので、非常用電源としては比較的長期間使えるようになっている。

(※1)定格容量の80%を維持できるバッテリーの充放電回数(基本的に容量と同じだけの充放電をすると「1」とカウントされる)

 スペックに関しての前置きが長くなってしまったが、B300本体のデザインや備えるポート類について確認していこう。

 ポータブル電源というと、四角形のまさに“バッテリー”という形状に、黒色や灰色をあしらったゴツゴツとしたデザインが思い浮かぶ。

 しかし、ヨシノパワーの製品はひと味違う。全体的に丸みを帯びたデザインで、メインパネルには黄緑色をあしらっているのだ。このデザインは、米国の工業デザイン事務所「FuseProject(ヒューズプロジェクト)」が担当しているという。

 実機を見ると思った以上におしゃれでありながら、いろいろな場所に違和感なく溶け込むので、リビングに常置していても問題ない。

●コンパクトで持ち運びやすい スマホやPCの充電にぴったり

 B330 SSTのボディーサイズは約25.5(幅)×15.6(高さ)×24.2(奥行き)cmと、ポータブル電源としてはコンパクトだ。重量は約4.5kgだが、ボディー上部に付いているキャリングハンドルを使って簡単に持ち運べる。

 ハンドルの握り部分にはクッションも添えられているので、指への負担も軽減される。こういう心遣いは地味にありがたかったりする。

 本体正面のメインパネルには、動作インジケーター(ディスプレイ)や各種電源出力端子の他、LEDライトも備わっている。緊急時はライトのスイッチをオンにすれば本体正面を明るく照らすことができる。

 電源出力のポート類は以下の8系統を備えている。

・AC出力端子×2

・100V/60Hz出力

・アースプラグ付きのAプラグ対応(日本で使われているプラグをそのまま利用可)

・両ポート合計で最大300W出力可能(定格値)

USB Standard-A端子×2

・どちらも5V/2.4A出力(最大12W)

USB Type-C端子×2

・1基はUSB PD(Power Delivery)対応で、20W/5A(最大100W)出力可能

・本ポートは本機の充電にも利用可能(最大60W入力可能)

1基はQuick Charge 3.0対応で、12V/1.66Aまたは9V/2.22A(最大約20W)出力可能

DC出力端子×2

・12V出力

・付属の変換ケーブルでシガーソケット(自動車用電源ソケット)に変換可能

・両ポート合計で最大126W出力可能(定格値)

 本機自身の充電は、USB PD対応のUSB Type-C端子の他、本体背面にあるDC入力端子およびXT60入力端子で行える。DC入力端子には、付属のACアダプターまたはシガーソケットケーブルを接続できる。

 XT60入力端子は、外付け/移動式の太陽光発電パネルとの接続に使われる。別売とはなるが、XT60ケーブル(プラグ)に対応する太陽光発電パネルを用意すれば電源が全くない場所でも充電可能だ。

 正面をよく見ると電波(Wi-Fi)アイコンのあるボタンが用意されている。これはスマートフォン用の「Yoshino」アプリとの接続用に用意されているもので、同アプリをインストールしたスマホでは電源の稼働状況をチェックしたり、動作設定を行ったりできる。

●シンプルな付属品

 本製品の付属品は、思ったよりもシンプルだ。取扱説明書や保証書の他には、先述のACアダプター、シガーソケット用の充電ケーブル、DC出力端子用のシガーソケット変換ケーブルと、XT60入力端子用のソーラーパネル接続ケーブル(「MC4」端子搭載パネルに対応)が付属している。

 利用に必要なケーブルは一通りそろっているので、追加で購入せずとも充電すればすぐに運用を開始できることはありがたい。

●固体電池採用のメリットは「長寿命」と「軽量化」

 先に掲載したインタビュー記事でも触れているが、本製品が採用する固体電池は電気自動車(EV)での利用を想定して開発が進められている。世界中の主要な自動車メーカーはもちろん、電池メーカーも開発にしのぎを削る……のだが、現状のポータブル電源で使われることの多いリチウムイオン(リチウムポリマー)電池と比べて、何がメリットなのだろうか? 一部にインタビュー記事と重複する部分もあるが、確認していこう。

メリット1:電池(バッテリー)モジュールの形状の制約が少なくなる

 固体電池は、電解質を固体としているので、原理的にいわゆる「液漏れ」が起こらない。そのため、電池(バッテリー)モジュールの形状や構造に対する制約が少なくなる。

 例えば、汎用(はんよう)性に目をつぶれば「機器の形状にフィットした電池モジュール」も作れる。また、モジュールの薄型/小型化と大型化のどちらもしやすくなるので、今までよりも広いニーズに応えやすくなる。

メリット2:安全性が高く、劣化しにくい

 電解質を固体とすることは、電池モジュールの安全性向上にもメリットをもたらす。

 現状のバッテリーモジュールで起こりうる液漏れは、内部部品の腐食を進める原因になるだけでなく、蒸発(気化)が進むとモジュールの膨張や破裂につながる恐れがある。リチウムイオンバッテリーの場合、漏れた液体に引火する可能性も否定できない。

 繰り返しだが、固体電池は電解質が固体なので、液漏れによる各種トラブルを抑制できる。また、化学的安定度も高いため、極端な高温/低温環境でも性能が低下しにくく、長期間安定して使いやすいというメリットもある。

 今回レビューするB300 SSTの場合、稼働時の動作温度(気温)の範囲が-10~60度の範囲となっている。リチウムイオン電池を利用する他社製品の場合、これが0~40度の範囲となることが多く、特に高温環境での利用性能が高くなっている。夏場のキャンプ場など、暑い場所であっても安心して利用できるのはポイントが高い。

メリット3:電池自体の性能を高めやすい

 固体電池はエネルギー密度、つまり質量または体積あたりの蓄電容量を高めやすいというメリットもある。リチウムイオン電池よりも小型/軽量で、かつ蓄電容量が大きいというメリットは何事にも代えがたい。温度の変化にも強いため、急速充電のスピードも高めやすい。

 エントリーモデルということもあってか、B300 SSTは同容量帯の他社製品と比べて特別に軽量ということもなく、重量面での変わりはほとんどない。しかし、フラグシップモデルの「B3300 SST」(定格容量2611Wh)は、同容量帯で40kgを超える製品がある中で、重量はわずか約25kgとなっている。大容量モデルほど、この差は大きくなるものと思われる。

●実際の使い勝手をチェック

 せっかくの機会なので、USB Type-C端子回りを中心にB3300 SSTの使い勝手をチェックしていこう。

 スペック紹介でも触れたが、USB Type-C端子は2つ用意されており、片方はUSB PDに、もう片方はQuick Charge 3.0に対応している。

 USB PDに対応する端子は、スペック通り100WのUSB PDの出力に対応している他、3.3~21V/5AのPPS(Programmable Power Supply)給電にも対応している。PPSに対応するスマートフォンやタブレットでは、急速充電時にきめ細かい制御を行える。このポートは、Quick Charge 2.0/3.0準拠の急速充電や、Appleデバイス(iPhone/iPad)における5V/2.4A急速充電にも利用できる。

 先述の通り、本機はUSB PD対応のACアダプター、付属のACアダプター、自動車のアクセサリーソケット、太陽光発電パネル(XT60端子)のいずれかで充電ができる。ACアダプター/太陽光発電パネルでは最大100W、USB PDでは最大60Wの電源入力が可能で、100W入力時は最短2時間で満充電にできる。

 バッテリーの充電状況は、本体正面のディスプレイの他、Yoshinoアプリでも確認できる。本機の電波ボタンを長押しして「接続待機モード」にしたら、アプリから接続設定を行うだけと設定はシンプルだ。以降、何度も接続設定をし直す必要なく、本機の状況をモニタリングできる。

 充電中であれば入力電力のワット数と充電完了までの時間を、出力中であればポートの電源供給のオン/オフを簡単に制御可能だ。電池の温度や残り容量も視覚的に確認できるので、便利に感じる。

 なお、ヨシノパワーのポータブル電源を複数台持っている場合は、まとめて管理することもできる

 このUSB Type-C端子から手持ちのノートPCに充電してみると、ある程度充電された状態ということもあり、本機のメーター読みで「49W」で給電され始めた。USB PD対応のノートPCなら、ケーブルさえあれば別途ACアダプター用意せずにすむので、これはこれでよい。

 「災害時の備え」という意味では、前面に付いているLEDライトも便利だった。ボタンを押せばすぐに点灯する上、“超大容量”のバッテリーで明かりを長時間保てるのは心強い。明かりをつけ続けられるのは心強い存在となる。

 具体的なスペックは公称されていないものの、このライトは思った以上に輝度が高い。実際に自宅のベランダで夕方にテーブルとイスを出して食事をした際に利用をしてみたが、低い場所に置いたとしても足元全体を照らしてくれた。

 それくらい明るいため、アウトドアの際の明かりとしてはもちろん、停電時といった緊急時の際にも十分な明るさを確保してくれるだろう。

 公称ベースとなるが、B300は内蔵LEDライトは最長約19時間、ポータブルクーラー(25W)であれば最長約8時間、ミニ冷蔵庫(35W)は最長6時間、液晶TV(100W)でも最長約2時間稼働できる。消費電力の大きい調理家電の動作には不向きだが、情報収集に使う各種デバイスを稼働するためのポータブル電源としては十分だろう。

 本機にはファンが内蔵されており、充電中や給電中に動作することがある。特に充電中は、ファンの音が大きくなるのだが、騒がしい感じはしない。自宅で運用しているDCモーターのサーキュレーターの「中速」程度の音だ。充電はリビングで行っていたのだが、TVの音が流れていると全く気にならないレベルだ。

●固体電池で安心かつ長期間使えるポータブル電源 アウトドアにも停電対策にも

 ヨシノパワーのB300 SSTは、コンパクトで安心して使える高寿命/高耐久性を備えるポータブル電源だ。消費電力の大きい家電を動かすには不向きではあるものの、PCやスマホの充電、扇風機やポータブル冷蔵庫の稼働くらいであれば十分に実用できるので、短期間のキャンプ、あるいは停電時の備えとして1台用意しておくのもよいだろう。

 「もうちょっと出力の大きい家電を使いたい」「より長時間の稼働に対応するものがいい」という場合は、より大容量の選択肢も用意されている。アウトドア、あるいは停電時の備えとして、どのくらいの“能力”が必要なのか検討してみるとよいだろう。

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